「未確認フェスティバル2017」のファイナリストとして注目を集めた、1999~2000年生まれの男女による5人組バンド・FAITHがメジャーデビュー。1stアルバム『Capture it』は、ルーツであるポップパンクやUSインディーロックだけでなく、より大きなスケールを持つ楽曲が多く、豊かなポップネスで溢れた作品に仕上がった。今作を制作するなかで様々な気付きがあったという5人。「メジャーデビュー」と「20歳」という大きな節目を迎える彼らが今伝えたいこと、今作りたいものとは?
インタビュー=沖さやこ
大きいステージが似合うようになりたい。日本のライブハウスバンドのテンプレートで収めたくない(Akari)
――FAITHは海外のポップパンクやロックなどの影響を感じさせつつ、ポップスであることを重んじている印象を受けたのですが、みなさんの考える「FAITHはかくあるべき」とは?
ヤジマレイ(G・Vo) テイラー・スウィフトみたいなでっかいポップスができたらいいなと思ってて。ライブもショーみたいな見せ方に移行しているところで、スケールが大きいバンドを目指していきたいんです。
Akari Dritschler(Vo) 今作『Capture it』を作るにあたって、「大きいステージが似合うようになりたいからFAITHを日本のライブハウスバンドのテンプレートで収めたくない」「バンドというよりはアーティストでありたい」という話をしたんです。そしたらメンバーみんなもそういう意識を持っていることがわかって。そしたら自然と音楽性も広いものになっていきました。みんないろんな音楽を聴くようになったし、日頃の生活でもつねにアンテナを張ってます。
レイ キャスナー(G・Vo) とは言っても「ポップスをやってるロックバンド」という感覚ではあるよね?
Akari どの曲もみんなの趣味が盛り込まれてるもんね。FAITHの全部が全部ポップなわけではないし、いろんなジャンルを含んでいると思うので、ポップを入り口に私たちのいろんな面を見てもらえたらと思ってます。『Capture it』も2018年の12月くらいから作り始めて、めちゃくちゃ頑張って1曲1曲を詰めていきました。
――となると、これまで以上にブラッシュアップができたのでは?
キャスナー 今までの曲作りはスタジオの合間にジャムってたら「いい感じじゃん!」っていうものができた、みたいなラフな感じだったんです。でも今回は「1週間で○曲作りましょう」みたいな状況でもあったから。
ヤジマ でも自分たちのやりたいことに集中できる環境だからこそ、いろいろ考えながら制作できたのかなと思います。さっきAkariが言ったように引き出しの数も増やしてるので、自分たちがやりたいことを表現できるようになったことも大きいです。
――たしかに。“Party All Night”はテイラー・スウィフトの影響を感じさせるけれど、だからといってFAITHのすべての曲がテイラーみたいなわけではないし、既に存在している誰かになりたいというスタンスではないのだろうなと思います。
キャスナー そうかもしれない。好きなバンドが多すぎて、特定の誰かになりたいと思ったことがないし……あと「FAITHの音楽性を説明して?」と言われたときにどう言っていいのかわからない(笑)。でもポップスってそういうものだとも思うんです。
パンチとか勢いとかで魅せるんじゃなくて、楽曲トータルのバランスで見ていいものが作れた(ルカ)
――ソングライティング面においては、メンバー全員が20歳になることを受けて、「10代の私たちが感じてきた未来への希望や葛藤を切り取った」とのことですが。
Akari 今回の新曲は19歳の間に書いた歌詞で、今しか感じられない気持ちだと思っていて。10代の感覚や感情を残したかったんですよね。たぶんこの先、同じことを思ったとしても、同じ言葉では出てこないと思うんです。特に同世代の子や、悩んでる人に「こういうことあるよね」「わかるよー」と感じてもらえたらなって。私は不安になったり落ち込んだりした時にはいつも解決策を探していくので、歌詞を書くのもそれと同じで。悩みが解決されるというか、気持ちがラクになるんです。
――ネガティブ寄りの感情も素直に吐露してるのに、重くなりすぎないのは、Akariさんが解決策を見出すために歌詞を書いているからかもしれませんね。
Akari あとは曲先だからですね。作曲チームは絶対に真っ暗な曲を作ってこないので(笑)、私の歌詞が乗っても暗くなりすぎずに済むというか。安心して落ち込めます(笑)。たくさんあるデモのストックのなかから、私が歌詞を連想できるものを選んだり、メモしておいた言葉と合うオケを選んだりして、そこから歌詞やメロディを作っていくんです。
キャスナー 昔は自分たちがかっこいいと思ったものを作って、それに対してAkariに歌詞を書いてもらうスタイルを取ってたんですけど、Akariがあんまり気に入ってない曲の場合、歌が固まらなくてボツになるんです。だから作曲チームはとにかくいっぱい種を作っておいて、そこからAkariが気に入るもの、歌詞を書きやすいものを採用してるんです。
――わあ、なんて優しいメンバーさんなんでしょう……!
ヤジマ (笑)。作曲チームのエゴを通すよりも、そのほうがいい曲ができることをこれまでの活動で学びましたね。1コーラスくらいのデモをめっちゃストックしてます。
Akari 気に入ってないオケに無理矢理歌詞書いたらめっちゃ雑になって、その曲ごと嫌いになっちゃうことも結構あって(苦笑)。
キャスナー 歌がいい状態で乗ってくれれば、そのあとのアレンジのブラッシュアップももっといろいろ思いつくしね。
荒井藤子(B) 聴く音楽が増えてきたことで、好きなことをやればいい、手数多けりゃいいってわけじゃないことを学んで。アレンジもやりたいことをやっているというのは大前提だけど、ボーカルをよく聴こえさせるために、ドラムもベースもギターもいるんだな……って気付けましたね。
ルカ メランソン(Dr) 『Capture it』はパンチとか勢いとかで魅せるんじゃなくて、楽曲トータルのバランスで見ていいものが作れたと思います。
――そのジャッジの末に残ったのが『Capture it』の9曲であると。
ヤジマ そうです。まさに選抜メンバーですね。ベンチにはたくさんのオケが控えてるので、この先もどんどん育成していきたいと思ってます(笑)。