9mm Parabellum Bullet 最新作をひもとくソロインタヴュー×4!(3)
中村和彦 ロックバンドなのにロックンロール的なアプローチをしてるのが俺だけっていう(笑)
――俺はてっきり、クアトロA面シングルのやり方はあれで終わりで、次は滝をメインにした新しいコンセプトのアルバムが来るのかなあと思ってた。
中村和彦(B) だいぶ曲もあったんで、これを入れないのはもったいないっていう気持ちはあったと思うんですけど。自分として手応えを感じてるのは、それぞれが書いてきた曲っていうのは、それぞれのメンバーの個性みたいなのを感じさせるものだっていうのはもちろんなんですけど、基本的にはバンドの魅力をちゃんとそこに落とし込めてるかどうかっていうのが大事で、今回はそれがすごくできてるかなと思うんですね。たとえば、「この曲、滝さんっぽいなあ」っていう気持ちがあったとしても、実際は「滝さん」っていうより「9mm」が持ってる魅力を滝さんがキャッチして曲の中に入れたっていうことだと思うんですけど、それがそれぞれの曲の中にしっかり入ってる気がします。
――なるほどね。和彦くん的に今作を「9mmのこういうアルバムだ」って形容するとしたらどういうアルバムなの?
中村 そうですねえ、ひと言じゃ言えないですけど、「意欲作」だと思いますよ(笑)
――信用できない評論家みたいな言葉を使いましたね(笑)。
中村 (笑)広げていった感じっていうのはありますね。音楽性だけじゃなくて、作り方も今までと違うっていう意味では意欲的にやったというか。俺の中では『Movement』っていうアルバムが、かなりそういう感じがしてたんですよね。狙って広げていこうみたいな。で、『Dawning』は広げていったものを洗練して、自分らの魅力みたいなものを――。
――「極めた逸品」みたいな感じだよね。
中村 そうそう。で、今回また広げにいった感じがあるかなっていう気がします。
――じゃあ、「今の9mmはこうなんだ」みたいことを和彦くん的に言葉にするとしたらどういうふうになる?
中村 難しいですね。いい意味でまとまってないような気もするんですよね。バンド自体もそうだと思うんですけど、このアルバム自体もほんとに何でもアリ感が――いつもそうですけど、そこは安定してるなって思っていて。
――今までの中でどう考えてもそこが一番出てるよね。だって、作曲者が違うんだもん。
中村 そのへんが言葉にできない感じだと思うんですけど。チャレンジ精神みたいなところは常にあると思いますね。やりたいことはその気持ちを持ち続けていれば増えていくだけだと思うので、わかりやすい形でそれが出たと思います。
――なるほどね。でも、やっぱり和彦くんの曲が、一番ロックンロールだよね。
中村 ありがとうございます(笑)。
――ロックンロール担当だなあと思って。ただ、滝のある種ロックンロール的じゃないハイパーギターというか、ブルース感みたいなものを拒絶するぐらいのソリッドなギターアレンジをすることによって、完全に9mmの曲になってる。すごく嬉しかったんじゃない? 曲を作った者として。
中村 そうですね。でも、ある程度自分で「こうなるんじゃねーかな」とか、他のメンバーのいろんなアプローチを察してやるみたいなところもありますね。「ロックンロールやりたい」っていう気持ちがあって、自分で予測しながらできるようになったと思います。
――だって、3曲ともそうだもん(笑)。
中村 逆にそれを「意識的にやろう」って思ってやりましたね。結果、すごくいい感じだったし、アルバムに入らなかった曲とかもいくつかあったりするんですけど、だいたいロックンロール系なんですよね。
――これがアルバムのなかに3曲も入るっていうのはすごく画期的だし、しかもサウンドのデザインとしてはちゃんと9mmのソリッドな感じになっていて、「これ、おいしいなあ」って。
中村 ロックバンドなのにロックンロール的なアプローチをしてるのが俺だけっていう(笑)。別に他のメンバーが書いた曲もロックを感じさせないわけじゃないんですけど。
――これ、The Birthdayに持っていったら相当泥臭いアレンジすると思うよ(笑)。
中村 あははははは。周りのメンバーのそれぞれのアプローチがあるからこそ9mmとして成り立つというか、そのへんは9mmにしてもらってる感じもあると思いますね。
――みんなで曲を書いてるし、それぞれわりと曲のタイプもバラバラだし、それをひとつひとつ仕上げてアルバムにしなくちゃいけないわけだから、冷静というか客観的になれたのかもしれないですね。
中村 それはあると思います、客観性みたいなところで言ったら。
――もしかしたら、「次はこういう方向に行くから、今回はこういうやり方で」みたいな計画のもとにこういうアルバムを出してきたのかなあとも思ったんだけど。
中村 基本的にそんなに賢い人たちではないので、僕らは。
――たまに思い切ったことやるけどね。
中村 賢くないからなんですよ!(笑)。9mmにおけるバンド活動というものは、その時「やりたい」と思ったことをやり続けることでしかないんじゃないかと。