自らの人生哲学やロマンチシズムを貫きながら、新たな境地に挑戦し続ける。そんな飽くなき探求心の躍動に、感嘆のため息が零れた。2019年にデビュー20周年という大きな節目を迎え、2021年には「新始動」を掲げコロナ禍と向き合う中で生まれたシングル『テーマソング』をリリースしたポルノグラフィティの、約5年ぶりとなる12作目のオリジナルアルバム。配信を含む全シングル曲に新曲9曲が加わった同作では、タイトルの通り新たな夜明けを感じさせる、地に足の着いた物語が紡がれている。

ポリシーを力強く歌うロックナンバーや、アクションストーリーを彷彿とさせる刺激的なポップソング、童話的なアコースティックナンバー、ノスタルジックなJ-POP、アダルティで甘美なR&Bなど多彩な楽曲群に共通するのは、緊迫する世界の渦中にいる人々に「扉」を提示しているということ。特に《弱き者》へ呼び掛けるタイトル曲“暁”は象徴的で、小さなアクションが新しい世界へつながっていると示唆してくれる。自分の本心を通して聴き手とまっすぐ向き合う、誠実さに満ちた音楽だ。（沖さやこ）

『ROCKIN'ON JAPAN』9月号より