AKB48の最年長メンバー・柏木由紀が7年5ヶ月ぶりにCDとしてリリースするソロシングル『CAN YOU WALK WITH ME??』は、WACK代表取締役・渡辺淳之介のプロデュース。WACKといえばパンキッシュな音楽性や型破りなパフォーマンスでファンを魅了しているBiSH、BiSなどの所属事務所であり、意外に感じる人が少なからずいるのだと思う。しかし、楽曲を聴けば「素晴らしい出会い!」と実感することになるはずだ。エネルギッシュなサウンドと共に響き渡る歌声は、柏木の胸の内で燃え盛る信念を美しく浮き彫りにしている。選んだ道を突き進み続けることを誓った女性の姿が表現されている様は、幅広い層の心を打つことになるだろう。今作について語ってくれた彼女の言葉も、凛々しさで満ち溢れていた。
インタビュー=田中大
私はアイドルが一生できる職業になったらいいなあって思っているんです。
年齢やその場の何かに応じて変わっていく自分のスタイルを見つけるのが大事
――渡辺さんとラジオで対談をしたのが、プロデュースをしていただくきっかけだったそうですね。「はい。その時が初対面だったんですけど、ラジオの生放送中に秋元(康)さんから連絡が来たんです。番組の後半だったので、もしかしたら私たちが話しているのを聴いて、『何かが生まれるんじゃないか?』って、直観的に思ったのかもしれないですね」
――驚きつつも、「これは面白そうだな」と思った人は他にもたくさんいたんじゃないでしょうか。プロのアイドルを貫き続けている柏木さんと、新しいアイドル像を生み続けている渡辺さんは、「強い信念を持っている」という点で通ずるものがあると思うので。
「嬉しいです。やりたいことがブレなかったり、ちゃんと冷静な目を持っているということですよね。『やりたいこと』『求められていること』『世の中の状況』みたいなものを客観視しつつも、『譲れないところは譲りたくない』という部分とか、すごく渡辺さんと話が合うんですよ。求められるものだけに合わせていると、自分がなくなってしまうというのを、私はAKB48のメンバーとして活動を始めて何年か経ってから気づいたんです。そこからは、『自分のやりたいことの中でファンのみなさんが喜んでくださることを探していく』ということを意識するようになって、より楽しく活動できるようになりました」
――それに、「アイドルを一生続ける!」という強い気持ちを抱いていらっしゃいますよね?
「はい。ここ最近、その気持ちが強くなったというか。『アイドルに正解はない』って思うようになって、『ファンのみなさんに喜んでいただく』『歌を続ける』『ステージに立ち続ける』『かわいい衣装を着る』とか、どんな形でも『アイドルである』と自分が思えば、それはアイドルなのかなと」
――つまり、「自分にしか作れないアイドル像を、一生をかけて追求したい」ということですか?
「そうですね。『続けたい』という気持ちも強くなりましたから。維持するものがありつつも、ちょっとずつ何かをアップデートして、成長もできたらいいなあっていうのは感じています」
――結婚をしても活動を続ける女性アイドルがここ1、2年で増えましたよね。
「急に何かが変わりましたよね。私が『30歳までAKBにいます』と言ったのが1年と少し前で、批判的な声を覚悟していたんですけど、意外と『アイドルの年齢制限、賞味期限みたいなのを変えてください』という、私の気持ちを後押ししてくださる声が増えているのを感じました。私はアイドルが一生できる職業になったらいいなあって思っているんです。だからアップデートが大事。10代の頃のアイドル像のまま続けるのは難しいので、年齢やその場の何かに応じて変わっていく自分のスタイルを見つけるのが大事なのかなと思います」
「1回だまされたと思って聴いてください」と思っています(笑)。
「あれ? 意外と……」ってなるのかもしれないです
――“CAN YOU WALK WITH ME??”は、アイドルとして生き続けることを誓っている曲ですよね?「はい。渡辺さんと知り合ってからそんなに経っていないんですけど、『こんなに自分の気持ちを全部わかってくださるんだ?』という驚きがすごくありました」
――《オワラナイ道を/行くのです》が印象的です。
「目標とかゴールに向かうみたいな感覚は、最近あまりないんです。それよりも『続ける』というのがあって、《オワラナイ道》と表現してくださったんだと思います。しっくりくるものがあって、とても嬉しかったです」
――曲のサウンドは、柏木さんにとって新しいタイプなのでは?
