
全開の1stフルアルバム『ヘドが出る前に』で大勝負だ!
コンテンポラリーな生活が、ついに1stフルアルバムをリリースした。これまでミニアルバムを3枚、そのたびにこんがらがりながら、音をかき鳴らしてきた3人は、この集大成ともいえる作品に何を刻んだのか? 注目と期待を背負いながらももう一歩抜け切れずにいた彼らの背中を力任せに押す『ヘドが出る前に』とはどんな作品なのか? 朝日廉(Vo・G)と藤田彩(B)に訊いた。
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俺たちコンテンポラリーな生活だ!みたいなアルバムができた。ここからがやっと合格点です(朝日)
──――ついにフルアルバムができました! 完成してほっとした?
朝日廉(Vo・G) いや、もう、できないかと思いましたね、俺は……レコーディングの一週間前まで、「この曲気に入らねえから新しく曲作ろう」みたいな感じだったんで。
藤田彩(B) ずっと曲作り続けて。
朝日 曲未完成のままレコーディングに突っ込んでいって、その中でギターフレーズとかを決めていったりしたので。
藤田 歌録りのときに初めて、あ、こんな感じなんだっていう感じでした。
朝日 だからもう僕はほんとにヒヤヒヤでしたね。
――今までもそんな感じだったっけ?
朝日 まあ今までも……。
――いつもしっちゃかめっちゃかになってる感じはするけど(笑)。
藤田 でも、たぶん今回が一番しっちゃかめっちゃかでしたね。
朝日 逆に僕のしっちゃかめっちゃかにメンバーがついて来てくれるようになったっていう、今回は。
藤田 「おっしゃ、来い!」みたいな感じで作ってました。
朝日 前回は急に俺がこれやろう!って言ってもメンバーができない、アレンジが間に合わないみたいな感じになってたんですけど……今回はなんかポンッて出せば、よっしゃ!じゃあこれ!みたいな、すごいレスポンスが早かったんで。どうにか成り立ったみたいなところがあったんですね。
――フルアルバムっていうことで気持ちの入り方も違いましたか?
朝日 好き勝手できるぞ!って……なんか、ポップな曲もいっぱい作ったんで、それ以外はほんと好き勝手しよう!と思って。そういう部分ではすごく、楽しくじゃないですけど、「今、アルバム作ってるな」っていう充実した気持ちでやれました。
――出来上がったアルバムについてはどうですか?
朝日 なんか、俺の中ではやっとギリギリ合格点をあげられますね。今まではずっと赤点の30点とかで……今回やっと40点超えて、自分の中で合格ラインをやっと超えられた、こっからまた上げていきたいっていう感じです。
――藤田さんはどうですか?
藤田 私はもう、すごいアホみたいなアルバム作れたんで……まあ他に負けないものができたんじゃないかな?とは思ってます。
――朝日くんの自己評価が厳しいのはいいとして、僕は初めてコンポラというバンドがどういうバンドであるのかっていう全体像がちゃんと見えた作品になったなあっていう気がするんですよ。わりと今までは、朝日廉っていう人の自意識が先走ってたり、あるいは逆にちゃんとポップなものを作ろうって振り切ったり――。
朝日 なんかその、妙におとなしかったり。
――うん、そうそう。
朝日 なんか、そういう部分でやっと合格ラインを超えられたんです、このアルバムで。俺たちコンテンポラリーな生活だ!みたいなアルバムができたから、やっとここから合格点だっていうことが言えると思います。
――うん、そんな感じがする。
朝日 やりたいことがかたちになってきたというか。
――そうだね。どのへんの曲から作り始めたんですか?
藤田 既存曲が2曲あったんですよ、“アンハッピー少年少女”と“さかな暮らし”は昔から作っていた曲で。それ以外で一番最初にできたのが、なんだろう?
朝日 “トロイメライ駅”、“品川メモリーズ”“憎しみのブギ”……。
藤田 “憎しみのブギ”と “嫌々々々”が同じタイミングで。
朝日 たぶん“嫌々々々”のほうが早かった。
――この曲、歌詞は相当悪態ついてる感じですけど。
藤田 (笑)。
朝日 これはもうなんか最近の……僕の実体験で。
――わりと今回、こういうの多いよね。
藤田 なんかヘドヘドしてる(笑)。
――うん、ヘドヘド(笑)。それって何なの?
