揺るぎない揺るぎ

ザ・キュアー『4:13 ドリーム』
2008年11月05日発売
アルバム
ザ・キュアー 4:13 ドリーム - 4:13 ドリーム4:13 ドリーム
ずっとファンでいてよかった。一昨年のフジ・ロックでの待ち焦がれた23年ぶりの来日、そしてこの至上の傑作。あだ花と言われる80年代ニューウェイヴ勢の中で、キュアーはU2とは違う意味で別格であることを証明し続けている。ニューウェイヴではなくなることによって王道ロックになるのではなく、ニューウェイヴとして堂々の王道バンドとして00年代に立っているのだ。髪型もメイクも世界観も何も変わらない。本作のアートワークには「私の人生において、この世に確かなものは何もないと考えている」というゴッホの言葉が刷られ、一昨年の来日時に僕が粉川に託した質問「あなたは結局、自分が何者なのかわからないまま死ぬことになると思いますか」にロバート・スミスは「僕は自己というものを結局発見できることはないと思う」と答えた。そうした、思春期的とも揶揄されがちな根源的不安感を表現の核に据えたまま、彼らは唯一無比のスタイルを作り上げ、世界中でスタジアム・コンサートをできるほどのポジションを築いたのである。

今作は特に素晴らしい。過去のキュアー・スタイルをゆっくりと脱ぎ捨てながら、新たなキュアー・サウンドに挑戦し、確立している。みんな途中でほっぽり出して、たまに時代の気まぐれで無責任にもてはやされる80年代ニューウェイヴ/ゴシックのスタイルというものを、見事に貫いて結実させ、新たなロックとして叩きつけている。新世代ニューウェイヴのヒヨコ達よ、これを聴いて勇気を得て志高く進んでくれ!(山崎洋一郎)
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