かくも優しく強い「復活の声」

ジョン・メイヤー『パラダイス・バレー』
2013年08月21日発売
ALBUM
ジョン・メイヤー パラダイス・バレー
「数々のゴシップを超えて人生の根源に到達した昨年のアルバム『ボーン・アンド・レイズド』で全米2週連続1位&30ヵ国でiTunesチャート1位を記録」という栄光の直後に訪れた、「2度目の喉の手術で一時は自ら『僕の70歳ヴァージョンのよう』と酷評するほど声域を失う」深刻な事態。しかし、そんな12年の衝撃を受け入れ克服して完成させた今作『パラダイス・バレー』でのジョン・メイヤーの歌は、絶望の傷跡など微塵も感じさせないほど深い滋味と包容力に満ちて響く。先行シングル曲=M4“ペーパー・ドール”をはじめ、ケイティ・ペリーとの親密なデュエットを聴かせるM6、軽快なカントリー・ビートとペダル・スティールに乗せて「打ちのめされて 初めて何者かになれる」と辛辣な真実を歌うM9……35歳にしてその声の隅々にまで染み込んだタフな人生訓が、彼の表現によりソウルフルなヴァイブを与えている。そして、彼が住むモンタナ州の地名を冠した今作の最後に「ただ 帰り道に思い出してほしい きみはひとりぼっちじゃないことを」という祈りを織り込んだM11“オン・ザ・ウェイ・ホーム”には感激必至。 (高橋智樹)
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