憎しみのエレクトリック・ビート

ペット・ショップ・ボーイズ『エレクトリック』
2013年07月24日発売
ALBUM
ペット・ショップ・ボーイズ エレクトリック
最初の曲から凄まじい「念」というかオーラをビンビン感じたペット・ショップ・ボーイズの新譜。アルバム・タイトルがすべてを語っているように、今作は彼らの音楽活動に対する自己言及的な作品で、批評的であると同時にキャリアの全肯定でもある内容だ。狂騒と虚無が表裏一体となったエレクトリック・ビートは、刃物のように鋭い。ニュー・オーダーやシザー・シスターズを手がけたスチュアート・プライスがプロデュースで参加しているのだが、ペット・ショップ・ボーイズとの意気投合ぶりは凄まじく、全編何かが憑いたように冴え冴えとしている。あからさまに80sなシンクラビア・サウンドを多用したり、レトロなシンセ音を意図的に引用しながら、過去と未来をブレンドする編集を行い、結果的に高度に洗練された2013年のフロア・ミュージックを完成させている。

ペット・ショップ・ボーイズとは一貫してロック的なスタンスで活動をしてきた反逆者だったのだな、と改めて感動した。ダンス・ミュージックの通俗性からこれほどかけ離れた音楽はない。シニシズムとネガティヴィティに裏打ちされた四つ打ちビートは、永遠に癒されない宿命だの魂だのを暗示していて、ブルジョワジーを一生憎んで生きるブルーカラーの怨恨のようなものも感じる。それが極限まで洗練された進化形となったのが本作だ。彼らは正真正銘の「ロック・ミュージシャン」だと思う。この冷血で冷笑的なビートには、搾取される多数派を踊らせるやりきれなさがある。ペット・ショップ・ボーイズは本作で永遠に老いないミュージシャンになった。ニール・テナントの30年来変わらぬヴォーカルもヴァンパイアの如き。驚異的名盤。 (小田島久恵)
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