00年代前半から、アングラなインディーズやブログを中心に新たなリスナーを開拓している世界各地(主に非西側諸国)のサウンド。「目新しい、他とは違う何か」に目のないヒップスター層が主な顧客になるが、シリア人歌手:オマール・スレイマンの浮上―ファンであるビョークがリミックスを依頼、欧米フェスにも出演―は、その「発掘」トレンドを象徴する出来事のひとつだと思う。
結婚式や祝祭でのダンス(ダブケ)音楽の演奏で名をあげた彼にとって、本作は初のスタジオ録音盤になる(フォー・テットが参加)。しかし硬質なシンセと打ち込みが前面に出たサウンドは、個人的には洗練され過ぎ。猥雑で不定形なお祭り音楽という文脈から切り離されてしまった印象で、「フォーク・ポップ」な本質を体験したいならむしろサブライム・フリークエンシーズ発のコンピを推す(もっとも、高度な機材を使いたいというのはミュージシャンの自然な欲求なので、この「滅菌処理」はあながち欧米サイドの植民地的強制でもないのだろうが)。ともあれ、先述したようにこの人の音楽は「ハレ」の場のハイパーなエネルギーがあってこそ花開く。12月の来日でその真価を味わってほしい。(坂本麻里子)
エキゾ趣味の今昔
オマール・スレイマン『ウェヌ・ウェヌ』
2013年11月06日発売
2013年11月06日発売
ALBUM