ポップだとかヒップホップだとか、安直なカテゴライズを一蹴してみせた前作シングル『I’m a Pop』は、まさしく今回『Never Grow Up』へと続く布石であった。純度100%のリアルで綴られる今作でのちゃんみなの歌とラップは、耳に飛び込んでくる言葉のリズムや輪郭が、これまで以上に強烈だ。普遍性の高いポップソングからバンドサウンドのロック曲まで、楽曲ごとのコントラストも濃い今作だが、どの曲にも「ちゃんみな」というアーティストの揺らぎようのない本質が貫かれている。「言いたいことを全部詰めた」というこの作品について、じっくりと話を聞いてきた。
インタビュー=杉浦美恵 撮影=山川哲矢
10代の頃の自分が「Never Grow Up」って言ってしまったら、別の幼稚なものになってしまうと思った
──まさにちゃんみなそのものだと思える強力なアルバムができあがりました。まず、今作を『Never Grow Up』と名付けたのは、どんな思いから?
「普通に訳せば『大人にならない』とか『成長しない』っていう意味ですけど、私の思いとしては、『汚れたくない』、『このきれいな心のまま、この先も音楽をしていきたい』という意味での『Never Grow Up』で、子供心を忘れたくないという意味でつけました」
──決して、大人になることを否定するものではないんですよね。
「年を重ねていくことに関しては全然ネガティブには捉えてないです。私も大人になるのは楽しみだと思っているので。でも心の中にはずっと、音楽をやってる時くらいは子供心を忘れたくない、好きだった音楽を忘れずにこれからもやっていきたいっていう思いがあります」
──音楽へのピュアな思いを忘れたくないという気持ちは、デビュー以前からずっと抱いている?
「そうです。でもデビューしてからより強く思うようになりました。『Never Grow Up』っていうタイトルを17歳とか18歳の時の曲につけてもよかったんですけど、あえて今このタイミングを選んだのは、当時は『もう少し経験を積みたい』って思ってたからなんですよね。10代の頃はまだ私がいろいろ経験しきれていなかったから、このままの自分で『Never Grow Up』って言ってしまったら、別の幼稚なものになってしまうんじゃないかと思って」
──そういう思いで2ndアルバムを作ろうと決めていった中で、タイトル曲はもっとメッセージ性の強いものになるのかと思ったんですが、そこが恋愛の歌、ひとつの恋の終わりの歌へとシフトしたのが興味深いです。
「このアルバムは本当の私の芯の部分と向き合って作った曲ばかりで、この感情を大事にしたいとか、この人を大事にしたいとか、この人に対するこの気持ちを大事にしたいと思って作った曲だけを収録したものなんですね。なので、アルバムタイトルはポジティブな『Never Grow Up』なんですけど、“Never Grow Up”っていう曲が表現しているのはけっこうネガティブな話で。男女が別れたくても別れられなくて、何度もくっついたり離れたりを繰り返して、『そろそろ私たち大人にならないと』っていう」
──なるほど。
「1stで出した“LADY”っていう曲では、『あなたはもう大人なんでしょう、私はもういいよ』っていうことを歌っていて、“Never Grow Up”はその時と同じ人に向けて書いた曲なんです。“LADY”の時は、私が『大人になるなんて最低』みたいな感じだったんですけど、今回は私が『大人にならないとだめだよ』って言っている──その変化みたいなものが私の中で生じたので、この感覚が面白いなと思って。10代の時にずっと一緒にいた人と別れた時の曲なので、大事にしたいなと思って作った曲で、“Never Grow Up”という言葉が一番似合う曲なんじゃないかなって」
嘘の話を書くのが苦手で。嘘っぽいことを書くのは、聴いてくれてる人に申し訳ないって思います
──長く続いた恋愛を、自分で終わらせるっていうことをそのまま歌にしていて。ちゃんみなさんの曲は、すべて自分の経験や感情からしか生まれないであろうリアルで本質的な言葉だけが歌詞になっていると思いますが、これもまさに「今」のちゃんみなさんの感情が色濃く表現されています。これをタイトル曲にしようと思ったのは、『Never Grow Up』という言葉からの連想で?
「そうですね。私が経験してきた中では『Never Grow Up』という言葉からネガティブな部分で一番想像できるのが、その恋愛だったんです」
──タイトル曲のみならず、今作で恋や愛を歌う楽曲は、どれもとてもパーソナルなものですよね。だからこそすごく胸を打つ作品だし、これまで以上に感情を揺さぶる作品になりました。
「大事な人に向けて、大事な感情について書きたいっていうふうになってくると、どうしても愛というものから離れられないし、すべての曲に愛があるんです。それは憎しみの愛だったり、歪んだ愛だったりもするけど、友達との愛もあるし、すべてのものにラブが関わってる作品になっています」
──これほどまでにちゃんみなさん自身が表現されている作品ができて、改めて思うんですけど、ちゃんみなさんはフィクションで歌詞を書こうと思ったことはないんですか?
「ありますよ。たとえばメロを考えている時とか、プロデューサーと話していて、『仮で歌詞入れてみてよ』ってなって、だけどその『仮』ができないんですよ。言葉はちゃんと考えたいから。そういうことができるなら、仮で入れて『ああ、これいいじゃん。このままいっちゃおうよ』っていうのもアリだと思うんですけどね。でもできないんですよね。やっぱり嘘の話を書くのが苦手で。作り話みたいなのは苦手です」
──でも逆に、自分の気持ちがストレートに出ている分、世間に丸腰でぶち当たっていくような怖さみたいなものってないですか? さらけ出すことをためらう気持ちというか。
「それは一切感じないです。逆に嘘っぽいことを書いているほうが、聴いてくれてる人に申し訳ないって思います。なんだろな。私自身があまり好きじゃないんですよ。そういう嘘っていうか……中身のないもの。中身がなさそうに見えて、中身のあるものが好き。曲調は軽い感じでもテーマは重いとか。だから軽い気持ちで中身のない曲を出すのは、私は気持ち悪いなって思ってしまうんです」