Twitterとかで偉そうなこといっぱい書いてたから、これでショボかったらもう俺なくなるわって(笑)(後藤)
――もともとベスト盤を出す前のタイミングでは、それまでのシングルをインクルードしたオリジナルアルバムを普通に出そうと思ってたんだよね?
後藤 そう。どうせ“Right Now”とかで違うベクトルに広がっちゃってたし、それなら今回は広げることに集中して、いろんな人とやろうと思って。世界的にも、アルバムのコンセプトがどうとかよりも、コーライティングとかやって、とにかく強い曲がいっぱい入ってるのが主流だし。
――で、始まったんだよね。
後藤 俺とヤマちゃんで書いていっても、そりゃアルバムっぽい曲はいっぱいできるけど、やっぱ天下のリヴァース・クオモとか、グラントとか、ホリエくんとかさ、言ったら各球団のエースピッチャーみたいな人たちだから、いい曲作るに決まってるし(笑)。そういうのやったらそりゃいいアルバムできるでしょっていう。
――なるほどね。
後藤 それに、その裏で、サウンドレコ的な悩みがずっとあったから、それもいろんな仕事しながらバキバキやって、ぎりぎり最後のミックスに間に合わせて。
――すごい作り手本位のアルバムだね。
後藤 そう。もうほんと奇跡のスケジュール、間に合った!みたいな。手応えをやっと感じて、ほっとしてる。すごいプレッシャーだった。日本のロックの音を進歩させたい、更新したいっていう意識でやってたとこもあったから。Twitterとかでも偉そうなこといっぱい書いてるし、これでショボかったらもう俺なくなるわみたいな(笑)。余計なことを言いながら自分の退路を断って鼓舞してたんだよね。
――でも、そのすべてが、自分のやりたいことっていうか、やるべきことと結びついてるんだよね。
後藤 そうそう。ヤマちゃんはわりと早めに「いいんじゃね?」みたいな空気になった感じでしたけど。潔は、自分のパートにすごく関わる音像だったから、最後までちょっと目ぇ離せねえみたいな感じで。建ちゃんは最後に「ヤダ」とか言う可能性もあるし。
喜多 まかしてた、まかしてた(笑)。
――このアルバムを受け取る人についてはどう考えたの?
後藤 若い子たちが「超かっこいい! バンドやりたい!」って思ったら最高だと思ってるけど(笑)。それ以上のものはあんまりなくて。
――これまでって、むしろ「こう聴いてほしい」っていうことの塊みたいなバンドでもあったじゃん。
後藤 でも今回はやりきったから、もうどう聴かれてもしょうがない。
――っていうところなんだね。なるほど。だからアジカンヒストリーのなかでも、画期的なアルバムだね。ものすごいターニングポイントになった気がする。
後藤 うん。すごくいいものを作った確信があるから。前までは評価されたい気持ちがあったけど、今回はない。自分で自分のことを評価できるものを初めて作ったから。いわゆるロックンローラーっぽい考え方をあんまりしないで、「俺たちは最高だ!」とか一切言わずにここまで来たけど、このアルバムはほんとに最高だと思うんだよね。どんな自分の好きなバンドのアルバムの隣に並んでも、恥ずかしくないサウンドだと思う。これできっと日本のロックバンドのサウンドメイキングが変わってくると俺は思う。日本にはおもしろいバンドがいっぱいいるから。そういう子たちもどんどん音良くなってくれたらなって。こういうのはみんなで共有すればいいだけだと思ってるんで。
ロックバンドとして、四の五の言わずに、とにかくやりたいことをやるのが一番かっこいい(後藤)
――ここまでやられたらみんなわかると思う。
後藤 潔の音とか、今までで一番かっこいいと思う。潔がこだわってるところも、やっぱものすごいよく聞こえる。
――1曲目でいきなりキックがすごい強調されてるし。「今回は音違うぞ」って、わざと強調してるぐらい (笑)。
後藤 わかる曲を1曲目にしたんです。
――あれで一発でわかると思う。
後藤 最後に潔がノってきてくれたのが嬉しくてね。潔がアジカンのアルバム終わってから「好き」とか言ってるのあんま聞いたことないんだけど、今回はアルバム聴いてるみたいで、よかったと思って。これまでアジカンでは潔が一番サウンド志向だったし。そこに俺が追いついたって感じで。
――じゃあソングライティングに関して。俺はリヴァースの曲を聴いた時「ああ、やっぱりゴッチは、リヴァースからの影響って大きいんだな」と思って、わりと自然に聴けたんだけど。バンドのメンバーとしては、違う人の曲をやってるって感じなんだね。
伊地知 最初の段階では。
後藤 今はもう混ざっちゃったよね。
――むしろホリエくんの曲のほうが、「あ、ソングライターが違う」ってすごい感じる。
後藤 そう、2枚目のほうが、ソングライターが違う感が大きいんですよね、ヤマちゃんの曲も含めて。だから分けたんです。でもリヴァースの2曲は、もう完全にアジカンの曲になってるからわかんないよね。一番自分がプレッシャー感じたのはそこで。あの2曲と張り合わないといけなかったから。
――なるほど。でも、いい効果じゃん。
後藤 人に書いてもらうことよりも、人の曲と並べた時に、自分の曲の質が劣るほうが怖くて。でも、“ホームタウン”とかもあるから大丈夫かなって。
――全然! 水準という意味ではすごくハイレベルな統一感があると思う。だから分けたのはなるほどなって思った。ホリエくんの曲の作詞は誰なの?
後藤 歌詞は俺が書いたんですよ。
――やっぱりゴッチか。この曲はほんとコラボ曲だなって印象があった。自分の曲だったら、ああいう歌詞はあんまり書かないんじゃないかなって感じの。
後藤 だってもうホリエワード品質ですもん。僕が思う、ホリエくんが書きそうな歌詞で書いたの(笑)。
――そう、すげえコラボだ!と思った(笑)。
後藤 ストレイテナーの曲からの引用とかもいっぱいして。改めて作詞能力上がってんなとか思いながらね。
――さっき「やりたいことをやりきったから、誰にどう思われてもなんとも思わない」って言ってたけど、その姿勢って常にアジカンがやってる、新しい世代の人たちの背中を押すというか背中を見せる、未来へ導くポジティブなメッセージになってると俺は思うんだよ。歌詞にもリンクしてるメッセージを感じるし。その辺のビジョンはあったの?
後藤 うーん、どうだろうな。でもこういう時代にメジャーのバンドがやりたいことをバチッとやるっていうのは、すごくいいことだと思うんです。右往左往して、みっともないことをやるわけにはいかないし。ずっとやりたいことをやってきたけど、輪を掛けてやりたいことをやんなきゃいけないなっていうのはすごく思ってて。音楽業界はどこにいたって不透明な時代だからこそ、やりたいことをバシッと貫くような強いもんを作んないと、太刀打ちできないなって。それを音源でやろうという気持ちがすごい高まって。四の五の言わずにやりたいことをやるっていうのが、ロックバンドとして一番かっこいいなと。自分が打ち震えるような音楽を作りたいというのが一番にあるし、絶対にこの4人にしか出せない音があるから。自分がアジカンやってる理由なんてそれしかなくて。そういうところで妥協したくないっていうのはすごく思ってやってました。
――これはほんとに、アジカンのこれからの10年、20年を決定づける、そういう性格のアルバムだと思いますね。
後藤 今はもう搾り滓というか。全てを搾り出したんでね。「こういう曲作れませんか」とか今も仕事が来るんですけど、「今は一切ありません!」って言ってる(笑)