「ブルース・スプリングティーンとわたし」というタイトル通り、ブルースのファンがブルースについて語り倒すというのがこの作品の内容で、さまざまな時期のライヴ映像を交えて自分の人生とブルースの音楽とが交錯する様子をファンがそれぞれに語っていくという、ある意味で強烈にマニアックなブルース・ファン・ドキュメンタリー。ファンの自分語りなんか聞きたくないよと思われるかもしれないが、さすがにあのリドリー・スコットの製作指揮の下にあるだけに、かなり説得力のある語りが厳選・構成されていて、決して押しつけがましくなることなく、なぜブルースがこれほどまでに求められているのかということを見事に浮き彫りにしてみせている。それはまた、挿入されていくライヴ映像のブルースの姿の変遷にも象徴されていることで、ブルースというアーティストの歩みと変化こそがファンにもまた大きな意味と勇気を与えていることが伝わってきて、これまでにない切り口でアーティストを解説するドキュメンタリーとなっている。ボーナス映像にはポール・マッカートニーも客演する去年のハード・ロック・コーリングのライヴもあり。(高見展)