ポルノグラフィティ 王道の両A面シングル、その全てを語る

ポルノグラフィティ

シングル『アポロ』でのデビューから18年目を迎え、先日44枚目となるシングルをリリースしたばかりのポルノグラフィティ。もはやその名を知らぬ人はいないだろう。岡野昭仁(Vo)と新藤晴一(G)という、ふたりのソングライターを擁するユニットでもあり、今回の『LiAR/真っ白な灰になるまで、燃やし尽くせ』は、まさにそのふたりのソングライターとしての個性が強く表れた、両A面シングルである。ポルノグラフィティの王道とも言える“LiAR”と、疾走感あふれるギターサウンドが熱い“真っ白な灰になるまで、燃やし尽くせ”。この2曲がどのようにしてできあがったのかを語ってもらいながら、ふたりのソングライターとしてのスタイルを探ってみたい。

インタビュー=杉浦美恵

とにかく強いもの、僕らの持ち得るものの中で一番芯を食っていて、一番僕らをイメージさせるものを出そうと思った

――今回のシングル、両A面でいこうというのは最初から決めていたんですか?

岡野 いえ。まず、今年の秋に出すものとして、バラードを出そうかとか、秋っぽい季節感のあるものを出そうかとか、いろいろ考えてたんですけど、僕たちの中で、“オー!リバル”(2015年4月リリースの42ndシングル)という、ひとつ、わかりやすくポルノグラフィティをイメージさせる曲ができて。その流れでアルバムを作ったり、その後“THE DAY”っていうシングル曲ができたりしたので、アグレッシブな曲っていうのは、ポルノグラフィティの芯として届くものだと再確認できたんですよね。で、今年の春くらいに“LiAR”ができあがって、それを軸にして、そこからもうワンチャレンジで、ハイテンポで攻撃的な楽曲が1曲できないかなということで、“真っ白な灰になるまで、燃やし尽くせ”を作りました。

――曲ができあがってみたら、両A面で出すべきだということになったんですね。

岡野 そうなんです。とにかく強いもの、今の僕らの持ち得るものの中で、一番芯を食っていて、一番僕らをイメージさせるものを出そうと。

――確かに、新藤さんが作った“LiAR”は、“オー!リバル”からの流れをくむ、EDMのテイストだったり、ラテンのイメージがあったりして、まさにポルノグラフィティらしい魅力的な楽曲です。

新藤 良い流れの中で次のシングルを出したいというのはありました。改めて「ポルノグラフィティとは?」という検証をしながら、「今この音を出す理由」みたいなものを混ぜ合わせて作っていった感じですね。

――“LiAR”はEDMっぽくありながらも、バンドアンサンブルとしても洗練されています。そもそも、新藤さんの中で、EDMを取り入れているという感覚はありますか?

新藤 そういうテイストはアレンジの段階で乗ってきたものなので、もともと自分で作っている時は、ラテンとかEDMとかではなくて、なんとなく「情熱的に」くらいのイメージで作ってるんです。でも、結局、アレンジなり歌なり――歌詞もそうですけど、シングルとして完成させようと、ポルノグラフィティのフィルターを通すと、見事に「ポルノグラフィティ/ラテン」と言えるものになるっていうのは、やっぱりそれだけ強い色があるんだなって思います。EDMにしても、それをやりたいと思っているわけではなくて。まさか、この曲がどっかのイケてるクラブで流れるとも思ってないですし。2016年にリリースする曲としての、装いのひとつなのかなと思いますね。

――あえて取り入れているわけではないと。

新藤 ドラムのキックが打ち込みっていうのは過去にもありましたしね。それこそEDMっていう言葉が使われ始める前から、僕らはドラムレスのバンドなので打ち込みはやってるし。個人的には、EDMサウンドと、そう呼ばれる以前のものと、その差がよくわからないんですよ。要は打ち込みのキックでしょ?っていうくらいで。

岡野 テンポ感が合うんだと思うんですよ、ポルノグラフィティの曲として。EDMでBPM135とか、そのへんのテンポに合致すると、僕らの歌は相性がいいんですよね、たぶん。EDMとオーガニックなものが相性がいいってことは、もう皆さん知ってることですから。僕らは昔ラテンっぽいものをやっていたという強みがあるので、そこが合わさったものは僕らの得意ジャンルでもあるし、時代性も取り入れられる。だから、自分たちの流れがEDMにあるというよりは、強みを活かすアプローチとしてのEDMという感じですね。

作詞する時、やっぱりタイトルがバチッと決まるのってすごい重要なんですよ

――ちなみに、“LiAR”の「i」だけ小文字なのは、何か理由があるんですか?

