06年の初演から実に200万人以上を動員、ラスベガス最大規模のミュージック・ショーとなった『LOVE』。今作は、ジョージ・ハリスンのアイデアが元になって実現したビートルズ×シルク・ドゥ・ソレイユ奇跡の共演の模様――ではなく、その共演が実現するまでの舞台裏を公演初日まで丹念に追いかけたドキュメンタリー。「それまで生演奏オンリーだったシルクに、偽者バンドの演奏ではなく本物のビートルズの音を導入する」「しかも、40年間ビートルズの音源に触れ続けてきたジョージ・マーティンに『危険な賭けだ。ビートルズの曲をいじるのは聖杯をいじるのも同じ』と言わしめるだけのプレッシャーを引き受けながらやる」という困難な作業を１つ１つ先へと進めていくスタッフ――ジョージ・マーティンと息子のジャイルズ、シルク創設者のギー・ラリベルテなどの姿は、淡々としていながら実にドラマチックだ。ポールやリンゴの証言を楽しむより、実は「いきなりマスター・テープを渡されて途方に暮れた」と赤裸々に話すジャイルズの姿にアイデンティファイしながら観るのが、今作の正しい楽しみ方かもしれない。と思った。（高橋智樹）