重さは違えど落ち込んだりすることは幾らでもあるじゃないですか。でも今「あの時なんであんなに辛かったんだろう」って笑い飛ばせてるし、なので落ち込むのは、笑えるための休憩のように思ってもらったらいい
──2曲目の“All in Doubt”は、お友達の作詞チームに作っていただいたそうですね。
「これがね……僕、毎度毎度歌詞に時間が掛かるので、スタジオに来てもらって、違う価値観の助け船を出してもらうんですけど。今回、自分の仮歌を聴いてもらって、パッとイメージしてもらった歌詞がこれなんです。このメロディでこういう考え方ができるんだ!って。自分にはなかなか書けなかった歌詞ですね」
──社会派な内容ですよね。
「いつも、歌詞は同世代に届けたくて。歌ってる人はこういうことを思うんだ、自分と一緒じゃんって思ってほしいんですよね。それでこの歌詞ができた時に、ギクって思って。ゆとりって言われている世代なので、自分に言われているかのようで、レコーディングは身の引き締まる思いでしたね。しっかりしろよ!ってハッパ掛けられているような。同世代には説得力を持って伝わっていくと思いますね」
──Yuguchiさん自身は、こういう歌詞より、楽しげな歌詞を書くことのほうが多いですよね。
「そんなにないですね。1曲目(“笑い合う門には福来たる!”)みたいな歌詞が多いです。だから、ビリビリ刺激を受けました。ライヴで歌う時も責任感を持って歌わないといけないですね、発信するものとして」
──そして6曲目の“さよなら夏のチェリー”の歌詞は、ORESKABANDのtae(Dr)さんが書いてらっしゃいますね。
「こういうパターンは初めてで。元々この曲のメロディができて、チームのみんなで話していた時に、登場人物が男じゃないね、じゃあ、女性に書いてもらおうかってなって。ORESKABANDとは昔から付き合いがあって、taeさんの書く歌詞の世界観も好きだったので、直接連絡をとったら、ふたつ返事で引き受けてくれました。大人の女性の歌詞なので、女性に聴いてほしいですね」
──“All in Doubt”とは別の意味で、歌う時にドキドキするんじゃないんですか?
「そうなんです。女性になりきらなきゃいけないじゃないですか。まだライヴでは一回もやったことがなくて、練習中ですけどね。taeさんの気持ちを心に刻んで歌わないと」
──この2曲とも、他の方が書いた歌詞は、別の角度ですけどシリアスですよね。Yuguchiさん、周りにはこういう歌詞も歌ってほしいと思われているんじゃないんですか?
「確かに、そういう曲がなかったりするので、周りはそう思っているのかもしれないですね。新しい自分を引き出してくれた気がします」
──これからはシリアスな歌詞も、自分でも書いていきたい?
「そうですね。次の制作にも活かしていきたいです。お客さんからしても、あまり聴いたことない2gMONKEYZだと思うし、今後もチャレンジしていきたいですね」
──3曲目の“今夜はFu!Fu!Fu!”は、タイトルも含めてバンドのど真ん中な感じがします。
「色は出ていますね。ライヴでやるのが楽しみです。どうノッてくれるのか。ディスコチューンにしたかったんですよ。僕がアース(・ウィンド・アンド・ファイヤー)とか、70年代、80年代のディスコナンバーが好きで、こういう曲をやってみたかったんです。制作段階では僕の理想に近付いていたんですけど、ガヤが入っているんですよね。ちょっとふざけすぎたなっていう反省点はあるんですけど(笑)、ディスコの振り切った感じは出せたかなと。おふざけディスコっていう軽い気持ちで聴いてほしいなって。タイトルも、洋楽のタイトルを無理矢理に邦楽にしたみたいな感じで」
──元々あったんじゃないか、っていうくらいのしっくり感ですよね。
「そうそうそう。歌詞は、男女がパーティーで集まって、いろいろ踊った中で何があったんだろうねって考えさせて終わらせたんです。そこ言わないのかよ!って突っ込ませたいなって。あとはお任せします、ご自由にどうぞっていう。もともと『Fu』のあとにハートを付けようかと思ったんですけど、ちょっとやりすぎかなって(笑)」
──確かに(笑)。この曲や“笑い合う門には福来たる!”が2gMONKEYZの表っていう感じですよね。
「そこから、裏の部分でじっくり聴かせたり社会風刺を見せて、こんなことやるんだ!って思わせたいですね」
──そんな中で言うと5曲目の“微笑みのつぼみ”は内面というか、どバラードですよね。
「これも結構初めてで。三連符だし。僕、メンタル面が弱いところもあって、でも、重さは違えど、落ち込むことって幾らでもあるじゃないですか。今笑ってるし、あの時何であんなに辛かったんだろうって笑い飛ばせてるし、落ち込むのは、笑うための休憩のように思ってもらって、一歩一歩自分のペースで進んでもらえたらなって。誰でもあることだし。そういうメッセージをいい具合に伝えられたらいいかなって。実体験が詰まっています」
──《雪解け》とか北海道だとリアルですよね。
「そうなんです。僕、春先がシュンってなっちゃうんです、毎年。そこから、春と夏にかけては、どうにでもなれってなるっていう(笑)。今悩んでることなんて、将来の楽しいことを考えたらちっちゃいことだなって、明るい気持ちになってほしいですね。バラードですけど」
今でも結構内気だったりしますからね。でもステージに上がったらやるしかないじゃないですか。だからとにかくもう自分をさらけ出すしかない
──Yuguchiさん、明るいキャラクターですけど、根は真面目ですよね。
「真面目なんですかね?(笑)」
──紙資料にも自ら内気って書いてるじゃないですか!
