美しき円環

ウォッシュト・アウト『パラコズム』
2013年08月07日発売
ALBUM
ウォッシュト・アウト パラコズム
前作に続きベン・アレン(アニマル・コレクティヴ、ディアハンター他)をプロデューサーに迎えたセカンド。例えばトロ・イ・モワやネオン・インディアンが共に脱チルウェイヴ的なネクスト・ステップを模索しているのと比べると、あくまでチルウェイヴ的なサウンドを追求し続けているというのが作品を聴いた印象だ。それこそジェイムス・ブレイクやライやインク等も含む最近のエレクトロニック・ミュージックの作り手が「歌」に比重を置く傾向とは対照的な作風に思える。もっとも、このことは彼がチルウェイヴという狭いジャンル内に留まり続けている、という意味ではない。言うなれば、チルウェイヴ的な想像力/創造力を内側から押し広げている、といった具合だろうか。今作の聴後感は音楽的には前作と大きく変わるものではないし、実際の制作アプローチもこれまでの流れを踏襲したものだろう。ただし、ハープやペダル・スティール等の生楽器や、メロトロンやオプティガン等のヴィンテージ・キーボードが多用され、音色は格段に多彩さと細密さを増している。そして自身の「歌」を際立たせるのではなく、むしろそうしたレイヤーの一部として溶かし込み音響的な奥行きを強化する作法は、ウォッシュト・アウトならではと言うほかない。今作では曲間がシームレスに繋がれたような構成になっていることも相まって、聴き手はどこまでも深く作品内に没入することができる。その共犯関係をエスケーピズム、あるいはヒプナゴジック(入眠)というならば、今作は究極のチルウェイヴ的体験を約束する作品に違いない。なんて刹那的で快楽的な音楽だろう。(天井潤之介)
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