新藤 この曲は《Liar Liar》っていう歌い出しなんですけど、そこに入れる言葉が最後まで決まらなくて。気持ちいい言葉が見つからなかったんです。

――《Liar Liar》っていうのは仮歌だったんですか。

新藤 最初は《Baila Baila》だったんです。「Baila」って、ラテンの言葉で「踊ろう」っていう意味なんですけど、僕らには“ジョバイロ”っていう曲もあって、ちょっとかぶるなあって。で、「Baila」は使えないなって思った瞬間に、急にここに入る言葉の語感とか重要性を感じて、すごく悩んでしまったんです。「Liar」ってやっぱりよくある言葉だし、でも、これ以上に合う言葉が結局見つけられなくて。じゃあ大文字の「LIAR」にしようかなと思ったんですけど、案の定同じタイトルの曲はすでにたくさんあって。ちょっと爪痕を残しておこうかなと思って、タイトルは「i」だけ小文字にしたんです。まあ、ほかの「LIAR」っていう曲と見分けがつくように、タグみたいなもんですね(笑)。

――作詞での苦労の跡ということですね(笑)。

新藤 作詞する時、やっぱりタイトルがバチッと決まるのってすごい重要なんですよ。これしかないっていう言葉が出てくる歌は、やっぱりしっかりフォーカスが合ってる状態だっていうのが、自分の中の経験則としてあるので。だから、この曲に関してはね、ちょっと不本意なんです(笑)。

とことん燃え尽きるまでやってやろうって、そういう気持ちでやりきったら何かがすごく伝わったような気がした

――岡野さん作の“真っ白な灰になるまで、燃やし尽くせ”は、“LiAR”とは対照的な長いタイトルで。「燃え尽きろ」じゃなくて「燃やし尽くせ」っていう、能動的な言葉がキモだなと思いました。

岡野 そうですね。やっぱり燃やし尽くすのは自分でしかできないので。

――この超アグレッシブな楽曲はどういうふうにできた曲ですか?

岡野 この曲は攻撃的で暑苦しい曲だから、歌詞も暑苦しいものにしようと思ってたんです。それで、自分の中で暑苦しい体験って今年何があったっけ?って考えた時に、台湾でフェスに出させてもらった時のことが思い浮かんだんです。台湾のお客さんの一部はポルノのことを知ってくれてるかもしれないけど、ほぼアウェイな状況で。そこで何をやろうかと考えた時に、幼稚な言い方ですけど、もう「燃えるしかないな、出し尽くすしかないな」って思ったんですよね。自分たちのキャリアが日本で18年あろうが、そんなことは関係なく、今この場のお客さんがいちばん喜ぶことをやるべきなんだと。その時、本当にすごく、自分の中で何かが動いたような気がしたんです。

――その時の気持ちが歌詞に反映されている?

岡野 そうですね。さらにそのフェスの後に横浜スタジアムでライブがあったんですけど、今までやったことないようなセットリストを用意して、めちゃめちゃ大きいハコだったのに1日目に雨が降ってしまったんです。だけど、台湾での「燃えるしかない」っていう経験があったから、この時ももう「やるしかない」っていう気持ちで。野外で雨が降ると来てくれた人に本当に申し訳ない気持ちになるし、これはもうとことん燃え尽きるまでやってやろうって、そういう気持ちでやりきったら何かがすごく伝わったような気がしたんですよね。僕はボーカリストとして器用にいろんなことができるタイプじゃないし、全力で歌い尽くす、全身でやり尽くすしかできないんだなって。もっと本当は余裕を持ったライブ運びをする予定だったんですけど、全力でやりきって、結局そういうものでしかないんだなっていうのを再確認しました。それに気づいたときには、自分の中で一歩進んだなと感じましたね。

――そういう背景があって、この曲の歌詞には岡野さんのパーソナルな心情がストレートに出ているし、サウンドも激しいものになっているんですね。

岡野 サウンドに関しては、もちろんアグレッシブにするつもりでいたんですけど、アレンジャーの江口亮君が、「もっともっといける」って言うので、けっこう限界まで攻めました。テンポ感的に、本当に歌えるんだろうかってすごく不安だったんですけど(笑)。

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