「これから」の話をしよう

RADWIMPS『シュプレヒコール』
2012年08月01日発売
SINGLE
RADWIMPS シュプレヒコール
 タイトルからして直球のプロテスト・ソングなのかと思いきや、それはある意味で間違いではないけれど浅はかな考えでもあった。裏の裏の裏まで思いを巡らせて歌詞を掴み取って来る野田洋次郎の“シュプレヒコール”。ラッドとして獲得してきた数々の成果をカタパルトとしながら皆を乗せて舞い上がり、膨大な言葉を費やし、澄み渡ったリフレインからポスト“DADA”以降のハイブリッドな爆音までをかい潜ってゆく。今すぐ目的地に着くことが重要なのではない。皆を「乗せてゆく」懐の深さこそが重要なのだ。そこにはきっと語らいの場がある。最強のポップ・ソングである。本作で初めてラッドを聴く人は、ようこそ。これまでラッドを愛してきた人は、自分が間違っていなかったことを存分に噛み締めればいい。あなたが生きる時代とは、こんなバンドがいて、こんな歌が産み落とされた時代だ。
 「震災」も「原発」も見当たらない、しかし我々が向き合う「これから」の現実を確かに指し示してみせる歌詞には、野田がアーティストとして直面してきたであろうコミュニケーションの困難さと、それを乗り越えようとしてきた知恵・技術が結集している。カップリング曲の“独白”がまた感動的で、どこかオリエンタルで幻想的に響く鍵盤の中で綴られる、野田のスポークンワード。「これから」に向けて「これまで」を語る、ラッドの〈エピソード1〉とでも呼ぶべきナンバーだ。バンドマンでなくとも羨ましくなってしまうような、美しいロック・バンドの姿が浮かび上がってくる。更にはジャズ・ファンク風のインスト・ナンバーも収められていて、今の彼らのジャム・セッション的な力量が垣間みられるのだが、ここでもピアノの旋律がオリエンタル風味になっているのが面白い。3曲、どこから聴いても楽しめるはずだし、どこから聴いても凄いという点で、極めて風通しが良く自由度の高い作品でもある。 (小池宏和)
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