ここ最近は『クローズ・アップ』と題したセルフカヴァー作品を制作し続けているスザンヌ・ヴェガ。「家族の歌」というテーマを持たせた第4集が完成し、日本では先の1と2が2枚組になって出たのに続き、こちらも前作である3とセットになって発売される。このシリーズは、シンプルなアレンジで彼女の歌とソングライティングを強調するコンセプトを持つのだが、つまりはデビュー時の弾き語りスタイルに原点回帰するニュアンスもあって、実際ファースト・アルバムの曲などは(なにしろヴェガの「声」が恐ろしいほど老けないだけに)あまり大きく変わっていないような印象も受ける。
それでも、四半世紀を超える歳月の間に彼女が辿って来た音楽的変遷と人生そのものを経たうえで、エッセンシャルな形で楽曲が統一され、綴られ直したものを聴くのは、やっぱり1作目を最も愛している人間としては、なんとも心地よい体験だ。そして、その意味では、ファーストからのナンバーがひとつも入っておらず、逆にデビュー前に書いたという未発表曲が終盤になって収録されている第4集は、とりわけ興味深く聴ける1枚かもしれない。(鈴木喜之)
浮かび上がる普遍の本質
スザンヌ・ヴェガ『クローズ・アップVol.4:ソングス・オブ・ファミリー&クローズ・アップVol. 3:ステイツ・オブ・ビーイング』
2012年12月12日発売
2012年12月12日発売
ALBUM