CSS @ EX THEATER ROPPONGI

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今月11日から名阪を回ってきたCSS来日ツアーの最終日となる本日。(またも)前作から大きく方向転換した新作『PLANTA』の楽曲をどう鳴らすかが大きな注目点であったわけだが、生粋のライヴ・バンドとして、変化も進化もひっくるめて今の自分たちなのだと堂々胸を張る、頼もしいステージを見せてくれた。

CSS @ EX THEATER ROPPONGI
今日の会場は11月30日にオープンしたばかりのEX THATER ROPPONGI。会場が暗転したのは開演時間を少し過ぎた19時13分。不穏な電子音に生ドラムがかぶせられ異様なムードが漂い出す中、4人のメンバーが登場する。「トーキョー、ゲンキー!?」第一声はもちろんこの人、ラヴフォックスだ。スキニーで揃えたスタイリッシュな装いのアナ、ルイザ、カロリーナの3人に対し、彼女のラフでルーズでちょっとヤンキーチックな佇まいが絶妙なコントラストを生んでいる。1曲目は“Art Bitch”。昨年の新木場公演(そのときには既にアドリアーノは脱退済)で演奏面をかなり引っ張っていたサポート・ベーシストが抜けたことでどれだけの影響があるか心配していたが、影響云々というより全くと言っていいほど別のグルーヴを操るバンドになっていた。低音を打ち込みにほとんどの局面で担わせたこと(曲によってはメンバーの誰かがベースを演奏することもあったが)、またドラムがベースとの駆け引きを気にせず自分の裁量で大胆に曲の音圧をコントロールするようになったことにより、過剰なまでにバッキバキの音像が現出。しかし、その変化も全て受け入れるように歓喜を隠さないオーディエンス。曲終了後にはラヴフォックスから「サンパウロカラキマシタ、CSSデス。ニホンハ、8カイメデス!」という微笑ましいMCも出たが、もはや彼女たちにとってこの国もひとつのホームのように感じているのではないだろうか。

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2曲目、“Move”は先の過激さからは一転してダンサブルな仕上がり。ヨレたギターとそれを後ろ目に追いかけるベースの絡みが腰に直撃する。そして、とうとう3曲目に最新作『PLANTA』からのナンバー“HANGOVER”を投下。キラー・チューン2曲でフロアを掌中に収めてから新たな手札を切る鮮やかな流れだ。パーカッションが跳ねるのを支える重低音が基礎を築き、そして軽やかにして自由なラヴフォックスの歌唱が曲の主役を張る。音源とはまた違う形で完成されたフォームになっている。『PLANTA』とは、クリエイティヴ面での要になっていたアドリアーノの抜けた穴をプロデューサーとして起用したデイヴ・シーテックの知性と好奇心が埋めた、音色とアレンジの面白さの追求に極端に振れるサウンド玉手箱のようなアルバムだった。それゆえ、ライヴでそれがそのまま再現されるとは考えにくかったが、この日の演奏を見る限りソングライティングの骨格を改めて見せつけるような自然な生演奏となっていた。ライヴの場において高次安定した実力を持つバンドであるからこそ、奇を衒う必要などどこにもないというわけだ。

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「イッショニウタオーヨッ!」と煽っての“HITS ME LIKE A ROCK”から虎の手袋を装着したラヴフォックスのポージングとネコの泣き真似が堪らなくキュートだった“TEENAGE TIGER CAT”の連打によりフロアは最初の沸点を迎える。前のめりに転がり続けるような以前のスタイルから、1曲の中にしっかりと盛り上がる「見せ場」を作るようになった今のアンサンブルは、音がアガればアガるほど俄然輝きを放つフロントマンを擁するバンドにとって親和性の高さをうかがわせる。また、“GIRL FRIEND”では幻想的なライティングの中、長い白い布が張り付けられた扇子を両手にたおやかに舞うという、元気で可愛い一辺倒ではない新たな魅力も見せてくれたラヴフォックス。この稀代のパフォーマーの凄味がまざまざと発揮されたのが、ライヴも終盤に差し掛かったころに演奏された“INTO THE SUN”。この曲、CSSとしては少々珍しいやや長めのインスト・パートがあるのだが、ダンサーとしてのラヴフォックスのカリスマによってそうしたパートも見せ場にしてみせる。彼女がただただ激しく、楽しそうに踊るだけで、オーディエンスも1人また1人と釣られて踊り出すのだ。楽器を持たない彼女だが、正しくあらゆる面でバンドの核となっている。
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そして、続くアンセム“I LOVE YOU”ではイントロが鳴った瞬間からフロアが爆発。前曲で溜めた分、この狂騒感には抗えない。この最高到達点を維持したまま、ヘヴィなリフが耳を刺激する“Music Is My Hot, Hot Sex”からラヴフォックスのデス声風シャウトが飛び出した“DYNAMITE”を経て、本編の締めは新譜の国内盤ボーナス・トラックであった“KAWAII”。音色に膨らみはありつつラウド&ファストな直線的演奏の上でラヴフォックスが≪カワイイィィィィィィィィィィィィィィィ≫と超ロング・シャウトをぶっ放し、あっと言う間に終わるこの曲。高まり切った興奮のリミッターをさらに振り切らせつつ、やりのこし感ゼロでスパッと流れを断ち切る。なんと高性能な飛び道具か。こういう曲を日本のリスナーに向けて書き、そしてここぞというポイントで演奏してくれるバンドの想い。そして、アンコールでは内側に大きく「YES」と書かれた金ピカのマントを着てきたと思えば、次の曲ではフロア・ダイヴを敢行し、最後はTシャツまで脱ぎ捨てアゲ倒すラヴフォックスのガチンコの愛。CSSのライヴはだからこそ尊く、最高の形で成立している。その事実をあらためて確認できた90分だった。(長瀬昇)

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セットリスト
Art Bitch
Move
HANGOVER
HIT ME LIKE A ROCK
TEENAGE TIGER CAT
Let's Make Love and Listen to Death From Above
What’s Your Name
GIRL FRIEND
CITY GRRRL
HONEY
RED ALERT
INTO THE SUN
I LOVE YOU
Music Is My Hot, Hot Sex
DYNAMITE
KAWAII
アンコール
FRANKIE GOES TO NORTH HOLLYWOOD
Alala
I've Seen You Drunk Girl
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