「バンドを始めるにあたっても、中学生の時で、メンバーみんなそうなんですけど、そんな目立つ性格でもなかったし、眉毛も太いし……」
──眉毛関係ありますか?(笑)。
「イケてるメンバーに入っているわけでもないし、でも心では、一個目立ちたいなって思っていて。じゃあ立てるところに行くしかない!って、バンド作って学祭に出たんですよ。それが続いて今に繋がっているんです。でも、今でも内気だったりしますからね……」
──ステージに立った時に、ここだ!って思ったんですか?
「気持ちいい!と思って。コピーだったんですけど、1曲終わって、全生徒から拍手をもらって、そこから音楽でやっていきたいっていう道が見えてきて、高校からオリジナルを作ったんですよね。そのうちにメンバーにも音楽でやってこうっていう気持ちが見え始めて、良い出会いもあって、ここまで来れましたね」
──内気でも、ステージでは縮こまることなく弾けられたんですね。
「そこでしか弾けられなかったんです。ステージに上がったらやるしかないじゃないですか。恥ずかしいとか言ってられないし。じゃあ、とにかく自分をさらけ出すしかないって、ステージの上なら強気になれる自分がいたので」
──そのうちにパーティーキャラが目覚めていったと。
「どんどんそっちの方向に行きましたね。最初は、ギター持って歌っているだけのこともあったんですけど、黙って聴いてもらうより、笑って踊ってもらうほうがいいと思い出して、明るい曲を書き始めたんですよね。お客さんとワイワイしたいなって」
──今作も、コンパクトな中に、内面から開けた顔から新しい顔まで、いろいろ収めることができましたね。
「そうですね。ジャンキーなアルバムになったかな。ジャンクってガラクタっていう意味もあって。ある人には必要ないものでも、違う人には必要なもの、宝物になるかもしれない、そういう真逆の価値観を持てるって面白いなって。このアルバムも、1曲1曲個性のある曲ができたので、人によって、違う聴き方ができるアルバムになったと思いますね」
──そもそも音楽もそういう捉え方ができますよね。
「音楽を聴かない日ってないじゃないですか。気軽に聴いてもらえる音楽をやっていきたいです。今まで興味なかった人も、ファストフードのように気軽に手にとってもらえるような、お茶の間バンドになっていければと思います」
──Yuguchiさんにとっても、音楽はジャンクな存在なんですか?
「そうですね。僕も出掛ける時には常に音楽を聴いているし、気分によっていろんな曲を聴いているので」
──そうやってジャンクに取り入れたものが、これから2gMONKEYZの楽曲として、どう輩出されていくかも楽しみですよね。
「ほんっといろいろやっていきたいので。ボーダレスというか。いっぱい振り切って、ずっと続けていきたいですね」
──そんな中でも、軸は、お茶の間バンドになりたいっていう。
「身近な存在になっていきたいです」
──入口は広いと。
「そうです。ライヴでも、もちろん最初から盛り上がってくれても構わないし、こっちで煽りはするけれど、恥ずかしければ後ろでノリながら見てもらってもいいし、そういう人も楽しくなったら前のほうにウェルカムで。気軽に見てほしいですね。誰でも来い!っていう気持ちでやっています」
──そうやって気軽に聴いてもらいたい一方で、音にはしっかり拘りを持っていることが、海外マスタリングに象徴されていますね。しかも、ファレル・ウィリアムスの『HAPPY』などを手掛けたルーベン・コーエンっていう。
「いやあ、やってきましたね。チームからアイディアが出たんですけど、僕らとしては、行くんすか!?って、現実離れしていて。インディーズのバンドを、ファレルのマスタリングをした人がやってくれるなんて!って、頭が真っ白になって。でも、飛行機に12時間ゆられて行ってきました!」
──どうでした?
「日本ではない解釈で、音がキラッとしたなって。LAと北海道のコラボみたいな、上手い具合になりました。マスタリング以外はハリウッドの街を見て、エンターテインメントを目の当たりにできましたし。映画のコスプレを、本物か!?っていうくらいガッチリしてる人がたくさんいるんですよ。路上ミュージシャンのレベルも高いし、真面目にバカなことをやるっていうスタイルの本物を見られて、物凄く刺激になりました。エンターテインメントが身体に染みついているっていうか、いつ行っても楽しい、誰でも参加できるような体制がハリウッドにはあるなって」
──お祭りとか、特別な時だけじゃなく──。
「ずっとやってるんで」
──自分たちのライヴもそうありたいというか。
「はい。刺激的な旅になりましたね」
──バンドとLAの相性の良さをわかった上で、アイディアを出してくれたんでしょうね。
「きっと読んでいたんですね。やっぱり、凄く信頼できるチームだなって思います」
──北海道とLAの相性がそんなにいいなんて、普通は思わないですからね(笑)。
「あんま聞かないですよね(笑)。北海道は落ち着いているイメージでしょうし、真逆ですよね。不思議な気持ちで聴いてもらって、スルメ感覚で、噛めば噛むほど効いてくると思います」
──まさか、そこを繋ぐバンドがいたとは(笑)。
「北海道でも僕らだけだと思いますね(笑)。やりたくてもできないことを体験させてもらえたなって」
──これからも、新しい体験がたくさん待っていそうですね。
「はい、駆け抜けようと。まずは北海道から全国へ。全国でワンマンをできるようになりたいし、いろんな人に見てほしいですね」

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企画・制作:RO69編集部