韓国系アメリカ人アーティストのCharmによるソロプロジェクト、THE CHARM PARK。作詞・作曲・アレンジ・演奏をほぼひとりでこなし、2018年にメジャーデビューを果たして以来、さらに音楽ファンの熱い視線を浴び続けてきたが、11月20日にリリースされた最新アルバム『Reverse & Rebirth』は、2014年に自主制作したアルバムのリビルドだ。そこには、豊かな構築美の向こうで孤独な叫びを上げる人間・Charmがいた。『ROCKIN’ON JAPAN』1月号インタビューに掲載しきれなかった多くの発言を盛り込み、特別版としてお届けする。
インタビュー=小池宏和
バンド解散後は日本に居られないかもしれないということもあるし、また音楽で生活していくことができるか不安な時期でもありました
――2014年当時のCharmさんの熱い心持ちが立ち上ってくる作品だと思いました。八面六臂の活躍で、当時からすごいクオリティなんですけれども。
「ありがとうございます。今回、マスタリングだけは外部で行ったんですけど、0から100まで全部自分でやっていますね」
――以前に活動していたバンドが解散して、その直後に制作した作品ということですか。
「はい。僕はアメリカ人で、バンド活動をするために日本に来ていたわけなんですが、バンド解散後は日本に居られないかもしれないということもあるし、一回失敗を経験したことで、また音楽で生活していくことができるか不安な時期でもありました。とにかく、100パーセントの自分を出し切った作品を作ってみて、それがどこにも届かなかったら仕方がない、という気持ちでしたね。責める人は自分しかいない、という状態で」
――その孤独な葛藤が歌詞の中にも織り込まれていて、たとえば初めてTHE CHARM PARKの音楽に触れる人にも、Charmさんの顔が見えてくる作品だと思います。でも、当時はそれどころではなかった?
「そうですね(笑)。5年後にこうしてこの作品をリビルドするなんて思いませんでした。当時は自分のことを大人だと感じていて、全部自分で責任を負わなきゃいけないという気持ちだったんです。その気持ちが染み込んでいる作品だと思いますね」
ビザの問題とか、日本ではしっかりした目的がないと住みづらいところがあるので。それでも、今の僕にとっては一番のホームです。
――残念ながら、当時の自主制作バージョンを聴けていないのですが、歌詞は当時のままですか。
「歌詞も声も、実はテイクもそのままです。少しだけ、音の調整をしたんですけど、基本的には変わっていません。大幅に変わっているのは、新曲だけですね」
――2018年にメジャーデビューして、このタイミングで『Reverse & Rebirth』をリビルドしようと思ったのは、なぜでしょう。
「うーん、5年というスパンは、短いようで長いようで、少しセンチメンタルになったんですかね。当時の自分を振り返ってみた時に、いつかはまた世に出したいなとは思っていて。それが今回、なぜなのかはうまく説明できないんですけど、ちょうどいいタイミングだと思いました。録り直しとかも検討して、トライしてみたんですけど、当時の熱量には敵わないんですよね」
――1テイク目がベスト、みたいな。ひとりきりで音楽活動を続けようとしていた時の気持ち、もう少し思い返してみると、どういうものでしたか。
「制作していた時は本当に、自分VS世界という感じになっていましたね。でもそれは、いいモチベーションだったりもしていて。5年経ってみると、苦労したというよりは美しい思い出になっているんですけど。生活面でもビザの問題とか、日本ではしっかりした目的がないと住みづらいところがあるので。それでも、今の僕にとっては住みやすいところだし、一番のホームだと思っているので、それをどう守るかということを、悩んでいましたね」
――そういう、当時のしんどさと情熱との葛藤が渦巻いているアルバムなんですよね。
「むしろ、今だと書けない作品なんじゃないかと思うんですよね。自分でプレスして、前のバンドを応援してくれていた人たちに手渡すことができたんですけど、それも多くの数ではなかったので」
――うん。だから、リビルドする意味っていうのはそういうところだと思うんですよ。今では、THE CHARM PARKの作品が全国に流通するようになっていますけど、その間にCharmさんが何を思い、生きていたかという時間を埋めてくれるんですよね。
「その当時の日記をあらためて公開した感じに近いんですかね。ちょっと恥ずかしいですけど(笑)」
――その時のしんどさや情熱って、何度振り返っても価値があるし、それをリスナーに共有させてくれる作品だと思います。
「初心というところでは、そうかもしれないですね。必死さの中で、インスピレーションも多かった気がするし。今とは違う情熱の形があります。自分でここまでできるんだ、という作品になったことで、精神的にも落ち着いたような気がしますね。ミキシングとかマスタリングも名前しか知らなくて、いろいろ研究しながら」
――全て独学でやったんですか。
「はい、デモ作りはやっていたので、それをどんなふうに世に出せるところまで完成度を上げるかということを、2014年に独学でやっていました。まあ、時間があったんですよね(笑)」