正解が変わった。過去は過去できっと正解だったんですけど、今ここからまた自分として正しいと思える道を進みたい
――なるほどね。じゃあすごく大きな分かれ道だったんだね。あのまま行ってるのと、今もう1回時間を置いて考えてっていうのとだと、ここからのキャリアが全然変わってくるもんね。
「変わっていくと思います。僕としては正解が変わったという感覚で。過去は過去できっと正解で、間違いだったというわけではなくて。とりあえず今、変わっちゃったのですべて肯定はできないんですけど、その時正解と思ってやっていたのは本当で。今ここからまた自分として正しいと思える道を進みたい。ひとつ言えるのは絶対に嘘をつきたくないというところで。あと、2年前のCOUNTDOWN JAPANに出演させていただいた時にヒトリエのwowakaさんに自分で歌いたいと思ってるんですけどってご相談したことがあって。それで、ついこの間、歌わせていただくことになると思いますっていう話をしたら、にっこりみたいな(笑)」
――その話も聞きたかったんですよ。じゃあ、そんな意識改革があったじんくんの今後の音楽活動って、具体的にどういうものになっていくんですか?
「さっき説明した、ファンの人の応援してくれてる、求めてくれているものと自分が本当にやりたいことっていうものが超自然的に混ざったもの――それが実際に実現できるのかどうなのか」
――そこが一番大きいかもしれないですね。
「そうですね。それをやりたいっていうのがまずあって。今までっていろんなヴォーカルさんに歌ってもらったりとか、ボーカロイドを使ったりとかしていたんですけど、そこに人格がどうしても宿っちゃって。もし、それで達成できなかったら人のせいにしそうな気がするので。だから今は自分で歌うしかないなと思っています。歌うのはもともと好きなので、これを機にやってみようと」
――でも、それはでかいね。
「そうですか」
――ファンもびっくりするところだと思うから。米津くんにインタヴューした時、自分がどうしても納得いってない言葉は本当に歌えないって言っていて。そういうことも起きてくるんだよね。
「実はお送りした音源って歌詞がなくて。歌詞を考えてるんですよ。1番がちょうど昨日できたんですけど、すごく良くて。歌詞がやっぱりもう、難しいどころじゃないんですよね。今まで書いてた歌詞とルールが全然違って」
――また今度はレコーディングっていうところにおいて――。
「そうですね、声を入れてっていう」
――そう。「あれ? 何か違うぞ」とか。
「前に1回自分で歌って録ったことがあるんですけど、案の定納得できなくて。今回はもっと納得できないんじゃないかなと思うんです。今年のCOUNTDOWN JAPANのお話をいただいた時もすごく悩んで。中途半端なことをできないっていうのがとてつもなく大きくて。自分的にはここに辿り着いたけれど、間に合うのか?みたいな。今、必死になってやってるんですけど。周りのプレイヤーは、『いいじゃん、やろうぜ』って言ってくれたので、そこはちょっと安心しているのと、そういう人に囲まれて楽しく作れているので、いい曲を披露できるんじゃないかと」
間にボーカロイドや世界観を挟むとフィルターが多くなる。自分で歌ったら、また違うものを出せると思った
――なるほどね。これからいろんなことをやるにしても、次にまずやることって、ソロシンガーじんとしてのデビューっていうことになるよね。
「ちょっとソロシンガーっていう言葉が怖いですけどね」
――フィクションを構築する能力っていうのは、もうとてつもないものがあるんだけども。同じレベルにおいて、「ソロシンガーじん」っていうものをしっかり構築していけるっていう手応えは自分の中でありますか?
「あります」
――いろいろイメージも固まってきている?
「そうですね。結局フィクションとはいえ、僕の好きだったものをみなさんが好きって言ってくれてたんだろうなっていうのはあって。もっとそれをフィクションじゃないもので見せられたら。えげつなさだったり、まとまらなさだったりとか、そういうところでもっと揺さぶれるんじゃないかなって思っています。そこで、間にボーカロイドを挟んで、世界観を挟んで……とかやっていくと、やっぱりフィルターが多くなってしまう。実際に面と向かった状態になった時って、また違うものを自分でも出せるんじゃないかなって思って」
――なるほどね。すごくいいと思います。まだ完成形を聴いてないから評価はできないけれど、すごく期待してます。
「ありがとうございます。期待していただければいいなって思ってます。大丈夫です、かっこいいものにするので」
――音楽的にガラッと変わってしまうかどうかっていうのは別として、ファンの人は心配するかもしれないけどね。
「今まで僕の曲を好きって言ってくれた人はたぶん好きになってくれるんじゃないかな。でも、昔から好きだったバンドが方向転換をして、前のほうが好きだったなあみたいなことって、やっぱりあるじゃないですか。好きだったのに全然変わってしまったみたいな。そうなるとただのわがままになっちゃう気がするので」
――今の話を聞いていると、そういうアルバムでの方向転換とか、そういうレベルではないと思うし、だからといってやらないでおこうって言ってもそれは無理ですよね?
「無理ですね」
――離れていく人も何人かいたりするのかもしれないけど、それはもう仕様がないし。だからそれを成功に持っていくための努力っていうことだと思います。
「それでやめるかって言ったら違いますもんね。究極ってきっと、シンプルでまとまったものになっていってしまうことなんですよ。ごちゃごちゃボタンいっぱいの機械より、やっぱり研ぎ澄まされていったほうがいい。でも、それはやっちゃいけないと思っていて。もっと複雑で、にぎやかなものの中に僕が欲しいものがありそうな気がしていて」
――バージョンアップ、スケールアップ、世界観が広がるっていうことかな。
「そうですね。だから今まで作ってきたものが今、すごく閉塞的に見えていて。まとまってるというか、お上手にやろうとしてる感じがあって」
――ライヴは具体的にどうするんですか? 新しい曲をやるの?
「昔の曲もやります。いきなり全曲新曲っていうのも失礼だと思って。でも、自分で歌います」
――COUNTDOWN JAPANがお披露目のステージになるんですよね。
「はい。すみません、誘っていただいたのに新曲をやってしまう」
――いやいや、こんな嬉しい話はないです。楽しみにしています。
「ありがとうございます」