「そうですね、AKBでもソロでも歌ったことがなかったタイプの曲です。WACKのグループのファンのみなさんも結構聴いてくださっているみたいで、それもすごく嬉しいです。『柏木由紀』っていう名前を聞くと『AKB48』とか『長くアイドルをやっている』というイメージみたいなものが浮かぶと思うんですけど、今回初めて渡辺さんにプロデュースしていただいたので、『1回だまされたと思って聴いてください』と思っています(笑)。先入観みたいなのは一旦置いて、フラットな気持ちで聴いていただけると、『あれ? 意外と……』ってなるのかもしれないです」
――アイドルは音楽的な面でも先入観を持たれがちですし、批判を浴びたりすることも多いように感じるんですが、当事者としていかがですか?
「いろんなことを言われますよ(笑)。でも、全然気にならないです」
――公式YouTubeチャンネルで、ひどいコメントを見る企画をやっているのを観ました。
「あれ観たんですか?(笑)。私、コメントを見て喧嘩しつつも、めっちゃくちゃ面白いと思っちゃうんですよ(笑)」
――(笑)。大変なことがたくさんありつつも貫き続けたい「アイドル」の魅力って、柏木さんにとってどのようなものなんでしょう?
「私は子供の頃からアイドルが大好きだったんですけど、いつ見ても元気で明るくて、いろんなことを楽しんでいるところが輝いて見えたんです」
――モーニング娘。とかハロプロのアイドルが大好きだったんですよね?
「はい。嫌なことがあって落ち込んでいても、絶対に元気をもらえる存在だったんです。そういう安心感がずっとあるのが私にとってのアイドルなので、そこは今でも自分の活動に活きていることですね。元気になってもらうためには、自分がいちばん元気じゃないといけないんです。だからアイドルって、なるのはそんなに難しくないけど、続けるのはものすごく難しいっていうことを、やりながらずっと感じています」
「かっこいい」「強い」「芯がある」みたいなものはアイドルにも必要。
アイドルだって自分の考えがものすごくあるし、伝えたいこともあるんです
――サウンドプロデューサーの松隈ケンタさんとは、お会いになりました?「はい。レコーディングの時にお会いしました」
――《聞いて欲しいです》を「聞いて欲しうぃでんす」と歌っているのとか、松隈さんのディレクションですよね?
「そうなんです!『そこ、“うぃでんす”で歌ってください』とか、細かく指導していただきました。『こんな歌い方ってあるんだ?』って、目から鱗なことがたくさんあるレコーディングでしたね。その後にディナーショーをやったんですけど、『いつもと違った、何か変えた?』ってファンに言われるくらいの変化がありました」
――松隈さんに教えていただいたことで、特に印象的だったことは?
「口をとがらせて歌ったり、『あごをめちゃくちゃ出して歌ってみて』とか(笑)。今回のカップリングにめちゃくちゃロックな曲があるんですけど、それに活かされています」
――初回限定生産盤収録の“Why donʼt you??”ですか?
「そうです。こういう歌い方は、もともとの私にはなかったので、勉強になりましたね」
――“You and I”は透明感があって、ファンのみなさんの中にある柏木さんのイメージにいちばん近いでしょうね。
「そうだと思います。歌いやすいように私のイメージに寄せたと渡辺さんもおっしゃっていました(笑)。“CAN YOU WALK WITH ME??”の延長線上にある気持ちが込められている曲なので、これもぜひ聴いていただきたいですね」
――“You and I”は、ファンを大切にしている気持ちが伝わってくる曲です。
「私、ファンのみなさんがいなかったらすぐにやめますから(笑)」
――(笑)。「ゆきりん!」って応援してくださる女性ファンも多いですよね?
「ほんと、やっと増えてきましたね。最近『実は……』って女性のみなさんによく言われるんですよ。言いにくい存在だったんですかね?(笑)。影ながら応援してくださっている女性が、実は昔からいらっしゃったのかもしれないです」
――モーニング娘。もそうですけど、圧倒的な人気を確立する女性アイドルは、同性のファンも多いじゃないですか。
「そうなんですよね。やっぱり『かっこいい』『強い』『芯がある』みたいなものはアイドルにも必要ですし、いろんなことを乗り越えているからこそ応援したくなるというのがあるんだと思います。アイドルだって自分の考えがものすごくあるし、伝えたいこともあるんですよね。そういうこともまっすぐに、みなさんに伝わったらいいなあって思っています」
――アイドルを続ける意義は、そこにもあるんじゃないでしょうか?
