抗え、決着をつけるな
The SALOVERS『珍文完聞 -Chin Bung Kan Bung-』
2012年09月05日発売
ALBUM
10代の頃よく一緒に時間を過ごした男の子がいた。好きな本や趣味が近いこともあって、競うように読んだ本や映画の話を何時間もして、その子がする伝聞の伝聞みたいな話に関心したり、小説の中の真似ごとをして人を困らせた話に、バカだねとクサしたりしていた。こういう生き方をしたいとか、これが笑えないとは大人は話が通じんと頷き合ったり、とにかく真っ当に青臭かったし、自分の考え方の癖が芽生えた大事な時期だったように思う。The SALOVERSを聴いたときにフラッシュバックしたのは、その熱病にかかったような特別な時だ。社会の仕組みや常識の物差しで人の優劣が決まる不条理さもわかるようになってきたけれど、それとは無縁のデタラメだけど真っ直ぐな道をいき、子どもとも大人とも距離を置いて、何にでもなれると夢想して息まく熱さが、音に言葉に閉じ込められている。ガレージやオールドスクールなパンクの血の気の多いビート感と、エキゾチックで癖のあるギター・サウンドを武器に、声をからして自分の姿勢を叫ぶデビュー・アルバム。この高く掲げた旗は、下ろしちゃいけない。(吉羽さおり)
2012.09.05 20:00