歌とともに生きるということ

渋沢葉『「花はここに咲いています」』
2012年11月21日発売
MINI ALBUM
渋沢葉 「花はここに咲いています」
地べたを引きずり回されるようなヘヴィ&ラウドなアンサンブルとともに《おのれ 自分/おのれ クソ野郎》と自分自身を臆することなく苦悶の淵へ追いつめる“破壊BOSSジャム聖飢魔Ⅱメイク”。《あたしは痛い/ヒリヒリと/とても痛いんだ》というささくれた心象風景をシンガーとして人前で歌うこと自体への苦悶と葛藤をびりびりと歌い放つ“ARE YOU PANPI?”……それこそ毎秒レベルで自分に/大切な人に/社会に/シーンにYESかNOかの選択を迫りながら生きているような切迫感が、渋沢葉というアーティストの歌からは抑え難く滲み出してくる。それは同時に、目の前の世界を色分けし、自分と自分の居場所を明確化することで、より強固で揺るぎないコミュニケーションへ向かおうとする彼女自身の痛みと優しさの発露でもある。《あたしは平和っぽい日本の中に生まれた偽善者です》(“ダメゼッタイ”)という挑発的な言葉が機関銃のように繰り出される一方で、ジャジーな静寂とピアノの響きの中で呼吸そのもののように歌う“祈り”が時間を止め、胸を震わせる。戦慄に満ちた2ndミニアルバム。(高橋智樹)
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