スプリット盤『Ken Yokoyama VS NAMBA69』が、今、ピザ・オブ・デスからリリースされる——この一文には、本当にたくさんの感動が詰まっている。Hi-STANDARDのメンバーである横山健と難波章浩。2011年にハイスタは復活、様々なアクションを経て、昨年のアルバム『THE GIFT』リリースやツアーというドラマティックな展開に至った……のだが、その間もKen YokoyamaやNAMBA69は動き続けていたわけで、今作にはその証が刻まれている。
それぞれが、オリジナルソング2曲とカバーソング1曲を収録。一枚の中にはちきれんばかりに詰まった物語について、NAMBA69の4人が解き明かしてくれた。
インタビュー=高橋美穂 撮影=山川哲矢
同じCDに入ることで比べられるだろうし、それを意識して、自分なりに「こうだ!」っていうのを出したんだけど……最初は、みんなに「それじゃあKenくんに勝てねえな」って言われて(K5)
——本当にこのスプリットは、ロックシーンを揺るがす事件ですね!
NAMBA(Vo・B) うん、いい事件ね。
——ピザ・オブ・デスのサイトに掲載されているKenさんのコラムで既に明かされていますけど、きっかけを作ったのはKenさんという?
NAMBA そうですね。電話がかかってきたんです。ハイスタのツアー前だったんで、ツアーの話だろうなって思ったんですよ。そうしたら、神妙な感じで「ナンちゃん、話があるんだけど。スプリットやらない? NAMBA69とKen Yokoyamaで」って。
——ハイスタのツアー前だったんですね! そこに向けて心身を整えている時期に……。
NAMBA なんてこと言うんだと(笑)。
——そこで、どんなお返事をしたんですか?
NAMBA やっぱバンドみんなで考えたいので、すげえいい話をありがとうって言って電話を切ってから、すぐにko-heyとサンちゃん(SAMBU)に電話して。
ko-hey(G・Cho) その次の日、ハイスタのリハの前に、うちらのリハがあって。そこにKenさんが来て「昔は仲いいバンドでスプリットをよく出してたじゃん。今はかっこつけてさ、一枚のアルバムじゃないと……とか言うけど。それを、このふたりがやるって面白いでしょ」って。そこで、よろしくお願いします!って言いました。
SAMBU(Dr・Cho) 僕もすぐに、やりたい!って思いました。
K5(G・Cho) 俺は、嬉しい……を越えて、ちょっとプレッシャーがありましたけどね。でも、やっぱり嬉しかった。こんなことあるんだ!?って。
——でも、NAMBAさんは、いろいろ頭に巡るものがあったんじゃないですか?
NAMBA いや、そんな考えなかったですよ。KEN BANDとして次に何をやるかってなった時に、NAMBA69とスプリットをやりたいっていう話だったの。当時のKenくんとしては……Hi-STANDARDであれだけの動きができた、でも実は、その過程において、Ken YokoyamaとNAMBA69があったんだぜってことを伝えるためには、一緒に作品を作ってツアーをやることが、一番効力があると思うんだよね、っていう。そりゃそうだよね、ってなって。俺らとしても、こんなチャンスないしさ。
3人 うん。
NAMBA 超フックアップされるじゃないですか。俺らは(Ken Yokoyamaに比べて)まだまだ歴史が浅いし、規模も比べ物にならない。セールスや動員もね。彼もそこを……NAMBA69はここで行くべきだよ、とは言わないけど、最近の俺らを見てヤバいヤバいって言ってくれてた気持ちもあるのかなって思ったり。
——聴けばわかりますけど、オリジナルソング2曲は今作のために書き下ろしたんですよね。
NAMBA ですよ。ハイスタのツアーが終わった後、すぐにレコーディングしなきゃいけないってなって。そこで、ko-heyを中心に、みんなが曲作りを頑張ってくれて。
ko-hey ははははは(笑)。でも、クレジットを見てもらえばわかりますけど、“PROMISES”に関しては、NAMBAさんが作曲です。
NAMBA でも、アレンジはみんなでやってますよ。みんなっていうかko-heyが。ギターのアレンジも、ほぼko-hey!
