累計売上100万枚突破のDJ和、 最新MIXに見る「フェスと時代の関係性」(2)
「楽しい曲、盛り上がる曲をどんどんくれ!」っていうパワーをもっと広げてあげることがDJとして重要だと思ってる
――DJとして、その他に何か感じている音楽シーンの潮流はあります?
「僕はいろんな曲を流すんですけど、『いろんなやつをくれ!』っていうお客さんの雰囲気も感じます。アニソンのイベントとかでDJをやることも多いので、ロックの現場でもそういう曲を流すことがあるんですけど、盛り上がると嬉しいですよ。僕は『このフェスで今まで一度も流れなかったであろう曲』っていうのとか、バンドが解散してしまったり、歌われなくなった名曲をDJとして蘇らせることもやっているので。あと、最近は午前中からプレイする機会が出てきているので、“ラジオ体操第1”を流したりもしています」
――斬新ですね(笑)。
「あれってスーパーアンセムですよ。みんな知っていますし、自然と身体が動いちゃいますからね(笑)。アーティストが歌うわけがない曲を流して可能性を広げるっていうのも、DJの役割だと思います。まあ、そういう曲も流しつつ、やっぱり僕が回す現場に関して最も感じるのは、『楽しい曲、盛り上がる曲をどんどんくれ!』っていう雰囲気です。そのパワーをもっと広げてあげることがDJとして重要なのかなと。そういうパワーを感じると、『音楽業界は本当に停滞しているのか?』っていうことも感じますよ」
――CDの売り上げ枚数が下がっているのは紛れもない事実ですけど、ライヴやフェスは活発ですからね。お洒落なヘッドフォンも人気ですし。
「そうなんですよね。CDの売り上げの数字からすると、世間的には盛り上がっていないように見えるんでしょうけど、『盛り上がりたい』っていうパワーは、昔より上がっているんじゃないでしょうか? みんな暗いほうばかりを見がちだけど、DJっていうのは永遠にそういう部分を切り捨ててワイワイやることなんだと思います。『こういう時代だから暗い曲を流す』とか絶対にしちゃいけないなと(笑)。フェスに行って『明日は仕事かあ……』っていうことはあると思いますけど、その日その場所にいる瞬間は、夢の空間であるべき。そういう空間は、世の中に必要なものだと思います」
僕のDJによって「ロックの皮を被ったヲタクであることがバレた」って言われることがよくある(笑)
――なるほど。あと、先ほど、ロックフェスの現場でアニソンもかけるとおっしゃっていましたけど、そういう曲が自然に受け入れられている風通しの良さも、最近の傾向ではないでしょうか?
「そうですね。若い人に顕著ですけど、いろんな音楽を聴くようになっているのを感じます。例えばKEYTALKのファンだって、おそらく動画サイトとかでももクロを聴いたことがあるんじゃないですか? あと、ロックのフェスででんぱ組.incも観たりとか。振り幅はどんどん広がっていて、いろんなものの良さに気づく人が増えているんですよ。だから僕のDJによって『ロックの皮を被ったヲタクであることがバレた』みたいなことを言われることがよくあるんですけど。例えば僕が『ラブライブ!』のμ'sの曲を流したのに反応して思わず歓声を上げてしまうこととかによって(笑)」
――フロアに潜むヲタバレのトラップ(笑)。
「でも、いろんなものが好きって素敵なことですよ。ロックのフェスもどんどんジャンルレス、ボーダレスになっているじゃないですか。でんぱ組.incとかであんなに盛り上がるのも、まさにそういうこと。もうジャンルの時代ではなくて、みんな『音楽』として聴いているんだと思います。BABYMETALの人気もそういうことでしょうね。アイドルとヘヴィメタルっていう両極端をひとつにして支持されているんですから。なんでもできる時代だからこそ作る側は大変ですけど、聴く側は本当に楽しいことになっていると思います」
――多様なものが受け入れられていると同時に、生まれる音楽のミクスチャー度も増している背景として、おそらく動画サイトの存在も大きいですよね。「あなたへのおすすめ」って、どんどん関連のものを表示してくるじゃないですか。
「動画サイトってすごいですよね。この前、大学生と話をする機会があったんですけど、みんなすごくいろんな関連動画を辿っているみたいです。今ってスマホとかでいつでも音楽を聴いて、観ることができるようになっていますけど、あのパワーってものすごいと思います。そうやっていろんな音楽をみんながどんどん吸収している感じって、日本っぽさの表れでもあるのかも。日本人って世界的に見ると音楽を作る人、聴く人の両方が変わっているみたいですからね」
――日本人って、盛りだくさんで雑多なものが好きなところがありますもんね。幕の内弁当とか、いろんな料理が入ったお重もワクワクするじゃないですか。
「欧米の人は焼肉弁当みたいな『肉と米』っていうくらいストレートなほうが好きなんですかね?(笑)。なんとなくそんな感じがしますけど」
――『フェス、その前に』は、そういう日本で生まれた「ロックの幕の内弁当」?
