今年3月発売の『BELIEVING IN MYSELF / INTERPLAY』以来約8ヶ月ぶりとなるHYDEのニューシングル『LET IT OUT』。メタルの中でも超低音のリフを駆使するジェント直系のアレンジを、ロックのストリート感と壮大なスケール感を兼ね備えたサウンドスケープへと昇華した表題曲“LET IT OUT”は、世界のシーンを見据え闘い続けるHYDEの音楽世界にさらなる輝度と強度をもたらす決定打的な名曲だ。Kuboty(元TOTALFAT)らをソングライター陣に迎えて制作した“LET IT OUT”について、コロナ禍に屈することなく展開する「その先」へのビジョンについて、さらに年末から開催予定のアコースティックツアー「HYDE LIVE 2020-2021 ANTI WIRE」について――HYDEはすべて真っ向から語ってくれた。
インタビュー=高橋智樹
次のアルバムに向けて、メタル感をもっと出していきたいんですよね。そうするとやっぱり、かっこいいリフがないと難しいなって
――HYDEさんの楽曲のアレンジって、メタルコア的なアプローチの曲が多いと思うんですけども。今回の“LET IT OUT”はもうガチのメタルというか、ジェントっぽいギターサウンド――6弦ギターでは出せない、それこそ7弦・8弦当たり前の重低音越しに美学とカオスを描いていくような、新しい扉を開いた楽曲ですね。「ありがとうございます」
――今回、元TOTALFATのKubotyと一緒に制作しようと思ったのは?
「もともと、楽曲制作するために何人かの人に声を掛けていて、そのうちのひとりだったんですね。僕は面識なかったんだけど、ソニーの人がつないでくれて。何曲か送ってきてくれた内の一曲がこれですね。基本的には、メールで送ってくれたものを、僕がアレンジして交換する、っていう感じでしたね。すごく真摯に対応してくれて――おっしゃる通り、たぶん1音低く落としたかな? 『結構ヘヴィになったな』っていう印象があったんですけど、自分の中でこのサビのメロディが気に入っちゃって。『これ以上高いと、みんな歌えへんし』と思って(笑)、それで1音落としたりしましたね」
――MY FIRST STORYのShoさんであったり、PABLOさんであったり、ギタリスト兼ソングライターの方が、HYDEさんの音楽世界にどうアプローチして、どう広げてくれるか?っていうのを、HYDEさん自身も楽しみにしているようなところはあるんじゃないですか?
「やっぱり、僕はギターはコードをジャンジャンってしか弾けないので。リフとかになってくると、ずっとやっている人のほうがかっこいいものを作れるなあと思っていて。自分的にも、次のアルバムに向けて、メタル感をもっと出していきたいんですよね。そうするとやっぱり、かっこいいリフがないと難しいなと思って。で、今回いただいた曲とかも、すごいリフがかっこ良くて。最初はもうちょっとゴシックなメロディが入っていたんだけど、そういうのは全部取っ払って。構成もガラッと変えて、もう歌から始まるようにして――どんどんストリート感を出していって。自分の理想形に近づけていきましたね」
あまり日本のことを考えてなくて。「アメリカのフェスとかでどうウケるか」がいちばん念頭にある
――その「ストリート感」っていうのは、HYDEさんの世界を語るうえでのひとつ重要なワードですよね。よりメタル本来の質感は求めてるけど、「ゴシックなメタルの王宮を建てる!」という感じではなくて、それをストリートの音楽として着地させるっていう。なかなかないバランス感ですよね。「うちのバンドってみんなマスクをしているので、これでメロディアスすぎると、なんか合わないんですよね(笑)。なるべく合わせたいっていう、雰囲気と楽曲をね。今回は特に、次のアルバムの一曲目にするような代表曲を――『これぞHYDEのニューアルバム!』みたいな方向性を、まず作りたかったんですよね。特にこの曲は、自分のやりたいことに忠実だった気がしますね」
――ちなみに、“LET IT OUT”の制作はいつ頃?
「曲の原型自体は2月ぐらいからでき始めていて、いざレコーディングって形になったのが、6月とか7月ですね。僕が結構『歌が気になるから』って、何回も録り直して。ミックスも、アメリカとのやりとりなんで、何回も何回もやりましたね、気に入るまで(笑)。時間があるから、コロナの影響で」
――HYDEさんの中でもひとつエポックメイキングな楽曲になっていくと思うし、世の中的にも「おおっ、HYDEサウンドにはこういう面もあるのか」っていう再発見につながっていくと思いますね。
「まあ、そうですかね。でも、あまり日本のことを考えてなくて。『アメリカのフェスとかでどうウケるか?』っていうのがいちばん念頭にあるので。もちろん、ファンの人は好きでいてくれると思うんですけど、日本のシーンに対しては『サビがメロディアスなら、多少は受け入れてもらえるんじゃないかな?』とか(笑)。そういうレベルでしか考えられてないですね。やっぱり、『L'Arc~en~CielのHYDE』っていう固定観念があるから。そういうのなしで一回聴いてみてもらいたいですね。特に、ハードロック好きな人とかには」
――HYDEさんは常々「海外で、特にアメリカでどう渡り合っていくか」ということを念頭に置いてらっしゃいますし、そのために自分の表現をブラッシュアップしていくことで、日本のリスナーに「もっと大きな音楽の地平があるんだよ」っていうことを見せてくれているわけで。その姿勢を、これ以上ないくらいの形で出してくれたのが“LET IT OUT”だなあと。
「嬉しいですね」