朝日 なんか、おとなしくなっちゃったなあと思って。もっと俺、男くさい音楽をやりたいなって……今作ってる新曲だって“クソヤロウ”やもんな。
藤田 タイトルが“クソヤロウ”(笑)。
朝日 やっぱり、男くさいというか、暑苦しい曲をスゲーやりたくて……で、自分の中で溜まってるヘドみたいなものを、せっかく溜めたヘドみたいなものを、なんか今までそれをメインに曲書いてたのに、めっきり書かなくなっちゃっていて。「あれ? 俺、なんか、それが書きたいのに、なんで書かないんだろう? 書こう!」と思って。それで思い出したように書き始めると、それがまたおもしろいように書けるんですよね(笑)。
朝日さんは、売れる曲を書かなきゃって頭悩ませてるときより、ぶっ飛んだ曲作りてえって言ってるときのほうが輝いてると思う(藤田)
――逆になんでおとなしくなってたんだと思いますか? 自分で。
朝日 そうですねえ……『ポップソングと23歳』のときはすごくおとなしくて……なんか、おとなしかったですね。
藤田 そうだね。あれはあれで全然アリなんだけど。
朝日 なんかきれいに作曲をこなそうと変に意識してたんですよね。でも“嫌々々々”ができたら、もっとめちゃくちゃしてえな、もっと自由に曲が書きてえなっていう……なんか、今回のフルアルバムはたぶん今までで一番、手に取ってくれる方が多いと思うんですけど、注目してくれる人がきっと多くなるなら、その目に触れるとこであえて尖ったことをしたいなっていう。
――藤田さんから見てこういう朝日廉っていうのはわりと素な感じだと思う?
藤田 そうですね、なんか結構反骨精神とかがすごいデカいタイプなんです、本人は首かしげてますけど(笑)。私から見るとすごく反骨精神の塊だと思うんです。
――それは俺もそうだと思う。
藤田 なんか歌詞うんぬんだけじゃなくて、もう純粋に今流行ってる音楽はやりたくない、みたいなことであったりとか。
朝日 反骨っていうか、もう、めんどくさいやつっていう。
――(笑)。
藤田 まあ、めんどくさいやつって言い換えてもいいと思うけど、それって普通でありたくないとか、なんかそういうところ。今回の楽曲にも結構全面に出てると思います。それをポンッて投げられて、じゃあもう普通なことはしないでおこうって、私もちょっとめちゃくちゃなことを結構してるんで……なんか、そういう息の合わせ方がたぶん前回よりもっとできるようになったとも思うんです。で、そういう朝日さんっていうのは、たぶんそういうときが一番輝いてるんだと思います。売れる曲を書かなきゃって頭悩ませてるときより、なんかぶっ飛んだ曲作りてえって言ってるときのほうが、いいものができてるんじゃないかなって私はいつも思ってます。
――非常に的確かつ正しい分析が今なされました(笑)。さすがだね。
藤田 納得してないですよ、彼は、たぶん。
――でも、音楽始めた動機がそもそもそうだよね。
朝日 たしかに、“東京殺法”作ってるときはスゲー楽しかったですね。
藤田 輝いてた。
――ムカつく、見返してやりてえって気持ちでやり始めたわけでしょ。
朝日 そうですよ。いや、わかんないですけど。
――だから、そういう人なのに、きれいなメロディ、ポップソングを作ろうってなった時期があったわけじゃない、それはなんでだったんですか?
朝日 いや、そんときはもう純粋に、曲作りはそういうもんだって思ってたんですけれど……すごい、今考えても謎なんですけど、はみ出しちゃいけない枠みたいなのがすごいあるみたいな考え方をしてて、すごいルールを守りながら曲を作ってたんですよ。だから『ポップソング(と23歳)』の中の曲って定番のフレーズだったり技法だったり、定石みたいなのがいっぱい使われてるんですよ。たぶんそういう王道みたいなのを使うのに純粋にはまってたんだと思います。それを完成させて、で、後々になって聴いたときに、おとなしいなと思って。その反動で今度はこんなにグレちゃった。
――グレた?
藤田 グレちゃって(笑)。
――『ポップソングと23歳』ってミニアルバムはいい作品だと俺は思うんだけど、たしかに朝日くんの実感どおり、ちゃんと作ってあるって感じが今聴いてもあるよね。
藤田 うんうん、そうですね。
――なぜちゃんと作ったか?って言ったら、ひとつには危機感があったわけだよね。なんとかせにゃいかん、ここでちゃんと自力で立たなきゃいかんと。
朝日 まあ、そうですかね。固くなってたんですかね。
――あと、焦りもあったんじゃないかと思うし。
藤田 ありました。
――なんか肩肘張ってる感じがみなぎっているよね、あのミニアルバムは。
朝日 いや、そうなんですよ。もちろん今回もがんばらないと後はないわけですけど、ルールはもうちょっと破ってよかったなっていうのは思いますね。肩肘張ってたり緊張してたりするときってほんとに、その時点ではわからないもんなんです。あの頃、考えてみるとやっぱり固かったなって……たぶんこの『ヘドが出る前に』も、後になって考えてみると、まだ固いなってなるんだろうと思うんですけど。だからもっと、いい曲も書かなきゃいけないけれど、それ以前におもしろい曲をいっぱい書かないと埋もれるなっていう。それこそ自分の好きだった音楽ってスゲー興味深い、おもしろい音楽ばっかりだったんで。もしかしたらそういう原点というか、自分の好みに立ち返って曲を作ったんだと思います。すごい俺の好みがはっきり出てます。
――それは何なんだろう? 開き直りなのかな?
朝日 いやもうたぶん、純粋に反省して。
――ははは(笑)。
朝日 もっといいアルバムを作りたいなってなったときに、反省して、もっとこうしたらよくなるんだろうって、もう地味な考察だと思います。
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