アリスが穴に落ちるように

黒木渚『黒キ渚』
黒木渚 黒キ渚
フロントウーマンの名で、3ピースのバンド名でもある黒木渚。昨年末、出身の九州限定で発売した1stシングル『あたしの心臓あげる』の甘美な狂気は、じわりと全国へ染みだしていって今年はじめに全国リリースされた。そのねっとりと甘い余韻のなかで差し出されたこの1stミニ・アルバムが、居心地がいい。孤独という、感情の井戸に潜る時間、夢を見て想像する時間、ざわつく心を整理するひとりの時間に恰好の、密閉感がある。
 
作品に漂うのは、夢と現、本音と建前との間にあるぼんやりとした空間に浮かび、泳いでいる感覚。誰にも邪魔をされないところで、さまざまな細胞をかき集めて、自分をかたち作っている。愛も偽りも、正も邪も、過去も未来への気持ちもいっしょくたに捏ねて、不格好でもなんだかとても愛おしい、わたし自身を抱きしめるように、Vo黒木渚が歌う。キャバレー風や歌謡風で味付けされたオルタナ・ギター・ロック(田渕ひさ子や、會田茂一、斉藤祐樹、根岸孝旨がゲスト参加)はバースト感たっぷりだが、歌声と世界観でリスナーをぎゅっと、心地好い孤独で閉じ込めてくれる。(吉羽さおり)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

フォローする
音楽WEBメディア rockin’on.com
邦楽誌 ROCKIN’ON JAPAN
洋楽誌 rockin’on