そんな5人にもうすぐ会える

フー・ファイターズ『バック・アンド・フォース』
2012年02月08日発売
DVD
フー・ファイターズ バック・アンド・フォース
デイヴはバンドのドキュメンタリー映画を作るにあたって、最初はハードコアなファン向けのものが頭にあったそうだが、完成した本作はむしろオーディエンスを選ばないひとつの人間ドラマとして成立している。本作を観る前、私は正直なところフー・ファイターズは“デイヴ・グロールのバンド”だと思っていた。そして本作を観終わっての感想もまた、一言で言えばまったく同じだった。しかしその「フー・ファイターズ=デイヴ・グロール」の事実にある意味の深さが、本作を観る前と後ではまったく違ってくるのだ。そして誕生以前から始まるフー・ファイターズの物語が関係者の証言ではなく、メンバー自身(と元メンバーも本音を明かしているのがすごい)による告白で赤裸々に語られていく展開にはどきどきさせられる。「いいこともあったし、悪いこともあったけど、何ひとつ変えたいとは思わない」という自信がなければ、制作も公開もありえなかった作品だと思う。
 
本作のもうひとつの目的は、彼らが新作をガレージでレコーディングするに至った理由を説明することだった。幾度のメンバー・チェンジを経てそこまでたどり着いた過程を知ると、新作の音がもっと強く響いてくるし、現在のバンド写真にデイヴ、ネイト、テイラー、クリス、パットの5人が一緒に写っていることにじーんときてしまう。元ドラマーのウィリアムの脱退劇の顛末など、デイヴの厳しい一面も垣間見えるのだが、レコーディング中の険しい表情が娘さんにつんつんされて思わず笑顔になるところなど、彼らのサウンドにあふれる人間味の源を見せてくれる貴重なシーンが満載だ。(網田有紀子)
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