SUPER BEAVER 渾身の大阪城野音が映像化! ビーバーのライブはなぜ泣けるのか? そして初の武道館に懸ける思いを語る

メンバー自身が曲に感動してることが一番大切だと思う


――SUPER BEAVERのライブに関しては、メンバーやお客さんも含めた全員の大合唱も、毎回すごく印象に残ります。

「柳沢(亮太/G)に『シンガロングパートがある曲をたくさん作りたい』っていう話をしたことがあるんです。僕がライブに行きながら何が一番楽しかったのか考えると、一緒に歌ってる時が一番楽しかったんですよ。『この大合唱は俺もいるから成り立ってるんだ』と思えた時に、すごく嬉しかったので。だから『シンガロングや手拍子とか、観てくれるみんなの参加できる部分を1ヶ所は作ろう』って柳沢に話したんです」

――“東京流星群”とか、まさにシンガロングの曲ですね。

「僕が最初に、『ああ、やっぱりあなたも歌いたいんだ』って思ったのは、あの曲がきっかけでした。あの曲をライブでやって、歌ってる楽しそうな顔をたくさん見て、『これは、参加できる部分がある曲を増やした方がいい』って思ったんです」

――“全部”の大合唱も、すごく気持ちいいです。

「僕が歌った後を追っかけるようなコーラスの部分があって、最後にみんなで一緒に歌うっていうものになっていることにも意味を感じてます。自分のパートがあって、託してるパートがあるっていうのを経て、最後に全部が一緒になってるっていうのは、すごく僕たちらしいグルーヴの作り方だなと思ってます」

――観客の視点から言うと、柳沢さん、上杉(研太/B)さん、藤原(“29才”広明/Dr)さんが一生懸命歌っている姿も、すごくグッと来るものがあるんです。

「それは、よく言われますね。僕たちはメンバー自身が曲に感動してるっていうことが、一番大切だと思ってます。そうではないものを届けて、『どうですか?』なんて言えるわけないので。この4人は自分たちの音楽が素敵だと思ってて、自信を持ってて、今でも感動しながらやってるっていうことですね(笑)。それが僕たちなんです」

――おじさんみたいなあの風貌の藤原さんが全力で歌っている姿は、毎回、なんだか妙にグッと来ちゃうんですよ。

「あいつはずるいですよね。そういうことを思われるために、計画的にあの姿で生まれてきたんじゃないかと思ってます(笑)」

――(笑)。そういうことも感じられる今回のDVDは、SUPER BEAVERのライブの魅力が、すごく伝わるものになっていると思います。

「ありがとうございます。生に勝るものはないですけど、ライブDVDって、いろんな視点から観られるのもいいですよね。これを観た上で『ライブに行ってみたい』とか『また行きたい』とか、感じてもらえたらいいなあと思ってます」

この本は母ちゃんと作った


――DVDと同梱されている渋谷さんが書いた短編小説集『love。』も面白かったです。

「ありがとうございます。短編小説は、エッグマンが出してる小冊子で書いてますし、頂いたお題を掛け合わせて、それをもとにして書くこともファンクラブの会報でやってるんですよ。でも、そういうフィクションを本という形にしたのは、今回が初めてです」

――例えば収録されている小説のひとつ『まりも』を読んで、「これは“美しい日”と通ずるものがある物語だなあ」とか、曲と結びつけて読んだりもしました。

「なるほど。嬉しいです。小説と曲を直接リンクさせてはいないんですけど、僕の人生観みたいなものは、すごく詰め込んで書きました。『僕たちがどういう風に歩んできて、どんな気持ちで音楽をやってるのか?』っていうものも、すごく隠れた形ではあるんですけど、描かれてると思います。愛情っていろんな形があって、普通の生活の中のふとした瞬間に気づかされたりもするんですよね。そういうものの上に僕たちの音楽は成り立ってるんです」

――いい小説を書けた手応えはありますよね?

「あります(笑)。音楽もそうですけど、やってる内に『こうしておけば良かった』っていうのは絶対に出てくるんです。でも、書き上げた時の『よしっ!』というのはありました。この本は母ちゃんと作ったというのも独特なものがありましたね。母ちゃんは本の編集者なんですよ。プロと仕事をするというのはドキドキしました。膝を突き合わせて、『ここはこうで』ってやるのは、照れくさかったです(笑)。でも、今じゃなきゃできなかったことでもありますし、ブレがなく一緒に作業をすることができました」

みなさんが持ち上げてくださった先に武道館があった


――今年もいろんな活動がありましたけど、2018年も楽しくなりそうですね。ついに日本武道館での単独公演が決定したじゃないですか。

「はい。決まったのは、かなり最近なんですよ。でも、話はちょっと前からありました。『次はあそこしかないだろう』っていうのは、Zepp Tokyoの2デイズを決めた時点で、なんとなく自分たちの視野にも入ってたので」

――メンバーのみなさんは、どんな様子ですか?

「みんな喜んでます。自分たちが武道館でやりたいと思ってるのはもちろんなんですけど、『観てくださる方々にも純粋に喜んで頂けるのかもしれないな』というのが、まず何よりも大きかったです」

――仰る通り、応援しているミュージシャンが武道館でライブをやるって、観客の立場からしても嬉しいことですからね。

「きっと『やったあ!』ってなりますよね」

――しかも、SUPER BEAVERって、結構大変なことがいろいろあったバンドじゃないですか。

「そうですね(笑)」

――そういう人たちがついに武道館に立つっていうのは、ロックバンドの物語としてもすごく美しいですよ。

「僕たちは、どんなにかっこつけたとしてもメジャー落ちバンドですから。そういうバンドがDIYでやってきて、一緒にやりたいと思うチームを見つけて、それが少しずつ大きくなっていって、会場もそれに伴って大きくなっていって、応援してくださる方々も少しずつ増えていって、そういうみなさんが持ち上げてくださった先に武道館があったというのは……自分でも『いい話だなあ』と思います(笑)」

――同感です(笑)。

「僕は不幸自慢みたいなことは、あまり好きではないんですけどね。『この人、こんなに苦労してたんだよ』って知った上で音楽を聴くって、ちょっとずるい気もするし。でも、僕たちは、そういうことから一歩踏み出せた気もしてます。だからこそ、前のライブDVD(2016年10月にリリースされたライブDVD『未来の続けかた』。SUPER BEAVERの歩みを描いた小説『都会のラクダ』も同梱されていた)の本で自分たちのことを書いたんですよ。『こういうことすらも共有すると、もっと面白くなる可能性が出てくる』って感じるようになったんです」

――バンドの背景を知ることによって噛み締められることもありますからね。

「はい。『自分たちはどんな思いで音楽をやってるのか?』っていうことも知ってもらったら、より面白くなるのかなと。そういうストーリー込みで捉えると、武道館はみんなが喜んでくれることに繋がるのかなと感じてます。『応援してきて、いろんなことも知ってるこいつらが、ようやくZepp Tokyoの舞台に立ったのか。よく頑張ったねえ』っていうような感覚を持ったら、より楽しくなると思って前回の本を書いたんですけど、武道館もそんな風に捉えてもらえたらいいですね。卑屈な気持ちで言うのではなく、『メジャーから落っこちたやつらが自分たちでもう1回再起した先に武道館があって、あなたが乗っけてくれたんだよ』って、いいなあって、今、思えてます」

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