悲しみの果てに何がある

クリープハイプ『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』
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ALBUM
クリープハイプ 死ぬまで一生愛されてると思ってたよ
クリープハイプは行き場のない悲しい世界の向こう側を歌う。このアルバムの1曲目“愛の標識”の歌い出しは、《死ぬまで一生愛されてると思ってたよ 信じていたのに嘘だったんだ》だが、繰り返しのフレーズでは《家の犬まで一緒に愛されてると思ってたよ 撫でてくれたのは嘘だったんだ》とくる。失恋の悲しみを歌っているのだが、そこから《家の犬》まで使ったよりリアルな感情表現に踏み込むことで、悲しみの六畳間から障子を突き破って縁側から庭に転げ落ちて青空を見上げてカラカラと笑うしかないところまで行ってしまうのだ。そこは、もう悲しすぎて悲しくなくなってしまった世界だ。2曲目“イノチミジカシコイセヨオトメ”もピンサロ嬢を主人公に《なんぼ汚れたアタシでも 子供の頃は可愛かってね/休みの日には母さんと 可愛いベベ着てお買い物》と歌う。悲しみを具体的にフォーカスしながら、悲しみを突き放して笑い飛ばし、悲しみをきつく抱きしめる。それによって悲しみを越えたメロディを鳴らし、悲しみを超えたライヴ空間を作り出す。クリープハイプは今、必要なバンドだ。(古河晋)
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