思いきりノスタルジックなサウンドを使ってながらも2013年のエミネムの心境を描くのに成功している、“スタン”を再訪する1曲目が、まさに今作のそんなトーンの象徴。他にも新星ケンドリック・ラマーとのコラボは両者にとっても意外な曲だし、リック・ルービンが手掛けた、ビースティ・ボーイズがサンプルされている曲にはエミネムの思春期が蘇る。絶頂期のように笑える部分もある作品だ。しかし、やはりエミネムが本領を発揮するのは敵に刃が向った時。とはいえ、2000年には敵だらけだった彼も、今の敵は自分のみ。なので、今作で彼は自分の才能を客観視し、母に「愛している」と許す上に、「死ぬのは怖くない」とまでラップしているのだ。そして、そんな彼が内面を吐き出す時のキレまくるラップはまるで衰えていない。神の境地に達したとは言わないが、カニエが自らのことを「神」と呼び、ジェイ・Zが「聖杯」を手にしたと豪語する今年、41歳のエミネムが自ら“ラップ・ゴッド”と名乗り出た今作は、否定しようもない狂気の才能が謳歌されている。(中村明美)
本当の神は誰か
エミネム『ザ・マーシャル・マザーズLP2』
2013年11月20日発売
2013年11月20日発売
ALBUM
思いきりノスタルジックなサウンドを使ってながらも2013年のエミネムの心境を描くのに成功している、“スタン”を再訪する1曲目が、まさに今作のそんなトーンの象徴。他にも新星ケンドリック・ラマーとのコラボは両者にとっても意外な曲だし、リック・ルービンが手掛けた、ビースティ・ボーイズがサンプルされている曲にはエミネムの思春期が蘇る。絶頂期のように笑える部分もある作品だ。しかし、やはりエミネムが本領を発揮するのは敵に刃が向った時。とはいえ、2000年には敵だらけだった彼も、今の敵は自分のみ。なので、今作で彼は自分の才能を客観視し、母に「愛している」と許す上に、「死ぬのは怖くない」とまでラップしているのだ。そして、そんな彼が内面を吐き出す時のキレまくるラップはまるで衰えていない。神の境地に達したとは言わないが、カニエが自らのことを「神」と呼び、ジェイ・Zが「聖杯」を手にしたと豪語する今年、41歳のエミネムが自ら“ラップ・ゴッド”と名乗り出た今作は、否定しようもない狂気の才能が謳歌されている。(中村明美)