井上苑子、10代の終わりと20代の始まり、そして今思う「ロック」とは? 新作『Mine.』インタビュー

「早く私のこと曲にして」とか「今から相談するから曲にしてね」って言われます(笑)


——井上さんもロマンチストですよね。少女漫画が好きなんですっけ?

「好きです。韓国のドラマも好きなんです。『こういうの、いいなあ』って、いろいろ想像しちゃいます」

——友達の恋バナを聞くのも好きなのでは?

「その通りです(笑)。女の子は、『最近どうなの?』って訊くと、仕事の話じゃなくて、絶対に恋愛の話になりますからね。『早く私のこと曲にして』とか『今から相談するから曲にしてね』って言われます(笑)」

——(笑)。“My Dear One”も、そういうところから生まれた曲のひとつなんでしょうね。女の子同士の友情を感じる曲ですから。

「“My Dear One”は、高校生と新しいありがとうの形を一緒に作る『39+U PROJECT』というのに携わらせていただいて作った曲なんです。友達以外のいろんな大事な人にも当てはめて届いたらいいなあと思っています。『ありがとう』ってなかなか唐突には言えないから、曲にしてみんなに聴いてもらいたかったんです」

——井上さんの曲の歌詞は、言い回しがリアルな「女の子」という印象がすごくします。そういう部分も、10代の女の子に憧れられている理由だと思うんですけど。

「憧れられていたらいいですけどねえ。私、ライブのMCでチャランポランなことしか言えないので。お客さんからちょくちょくバカにされるんで、『バカにすんなよー!』って言っています(笑)。そういうやり取りが鉄板になっているんですよ」

――インタビューでは、すごくちゃんとしていらっしゃいますけど。

「今、猫被っています。このインタビューによって、ちょっとは憧れられるようになりたいです……って、こういうこと言っちゃうのが良くないんでしょうね(笑)」


「この単語を使いたいから、こう展開させよう」とか、いろいろなイメージが膨らむようになっています


——(笑)井上さんの親しみやすさは、曲の穏やかな印象にすごく繋がっていると思います。“TODAY”とか、まさにそういうものを感じる曲です。

「“TODAY”は、恋をしている女の子のワクワクする気持ちを歌っていて、私も大好きな曲です。今までの曲の『ワクワク』はキラキラしたイメージだったんですけど、この曲はちょっと大人な雰囲気だと思います」

——10代の女の子の「キラキラ」ではなくて、20代くらいの女性の輝きですよね?

「はい。『デルサタ!』(メ~テレで放送されている情報番組)という、土曜日の朝の番組のテーマソングなんです。視聴者は大人の女性の方々が多いそうなので、そういうみなさんの週末がワクワクする曲をイメージして作りました」

——別れ際の切ない物語が浮かぶ“ワンシーン”の登場人物も、20代くらいの女性を想像しました。

「この曲、もともとは具体的な描写はあまりしていない歌詞だったんですけど、レコーディングの日に歌詞を変えて、登場するふたりが想像できるものにしました」

——《ありふれた平凡な別れが私を/打ちのめしてしまう》って、とても印象に残るフレーズです。

「ここは迷いました。《打ちのめしてしまう》っていう言葉は強すぎるんじゃないかなと思って、『打ちのめす 類語』で調べたりもして(笑)。でも、メロディにも合っていましたし、《打ちのめしてしまう》にしたんです。傷ついている気持ちを描きたかったので、これで良かったのかなと思っています」

——こういうパンチの利いた描写も出て来るようになっていますし、作風が広がっている感覚は、ご自身でもあるのでは?

「そうですね。今までは『物語が出て来る』という感覚で歌詞を書いていたんですけど、『この単語を使いたいから、こう展開させよう』とか、いろいろなイメージが膨らむようになっています。もっとボキャブラリーが増えるように勉強したいです」

——アコースティックギター色が強い“Chocolate”は、シンプルな表現の歌詞だからこそ強く伝わるタイプの曲だと思います。こういう素朴な作風も井上さんの魅力です。

「ありがとうございます。これはすごくサラッと書けちゃった歌詞です。こういう曲もあっていいのかなと。アコースティックギターのサウンドの中にもエモーショナルなものを感じていただける曲になっていると思います」

——「エモーショナル」って、様々な形がありますよね。例えば“踏み出す一歩が僕になる”は、バンドサウンドだからこそ表現できる「エモーショナル」を感じるメッセージソングですし。

「“踏み出す一歩が僕になる”は、百田留衣さんに作っていただいた曲が、サウンドだけでも人の背中を押せるようなものになっていたんです」

——《“幸せ”や“希望”を強請ってるわけじゃない/自分らしく ありたいだけ》とか、ご自身に対して言っているところもありますよね?

「はい。夢に向かっている人をテーマにはしているんですけど、自分もそうなので。路上ライブをやっていた頃とかもそうでしたからね。だから歌詞を書いている内に、自然と自分自身のことにもなっていきました」

——今の井上さんにとっての夢って、どんなことが浮かびます?

「夢って、具体的に言うのが難しいんですよね。でも、私がいろんなアーティストさんに憧れていたように、憧れられるような存在になれたら嬉しいです。そして、音楽は一生やり続けたいです。そんなことを思うのは、音楽くらいですね。20歳になって、ちょっと心に余裕ができたかなと感じるんです。今ももちろん切羽詰まることがあるんですけど、いろんなところに目を向けながら音楽を届けていきたいです」

——先日、セーラームーンのトリビュート盤(『美少女戦士セーラームーン THE 25TH ANNIVERSARY MEMORIAL TRIBUTE』)で、“"らしく"いきましょ”を歌いましたけど、こういうのも子供の頃の井上さんを振り返ったら「叶った夢」なのでは?

「ほんと、そうですね。セーラームーンに関われたということが驚きです。小っちゃい時の私に言ってあげたい(笑)。考えてもみなかったことが目の前で起こったりするお仕事をさせていただいていると感じるので、いろんなことに挑戦していきたいです」


取材後ブログはこちら!
井上苑子に取材! 「エモーショナル」がテーマのミニアルバム『Mine.』について語ってくれました
https://rockinon.com/blog/japan/176207



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