SETSUNA SPIRAL 6年越しのファーストアルバムに描いた、光と闇の世界(2)

西川進さんと一緒に音楽を作れるんだと思ったら、すごく勇気がわいた。本当に自分の中で存在が大きい

――満を持してのファーストアルバムができあがったわけですが、どんなアルバムにしようと思っていましたか?

「まずラブソングを作る、っていうことと、自分の中の雑食性、二面性を出したかったんです。だからラブソング、失恋ソングとして、キャッチーなJ-POPを作るっていうことと、自分がもともと好きだった、いい意味で雑な、ラウドロック的なもの、鬱々しいものを表現したいという両軸があって。その二面性を曲ごとに完全に分けたものにしようと思っていました。それがアルバムとしてまとまった時に、違和感のないものになっているというのは、もちろん大前提なんですが。タイトルでは、それを、『カナリヤ』と『カラス』という言葉で表現しました」

――今作の制作に携わった西川進さんとは、どういう経緯でつながったんですか?

「前に僕をプロデュースしてくださった方が西川さんとお知り合いで、その昔お世話になっていた事務所のディレクターさんも西川さんとつながっていて。僕はとにかく少年時代から西川さんの手がけた楽曲にめちゃくちゃ影響を受けてきた世代ですから。椎名林檎さんも矢井田瞳さんもすごく聴いていたので。で、もう『この人と一緒に仕事したい、これで最後でもいい』っていう思いでお願いしたんですよ、ダメ元で。きっと断られるだろうなと思っていたんですけど、引き受けてくださって。きっとあの瞬間に何かが動いたんだなって思いますね。西川さんと一緒に音楽を作れるんだと思ったら、すごく勇気がわいたし、他に参加してくれた方々も、『西川さんが参加してるなら俺も』っていうのが正直あったと思うんですよ。本当に西川さんの存在が自分の中では大きいです」

――こうしてSETSUNA SPIRALとして、序章の幕が上がったわけですが、この作品が完成したことで、未来に向けてのモチベーションも取り戻せたのでは?

「もともとこのアルバムを作る過程で、2枚目も作れるくらいの曲数はできていたんです。今はもう2枚目の半分くらいはレコーディングも終わっています。来週くらいからまたレコーディングを再開して。だから今まさに作っていっている段階です」

――曲自体はすでにたくさんストックがあるんですね。

「よく驚かれるんですが、僕、表立って活動していない時期が長かったこともあって、曲のストックは1000曲くらいあるんです。やることがなくて、人前に出て歌う精神状態じゃなかったから、ほんとに趣味みたいに自分のためだけに作ってたんですけど。何年か前にMacにデータを取り込む作業をしていて、なんかすごい貯まってるなあと思って数えてみたら、ファイルの数は1000を超えていました」

――そんなに?

「もちろんすべて完成してるわけじゃなくて、サビだけのものとか、Aメロだけのものとかも含めてですけどね(笑)。でもそれを見て、ああやっぱり僕は音楽が好きだったんだなあって改めて思いました。歌えなかった時もあったし、音楽がしんどくて、いい曲作らなきゃっていうプレッシャーで動けなくなってた時期もあったし。でもそれがはじけた時点で、何でも書けるようになったんですね、逆に」

スタッフの方たちに、「なんでまたやらないの?」って言われた時に、やらない理由を言えなかった。怖かったんでしょうね、また音楽と向き合うのが

――またスタートしようと思えた理由として、一番大きな変化って何だったんでしょう。

「やはり“呼吸”が完成したことが大きかったと思います。それを聴いてくれたまわりの方々や途中で終わってしまった前のプロジェクトを観に来てくれてた人、スタッフの方たちや社長に、『なんでまたやらないの?』って言われた時に、やらない理由を言えなかったんです。怖かったんでしょうね、また音楽と向き合うのが。やるってなったら僕は0か100かっていうタイプなので。100できるっていうところに来ないとやりたくないんですよ、楽曲もそうだし生き方も。まわりの人たちはそれを知ってたんだと思います。あいつはいつか動くだろうって(笑)」

――改めて、できあがった『カナリアとカラスの共鳴』をご自身で聴いてみて、どんなことを思いましたか?

「いろいろな感情がありすぎて、冷静に聴くのが難しかったです。マスタリングがすべて終わった時に聴きましたけど、我ながら『らしい』なと思いました。良くも悪くも僕らしいなと。とにかく『キャッチーに作りたい』っていうのが根本にあったので、それは達成できたかなと思いますけど、歌詞は、伝えようとしてるのに伝えきってない部分もあるし、天邪鬼だなあと、自分で歌詞を見ていても思います(笑)」

――ラブソングなんだけど含みを持たせて、いかようにも取れる、みたいな?

「そうです。男性なりの伝え方っていうか、100%言い切らないずるさみたいな部分も出てるかもしれないですね(笑)。だから、受け取り方はどうぞご自由にっていうか、いろんな受け取り方をしてもらえればいいなと思います。でき上がってからの感想でも、『すごくいいものができた』とは言わないようにしているんです。もちろん僕的にはこれ以上ないと思える作品ですけど、それは僕が思ってるだけかもしれないので。良いか悪いかは僕が決めることじゃないし、とにかくたくさんの人に聴いてもらってナンボだし。聴いてもらって、好きな曲が1曲でもあったら嬉しいなと思います」

提供:Cocoacid Records

企画・制作:RO69編集部

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