愛に満ちた世界で愛が欲しいとねだる

さよなら、また今度ね『P.S.メモリーカード』
2013年09月18日発売
ALBUM
さよなら、また今度ね P.S.メモリーカード
今年1月にリリースされた、前作にあたるミニアルバム『菅原達也菊地椋介佐伯香織渋谷悠』で歌われていたのは愛だった。“in布団”も“踏切チック”も“信号の奴”もラブソングだった。同じように、“輝くサラダ”も“ジュース”も“うわあああん~第2の思春期~”もラブソングである。菅原達也の手にかかれば、食卓のサラダにも空に光る月にも墜落してきたUFOにも東急ハンズにもおんぼろのギターにも、つまりこの世界はいたるところに愛が満ちているということになる。しかしことはそう単純ではないと思わせるのは、彼の書く歌詞に描かれる愛は、すぐ身近にありながら永遠に自分のものにならないものであり続けるからだ。ラストの“かわいいくまさん”。愛玩の象徴である「くまさん」は《だきしめたりしたら/泡になる》のである。愛なんて信用ならんと奥歯を噛み締めながら、それでもやっぱり《0から10まで愛してる》と言ってしまう、その引き裂かれた厄介な感じ。そんなリアルをあくまでポップに親しみやすく、そしておもしろく表現するさよ今は、やっぱりどこまでも2013年的で、同時にどこまでも普遍的なロックバンドだ。(小川智宏)
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