「私は歌が好きなので、できるだけ引き出しを増やしていきたいということも思っています。今までやってきたことも大事にしながら新しいことをしていかないと、『続ける』っていうことには繋がらないと感じているので。いろんな音楽を知りたいっていう気持ちも、すごくあります。『アイドル』っていうのは絶対に捨てられない、捨てたくないものなんですけど、『アーティスト』と『アイドル』のちょうどあいだくらいを切り拓けたらいいなあっていうのは、すごく思いますね」
「人に元気を」っていうのは自分が元気じゃないとできないんです。私、まだエネルギーがめちゃくちゃ有り余っているんですよ。
30歳になるっていうのをきっかけに、そういうエネルギーをバンバン出していきたい
――“CAN YOU WALK WITH ME??”のMVは、雨に打たれたり風に吹かれたり、かなり過酷なものになっていましたね。「渡辺さんにプロデュースをお願いすることになって、『できるだけNOは言わない』って決めていたんです。だからMVの案をいただいた時も『やります!』とすぐにお答えしました。久しぶりにソロで曲を出せる嬉しさもありましたし、私のために動いてくださっているたくさんの方がいらっしゃいますからね」
――「渡辺さんのプロデュースの曲をまた聴きたい」というリスナーの声は、作品のリリース後に増えていくと思います。
「私もやっていただきたいです。渡辺さんも『今回はちょっと様子を見た』とおっしゃっていたので(笑)。もっと遠慮なくやっていただける機会があったらいいですね。一度こうして作品を作ったので、さらに引き出していただきたい気持ちがあります」
――様々な挑戦への意欲が高まりつつあるんですか?
「私は7月で30歳になるんですけど、そこでめちゃくちゃ吹っ切れると思うんです(笑)。それも私の背中を押してくれる気がしていて楽しみなんですよ」
――精神的にタフな面もある柏木さんですから、新しいアイドル像を作っていけると僕は思っています。
「私、タフなんですかね?」
――悪意のあるコメントを見ながらゲラゲラ笑える方ですからね、普通は病みますよ。
「やっぱり、やばいですか?(笑)。でも、面白いと思っちゃうんです(笑)」
――でも、アイドルでいられる条件って、精神的なタフさもあると思います。
「そうですね、ほんとにそう思います。強くないとメンタルも壊れちゃうし、やっぱり『人に元気を』っていうのは自分が元気じゃないとできないんです。私、まだエネルギーがめちゃくちゃ有り余っているんですよ。去年は出したいのに出す場所がなかったから。今回のシングルとか30歳になるっていうのをきっかけに、そういうエネルギーをバンバン出していきたいです」
“CAN YOU WALK WITH ME??”
『CAN YOU WALK WITH ME??』
●初回限定生産盤
CD+Blu-ray
KICM 92081/価格:10,000円(税込)
*特典:未完成パズルピースセット(63ピース)、プレミアムイベント応募シリアルナンバー
【CD】
01.CAN YOU WALK WITH ME??
02.You and I
03.Why don’t you??
04.CAN YOU WALK WITH ME??(off vocal ver.)
05.You and I(off vocal ver.)
06.Why don’t you??(off vocal ver.)
【Blu-ray】
“CAN YOU WALK WITH ME??” Music Video
「寝ても覚めてもゆきりんワールド 〜ディナーショーでも夢中にさせちゃうぞっ♡〜(special edit ver.)」
-Main Tracks-
01.ショートケーキ
02.クラス会の後で
03.てもでもの涙
04.PRIDE
05.あなたに逢いたくて~Missing You~
06.Birthday wedding
07.Green Flash
08.火山灰
09.遠距離ポスター
10.ジェラシーパンチ
11.Only today
12.ずっと 前から
13.あなたと私
14.夜風の仕業
-Bonus Tracks-
15.まちぶせ
16.Rainy day
-Special Tracks-
17.CAN YOU WALK WITH ME??
18.You and I
●通常盤(CD only)
KICM 2082/価格:1,300円(税込)
*特典:パズルピース 1ピース封入(全7種類)
【CD】
01.CAN YOU WALK WITH ME??
02.You and I
03.CAN YOU WALK WITH ME??(off vocal ver.)
04.You and I(off vocal ver.)
提供:キングレコード
企画・制作:ROCKIN'ON JAPAN編集部