ko-hey (笑)。でも、K5くんはプレッシャーを感じていましたね。俺は「K5くんやったっすね!」って言ってたんです。Hi-STANDARDではNAMBAさんの横にKenさんがいて、(ソロの)AKIHIRO NAMBAからNAMBA69にはずっとK5くんがいて、俺的にはNAMBAさんの横ギタリスト対決みたいな感じに見えたから。そうしたら、K5くんもすげえ嬉しいって言ってて。かつ……さっきNAMBAさんが言ったように、NAMBA69にとって勝負のタイミングだと思っているんです。だから、K5くんもいろんなことを練ってきてくれて。
K5 嬉しいけど、同じCDに入ることで比べられるだろうし、それを意識して、自分なりに「こうだ!」っていうのを出したんだけど……最初は、みんなに「それじゃあKenくんに勝てねえな」って言われて。
NAMBA 僕の勝負より、ここの勝負が始まっちゃって(笑)。
ko-hey 本人がギターを弾き始めたきっかけがKenさんですからね。「それなのになんだ、その中途半端なギターソロは!」って(笑)。スタジオでの追い込みが半端なかった。
K5 そっからギア上げて、レコーディングまでずーっとやってましたね。
ハイスタは君臨してるかもしれないけど、俺もまだ君臨したいんだ、生きたいんだって(NAMBA)
——せっかくなので、一曲ずつ伺いたいんですけど、まずは“LIVE LIFE”。このタイミングで命のことを歌おうと思ったのは、なぜなんでしょうか。
NAMBA 最近、僕の身の回りで亡くなった人がいたり、母が寝たきりになったりもして、感情移入してしまったんですよね。母は今何を思って寝たきりになっているんだろう?とか。だから、自分目線でそういう人になりきって書いてみたんです。それで、もし世の中に望みもねえから死んじまいたいって思っている人がいるなら、響けばいいなって。
——元々は、ko-heyさんが原形を持ってきたんですか?
ko-hey そうです。俺が家でワンコーラス作って、メンバーに聴いてもらって、スタジオで合わせた時に、サビの原形みたいなものができて。これは、絶対にいい曲になるわ!って。
NAMBA サビからいったね。《I don’t wanna die》は、メロができた時に出てきたの。
ko-hey でも、最初は《I don’t wanna die》はどうなの!?って思った。壮大だよ、テーマが!って。
NAMBA まあ「死にたくない」っていきなり言う人、いないもんね(笑)。
ko-hey だけど、こんだけどストレートなことを言ってる人はいない……特に日本においては、暗喩したがる人が多いんで、新しい! パンクっぽい!と思って。
NAMBA パンクロックもだけど、最近またダンスミュージックが好きで、結構シンプルなワードが入ってくるんだよね。そこで、シンプルでいいんだなって。あと、《die》もいろんな意味があると思ったの。KEN BANDは世の中に君臨してて、俺もそう在りたいけど、まだ及ばないところもあって。でも「消えたくない」、このシーンにいたい、みたいな。ハイスタは君臨してるかもしれないけど、俺もまだ君臨したいんだ、生きたいんだっていう。
SAMBU 深い!
NAMBA だから、このスプリットに入れたんです。
——すごいたくさんの意味が含まれてますね! あと、「生きる」っていうところとも繋がってきますけど、Kenさんのコラムで「ナウい」って評されていたように、NAMBA69は今の時代ならではのアレンジや音が特色ですよね。そういうところは意識されているんですか? 今回のスプリットでもコントラストが表れているような気がするんです。
NAMBA そうね。NAMBA69の目指してるところって、たとえばメロディックパンク、メロディックハードコアってカテゴリーがあったとしたら、その中でもヘビィな部分を打ち出すっていう。そこを追求して、世界的にも類を見ないバンドになりたいのね。ko-heyが参加したことで、そこが色濃くなったの。でも、Kenくんはあえて自分らを貫くことで、こうやってロックするっていうところを打ち出してるわけじゃない? 逆に、そこは実は新しいのよ。海外のバンドを聴いてても、ブレイクダウンもそんなに入れないとか、90’sメロディックパンクを10代の子たちがローファイなサウンドでやるとかってあるから。だから、Kenくんのほうが先を行っているのかもしれないよ。だけど、俺らは、どっちにも行けるぞっていうところで、「ナウい」って言ってくれてるんだと思うんだよね。
——うん、今作を聴いていてもKen Yokoyamaのサウンドは新鮮ですもんね。
NAMBA Ken YokoyamaとNAMBA69の個性が突き抜けてバーサスしてることに、今回の意味があるんだよね。今、みんなカテゴライズしたがるけど、そんなことじゃないぞっていうメッセージにもなると思う。みんな、もっと自分の個性を出せよ!って。
——今回、改めてハイスタはバラバラな個性が結び付いていたんだなって思いました。
NAMBA ハイスタってこういう成り立ちだったんだなって、そういうのも見えるよね。