特別インタビュー! THE BACK HORNが今こそ語る、18年目の「ビジョン」と「本音」(2)
今みたいにSNS流行ってたら、THE BACK HORN、あっという間に消えてたかもな
──たとえば、昔栄純くんがぶっ壊れた時期があったけど、そこで止まっちゃうバンドもいるわけじゃないですか。というか、普通止まると思うんですけども。
松田 ああ、あの時期はけっこうスパルタだったなというのは、ふり返れば思ったりもしましたけど。「スパルタ療法だよな」っていう。だってあの時期、それすらも世の中に出しちゃおうっていう方法だったじゃないですか(笑)。
山田 売りにしたんだよね。
岡峰 鬼ですよ(笑)。
松田 でもほんと、当時のTHE BACK HORNチームが鬼だったっていうのは、けっこうありますね(笑)。だってほら、ファーストアルバムの『人間プログラム』を作る時に隔離されましたから、俺ら。山中湖のスタジオに。ベースがやめちゃって3人とも落ち込んでるのに、「そういう、メンバーがいない状態こそ曲ができるんじゃないか」って思われてたというか。で、またそれにやけくそで応えて、アルバムができちゃったじゃないですか。だから、そういう定めじゃないけど、何かあるのかもしれないですね。
菅波 まあ、どっかで止まる可能性はたぶんいっぱいあったけど、回避してんだろうね。こないだ将司と言ってたんですけど、SNSが爆発的に普及してから、まだそんな経ってないじゃないですか。俺らが20代前半ぐらいで、みんなで××××××××××××したりしてた頃に──(※こちらの判断で伏字にしました)。
岡峰 いや、みんなでやってねえ。
松田 ほんとやめて、みんなでやったことにすんの(笑)。
菅波 (笑)。その頃に、今みたいにSNS流行ってたら、THE BACK HORN、あっという間に消えてたかもな、って。
松田 いや、余裕で消えてるでしょ。
岡峰 もう、写真撮られてその場でアップされるだろうしね。栄純じゃなくても拡散されるわけだもんね、そんなの。
菅波 そうなったらもうダメじゃないですか、全員が。
山田 だから巻き込むなって(笑)。
──そういえば昔、『ROCKIN’ON JAPAN』で栄純くんの2万字インタビューをやりましたけども……思い出すとあれも、今だったら俺の判断で活字にしないなあ、ってことだらけだった気が(笑)。
菅波 そうですよね。だから時代的にラッキーだったっていうのもあると思う(笑)。
このドキュメンタリーは、擬似的にメンバーに入り込んでるような視点になるかもしれないですね、観てる人
──それから、ツアードキュメンタリーの監督を菅波栄純がやるっていうのは、光舟さん提案だったって聞いたんですけども。
岡峰 まあもともとは、去年の対バンツアーでMUCCと大阪でやった時に、打ち上げでギターのミヤくんに「ライブの映像の編集とかも自分でやってんだよ」っていう話をきいて。その場のノリで栄純に「おめえも映像好きなんだからやればいいじゃん」って。
菅波 飲みの席のノリの話って、だいたい流れるじゃないですか。でもこいつ、めずらしくちゃんと覚えてて、打ち合わせの時に言い出したんです。「栄純がドキュメンタリー作ったらおもしろそうじゃないですか?」って。それで決まったんですけど、そん時はその大変さが全然わかってなかった(笑)。やり始めたらすっごい大変だったんですけど、それより何より言いたいのは、ツアーのファイナルの(新木場)スタジオコーストはまるっと入っていて。それと、ツアーのドキュメンタリーも、1時間半ぐらいあるんですよ。もちろん全会場の様子が入ってて、最終的には……ファンも喜んでくれるだろうし、自分でもめっちゃ身になった作業で。THE BACK HORNっていうのをこんな形で見直すことって、なかなかできないから。
岡峰 うん。しかもそれがツアー中っていう。逆じゃないですか、ライブは主観的にやってんのに、映像の編集は客観的にやってて。しかも同じ時期に新しいシングルの“With You”とかも作っていて。
菅波 そうやって脳に負荷を与えることで、新しい回路ができる時期だったのかな。なんか、やってるうちに……ルールとして、演奏中に映像のことを考えんのはやめようと。それは絶対ダメじゃないですか。それで、ドキュメンタリーっていろいろあるじゃないですか? たとえばインタビューが入ってるとか。そうするとストーリーがわかりやすくなるんですけど、4人とも語るタイプじゃないから。インタビューとか一切入れなかったんですよね。
だから構成としては、MCとオフショットとライブシーンだけっていう、かなりシンプルな素材でできてるんですけど。だけど、THE BACK HORNが『運命開花』を作ってツアーを回っていく中で、「やっぱり自分たちのバンドが伝えるべき音楽はあるな」みたいなことを確信していく感じが、伝わる作品になってると思います。それは途中で熊本の地震が起きたこともあるし。その時期のライブの時に自分たちが考えてるとことかも入ってるけど、それを言葉で語ったりしてるシーンは一個もなかったりして。みんなで熊本城を見に行くシーンとかあるんです。黙って見ていて、雨の音しかきこえないみたいな。そういうの、1個1個積み重ねていった時に、「あ、THE BACK HORN、まだまだやることあるな」っていうか、音楽で伝えることいっぱいあるなっていうのを感じられました、作っていて。
最初はやり方がわかんなかったんですけど、だんだん慣れて、ツアー回りながらカメラも増やしていって。撮って、その日のうちに観て、編集して、みたいな感じでやんないと……これ、ツアーの間に3回、ニコニコ生放送で流す作品でもあったから、そういうペースでやんないと間に合わなくて。
で、やっぱりメンバーじゃないと撮れないシーンがあって。そういうシーンも撮れたし、擬似的にメンバーに入り込んでるような視点になるかもしれないですね、観てる人。一緒にツアー回ってる感じっていうか。けっこう特殊でおもしろいと思います。いいのできたな、って感じします。
松田 ステージ上にカメラがあったりとか……普通の収録だと客席側から撮られることが多いじゃないですか。それがステージ上から見てる景色が多い印象だったんで、お客さんからしたらなかなか見れない視点なんじゃないかな、と思いますね。
菅波 俺らの側からお客さんを見てる映像が多いですね。メンバーの目線かもしれないです。
山田 ニコ生、3月・4月・5月で流れたんですけど、ひと月ごとに編集技術がどんどん上がっていくという(笑)。画像にエフェクトがかかり始めたりして。おもしろかったです。