AA= 史上最強のニューアルバム『#5』をいち早く聴いた!

AA=

文=高橋智樹

ついに来た。AA=の新作アルバム、その名も『#5』。いよいよその全貌が明らかになった。

0.8秒と衝撃。・J.M.を迎えてラウド&ポップの極致を響かせた“→MIRAI→(ポストミライ)”、Dragon Ash・Kjとともにジャパニーズ・ミクスチャーロックの真髄を轟かせた“M SPECIES”、世界を舞台に闘うMasato(coldrain)&Koie(Crossfaith)を擁し「誰の中にも存在する“モンスター”の力」を凄絶に焼きつけた“FREE THE MONSTER”……スプリットアルバム『#』『4』とその合体盤『#4』以降、上田剛士は上記のコラボシングルを矢継ぎ早に配信リリースしてきたし、それらは来るべきニューアルバムを占う上での重要なファクターだと思っていた。それはある意味その通りだが、ある意味で大きく外れていた。今作『#5』は“→MIRAI→(ポストミライ)”“M SPECIES”“FREE THE MONSTER”をその一部として取り込みつつも、それらを遥かに凌駕する巨大なカオスを描き切った作品だからだ。

たとえば、震撼必至のハイブリッド・ハードコアの音像の中、悲鳴の如き電子音の咆哮と白川貴善(BACK DROP BOMB)の叫びが交錯する“INEQUALITY”。たとえば、聴く者を抗い難く底なしのヘヴィネスの渦へと引きずり込む“DOWN”。たとえば、あふれ返る世界の切迫感を、加速する激走スラッシュビートと《Hatred too!!!》のシャウトの連射に託した“憎悪は加速して人類は消滅す〜Hatred too go fast, Vanishing all human〜”……あらゆるロックのフォーマットを戦慄させるような、AA=史上最高に攻撃的かつブルータルに磨き上げられた重轟音が、こちらの頭と心に真っ直ぐに音の銃口を向けて迫ってくる。

そして――今作に通底するのは、ジョージ・オーウェル『動物農場』の一節にインスパイアされた「AA=(All Animals Are Equal)」という自身のコンセプトをさらに研ぎ澄ませた危機意識であり、その批評性の刃を「今」の時代への最後通牒的として突きつけるような真摯なメッセージである。「世界で最も裕福な62人の資産の合計は、世界の経済的に恵まれない下から半分(約36億人)の資産の合計とほぼ同じ」というこの時代の驚愕の真相をハードコア・ハウス的なサウンドに重ね合わせた“3.600.000.000 = 62”に象徴される通り、ここにあるのは世界の混沌そのものだ。

上田剛士は、その類稀なるカオスクリエイターとしての手腕を今こそ最大限に解き放って、深刻な分岐点に立った世界と、そこに生きる僕らへの渾身の願いを2016年の今、『#5』という1枚のアルバムに封じ込めてみせた。そんな危機感の爆風のようなアルバムの中だからこそ、《創造(想像)しろPreミライ》(“→MIRAI→(ポストミライ)”)、《Now, light a fire》(“M SPECIES”)、《Close my eyes/Feel the beast》(“FREE THE MONSTER”)といったコラボ楽曲群のヴァイタリティが、単体で聴いた時とはまったく別種の輝きをもって立ち上がってくる……そんなマジカルな作品だ。この強靭なるヘヴィネスは日本を揺るがすのみならず、国境を越えたメッセージともなり得るはずだ――と思わせるに十分な存在感を、今作は確かに備えている。

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