DECO*27が贈る究極の愛の形──最新作『TRANSFORM』に秘められた変革の轍

DECO*27が贈る究極の愛の形──最新作『TRANSFORM』に秘められた変革の轍
「恋」と「毒」、「幸福」と「憂鬱」、「性」と「死」といった、相反しているようで実は異なる性質を持っているはずのテーマを高次元で掛け合わせたリリックが織りなすボカロ文学とも呼べる極めてシンボリックな言葉たちが、キャッチーでキッチュ、ポップというよりはホップ(弾けるという意味で)なサウンドデザインにより高純度な多結晶となって初音ミクの存在証明を鳴らすような──つまり大げさに言えば、DECO*27が初音ミクを通して鳴らす音にはボカロ表現のすべてが詰まっていると言えるほどの可能性に満ちていて、楽曲それぞれがくっきりと人格を帯びているのだ。

発語の気持ちよさを意識したリリック、感情の起伏に導かれるように行われる転調はDECO*27の音楽性の核のひとつだが、「アイドルが全員初音ミクだったら…」というテーマを軸にコンセプチュアルな楽曲をまとめ上げた前作アルバム『MANNEQUIN』から一変、9thアルバム『TRANSFORM』はタイトルが示すように初音ミクの可能性をひたすら模索し、それをさらに拡大し続けようと挑戦した結果が詰まった一枚になった。


K-POP的なアプローチにも通じるポップでキュートな歌いだしから一変してヘヴィなギターロックセクションが顔を出すDECO*27流の「毒」を多分に孕んだミクスチャー“ルーキー”しかり、息継ぎをするように幾度となく繰り返される転調、激しい感情の移り変わりに同調しながらテンポが変わるトラック、愛憎渦巻くリリックの応酬に脳天を揺さぶられる“ネバーランド”しかり、曲が曲の中でみるみると「トランスフォーム」していく。

ようやくたどり着いたカタルシスの先で変貌を遂げることはあっても、ここまで大胆な「変化」を示したことはあまりなかったように思うが、今作に収められた楽曲たちはあえてその変遷をこそ見せつけているのだ。初音ミクが歌う、その変遷、変容の課程にこそ宿る「何か」を感じ取ってほしいと言わんばかりに。
ボーカロイドの、初音ミクの歴史と隣合わせで歩いてきたDECO*27だからこそできる究極の愛の形が詰まっている。(橋本創)


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