「そうですね(笑)。『おかず何種類あるんだ⁉』っていう。おかずだらけ、メイン料理だらけです」
――では、そろそろまとめに入りましょう。ミックスCDのシリーズは、売り上げの累計が100万枚を突破したそうですが、そのことに関してはどんな想いがありますか?
「コツコツ2008年からやってきたんですけど、本当に嬉しいことです。こういうCDを通じて、DJやミックスCDの面白さが幅広い方々に伝わったらいいなあと思います。最近はストリーミングでいろんな音楽を聴けるようになりましたし、動画サイトで曲をフルで聴けることも、今後もっと増えるでしょうね。そういう中でDJやミックスCDというもののあり方も変わっていく気がします。僕もいろんな面白いことを探っていきますよ。DJってまだまだ可能性があると思うんです。だからいろんな場所でやりたいですし、フェスの現場でできるのも本当にありがたいです」
――集まっているお客さん、いつもすごく楽しそうですよ。
「そうおっしゃっていただけると嬉しいです。昔は喋らずにDJだけやっていたんですけど、フェスだとDJブースというよりステージでやるじゃないですか。そういう場所だとライヴ感をより出してやることを考えるようになるので、喋ったり、手を振ったり、『飛べ!』とか言うようになっています。元々は喋らなくていいからDJを始めたようなものなんですけど(笑)」
――(笑)ライヴ感を一層高めるために斬新な衣装を着たりはしないんですか?
「やついいちろうさんの諸葛孔明の衣装のような? あれ以上のものは、なかなかないですからね。やついさんに相談しに行こうかな(笑)」

ミュージックビデオ
リリース情報

DJ 和 「フェス、その前に」
発売中
値段:¥2,000+税
AICL-3008
1. MONSTER DANCE / KEYTALK
2. オワラセナイト / フレデリック
3. 風吹けば恋 / チャットモンチー
4. 星降る夜に / 東京スカパラダイスオーケストラ
5. マスタッシュ / 木村カエラ
6. ふがいないや / YUKI
7. SNOW KISS / NIRGILIS
8. ホログラム / NICO Touches the Walls
9. HEADHUNT / OKAMOTO'S
10. WAO! / ユニコーン
11. 富士山 / 電気グルーヴ
12. sharp ♯ / ねごと
13. 世界 / ハルカトミユキ
14. 君にジュースを買ってあげる♥ / グループ魂
15. はじめて君としゃべった / ガガガSP
16. CからはじまるABC / 忘れらんねえよ
17. タリホー / ザ・クロマニヨンズ
18. BRAINWASH (LiVERTY ver.) / THREE LIGHTS DOWN KINGS
19. 曇天 / DOES
20. DAY×DAY / BLUE ENCOUNT
21. 現状ディストラクション / SPYAIR
22. ずっと好きだった / 斉藤和義
23. 風は西から / 奥田民生
24. サマータイムラブ / Shiggy Jr.
25. nerve / BiS
26. ショコラ・ラブ / バンドじゃないもん!
27. プラネットマジック / N'夙川BOYS
28. Enigmatic Feeling / 凛として時雨
29. 夜明けのBEAT / フジファブリック
30. Z女戦争 / ももいろクローバーZ
31. A・B・Cじゃグッと来ない!! / 清 竜人25
32. デスコ / 女王蜂
33. そばかす / JUDY AND MARY
34. JOINT / RIP SLYME
35. HIT IN THE USA / BEAT CRUSADERS
36. 唯一人 / 爆弾ジョニー
37. 世界をかえさせておくれよ / サンボマスター
38. リライト / ASIAN KUNG-FU GENERATION
39. フルドライブ / KANA-BOON
40. 恋のメガラバ / マキシマム ザ ホルモン
ライヴ情報
「ONE☆DRAFT presents 『PYLON』vol.17」
2016年3月4日(金) 渋谷eggman
「ANIMAX MUSIX DJ Night Osaka」
2016年3月6日(日) ホテル&リゾート バリタワー天王寺「バトゥール大阪」
「AJ Night 2016」
2016年3月26日(土) ディファ有明
提供:ソニー・ミュージックレーベルズ
企画・制作:RO69編集部