のちのインタビューでも語られている通り、今作『旅鴉の鳴き声』は2020年代日本屈指のロックンロールバンド=WOMCADOLEの「原点」と「現在地」を克明に刻んだ作品である。と同時に、メンバーのみならずリスナーも含め、喜怒哀楽その他すべての感情を何ひとつ曲げることなく、その音楽の中で伸びやかに呼吸し躍動し得る「WOMCADOLEという磁場」の魅力を、今まで以上にダイレクトに伝える作品でもある。
今年1月リリースの前作『共鳴howRING』に続き、樋口侑希(Vo・G)の綴る小説を基に生まれた楽曲をコンパイルした「ノベル・コンセプトアルバム」2部作の2作目となる『旅鴉の鳴き声』。自問自答と変化と「その先」への希望の道筋を、ひときわ多彩な楽曲とともに時代に刻み付ける意欲作だ。樋口が体調不良により不在のため、マツムラユウスケ(G・Cho)、黒野滉大(B)、安田吉希(Dr・Cho)の3人に、『旅鴉の鳴き声』とバンドの現在地について話を聞いた。
インタビュー=高橋智樹
『共鳴howRING』は「新しいWOMCADOLE」を見せたアルバム。今回は「今までのWOMCADOLE」をブラッシュアップした感じ(黒野)
――前作『共鳴howRING』について『ROCKIN'ON JAPAN』誌で取材した時に、樋口さんの小説に基づいた「ノベル・コンセプトアルバム」が2部作であること、その時点で樋口さんはメンバーの誰にも小説を読ませていないことについては伺ったんですが。その小説は読ませてもらえたんですか?黒野滉大(B) 読ませてもらいました。『共鳴howRING』から今回の『旅鴉の鳴き声』まで、その小説を読んだら「ああ、つながってたんやな」って物語としてわかるというか。結構、歌詞とリンクするところも小説の中にあって。
安田吉希(Dr・Cho) そもそも、樋口が書いてる小説の劇中歌みたいな感じで作るって話は前作から聞いてたので。それに基づいて今回も作りました。
――2部作の完結編として完成した『旅鴉の鳴き声』、改めてどんな作品としてそれぞれ位置付けてらっしゃいますか?
安田 単純に、最新作やから最高傑作やし、紛れもなく今の自分たちがここにあるなあ、っていう感じですね。個人的には、前のWOMCADOLEに近い――と言うと語弊があるんですけど、いい意味で脱力できてるというか。それこそインディーズの、全国流通盤の1枚目(『ワタシノハナシ』/2015年)とか2枚目(『15cmの行方』/2017年)ぐらい素直に歌ってる感覚で。昔の素直さと今の素直さは違うんですけど、歌詞もアレンジも含めて、そういうテイストを感じるなあと思っていて。でも、意図して「昔っぽいものをやろう」とかじゃなく、そういうふうに自然になっていったというか。
マツムラユウスケ(G・Cho) 前作とつながってはいるんですけど、前作よりもあったかいものというか、全体的に懐かしい感じのするアルバムになったと思うし。さっき安田が言ってたみたいに、昔のWOMCADOLEみたいな感じ、ギタリストが代わってもそういう雰囲気の方向に行けるな、っていう。『共鳴howRING』も結構曲の幅が広かったんですけど、さらに違った方向にまた幅を広げられてよかったなって。
黒野 『共鳴howRING』はわりと「新しいWOMCADOLE」を見せてたアルバムやったんですけど。今回は結構、「今までのWOMCADOLE」をブラッシュアップした感じ――全部をひっくるめた今のWOMCADOLEの集大成がこれ、みたいな感じがしますね。
樋口は自分の外側とも向き合うし、昔から自分の内側とも向き合ってる人間やし。それが作品にも影響してる感じはありますね(安田)
――楽曲の作風が幅広い2作品の間でも、“応答セヨ”で始まって“またね”で終わる『共鳴howRING』とは違って、最初“mirror”での自問自答から“hey my friend”でパッと雰囲気が開けて終わるという展開は、かなり景色が変わって見えますよね。安田 そもそも“hey my friend”のデモが初めて樋口から送られてきた段階から、「この曲は次のコンセプトアルバムの最後の曲にするから」って言われていて。明確な終わらせ方をしたかったんやな、っていうのは伝わりましたね。「これ樋口ひとりで考えられるのすげえなあ……や、やるやん!」みたいな感じでした(笑)。
――前のインタビューでも、『共鳴howRING』には入ってないけど“mirror”という楽曲を制作している、って話までは伺っていて。鏡に映った自分と対峙しながら、それでも前に進んでいくというのはこの作品のテーマでもあるし、WOMCADOLEのテーマでもある気がするんですよね。
安田 そうですね。「自分と向き合う」みたいな場面は、結構どのアルバムにもありますね。前から樋口も言ってたんですけど――今のこの時代にももちろん影響されてるし、そういう中で自分と向き合った時に曲ができているし、それが物語にも影響してるしっていう……(樋口は)自分の外側とも向き合うし、昔から自分の内側とも向き合ってる人間やし。それが作品にも、特に詞には影響してる感じはありますね。
――一方、マツムラさんはすっかりソングライターとしても存在感が出てきてますね。
マツムラ 今回も一応“夜間飛行”が――でも、これはもう、何曲も投げてる中の1曲みたいな感じなので。前と一緒で、わりと趣味バリバリの感じです。
安田 “夜間飛行”は結構、できたの前のほうやったもんな。“ペングイン”よりも前?
マツムラ “ペングイン”よりは全然前。
安田 『共鳴howRING』出し終わったあとすぐぐらいな感じやったな。
――じゃあ、曲ができたら「これどう?」って日々樋口さんに渡すサイクルはもうできている?
マツムラ そうですね。歌詞だけ任せて、メロディとか他の楽器とかも全部入れて。
安田 ムズいんですよ、彼の持ってくる曲は(笑)。手数も多いし、テンポも速いし。
マツムラ たまたまやけどな。2曲連続でテンポの速い曲が選ばれてるだけで。
安田 でも特訓になるし、単純にかっこいいし。「やりたいなあ」って思う曲なんで。前作でも“再生”っていうユウスケの曲があって。そこで「もう一個、新たな武器手に入れたなあ」じゃないですけど(笑)、ユウスケも曲いっぱい投げてくれるし、樋口も「この曲歌いたい」ってちゃんと昇華できたのが前作で。それをもっと今作で表現できてるっていうのは、バンドとしてもより懐が深くなった感じがしますね。