真っ赤な血みたいに鮮烈なデビュー

渋沢葉『せきららら』
2012年06月20日発売
MINI ALBUM
渋沢葉 せきららら
渋い。と見せかけて、生まれたての赤ん坊の泣き声の如き有無をいわせぬエネルギーが爆発したデビュー作。渋沢葉、23歳。強烈なシンガーソングライターの登場だ。プロデューサーに土屋昌巳、チバユウスケを迎えた本作は荒っぽい衝動をなめさず刻みつつ、音楽的な豊潤さも含んだ1枚。ビートルズ、ジミ・ヘンドリックス、レッド・ツェッペリンなど60、70年代のロックに多大な影響を受け、さらに「ロックとブルースとジャズが好きです。わたしの血はこの3つの混血だ。でも結局エリック・サティだと思う」(エリック・サティは胎教音楽だったらしい)という渋沢葉。本作を聴いてまず思ったのは、彼女の興味と表現衝動は、あらゆる点で物事の「根源」へと向かうということ。それは単に音楽的ルーツを指すのみではない。彼女の表現の核が、「生きるとは何か」という人間の根源的な問いなのだ。《僕の生きる時は空も山も太陽も/とても 柔らかいんだ》と歌う”ピアニッシモ”の切実な美しさはすごい。この個性を先鋭化させつつ、彼女が今後どれだけのポピュラリティを得ることができるか、期待したい。(福島夏子)
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