色彩と奥行きを増した音絵巻

ビビオ『シルバー・ウィルキンソン』
2013年05月01日発売
ALBUM
ビビオ シルバー・ウィルキンソン
WARPを代表するエレクトロニカ系アーティストのビビオことスティーヴ・ウィルキンソン。彼の音楽の魅力は、多用した生楽器と電子音で織り上げる、その豊潤でオーガニックなタッチにある。アコギが印象的な3rd『ヴィグネッティング~』はまるでフォーク・ミュージックのような味わいがあり、どこか郷愁を誘うような鄙びた響きはレーベルの先輩ボーズ・オブ・カナダも連想させた。日本語の“ぼかし”を意識したという前作も、幾重ものレイヤーが飾る柔らかな光沢を帯びた音像が素晴らしく、個人的に愛聴した作品だった。

6作目の新作も基本的な構造は変わらない。ただ、前作ではビートやエディットが効いたダンス寄りのプロダクションも見せたが、今作はウィルキンソンも語る通り生音の響きに焦点が当てられた、よりオーガニックな仕上がりという印象を受ける。なかには自宅の庭や物置で録音されたという曲もあり、じょうろや植木ばさみといった楽器以外の物を叩いた音を集めるなど、さながらフィールド・レコーディングめいたアプローチも見せる。音色やアイデアの幅と奥行きを広げた、ビビオらしいファンタジックな一枚だ。 (天井潤之介)
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