切なさと希望を描く、あれくんの「歌」の源泉に迫るインタビュー。「生きること」に向き合ったメジャー1stアルバム『呼吸』完成!

切なさと希望を描く、あれくんの「歌」の源泉に迫るインタビュー。「生きること」に向き合ったメジャー1stアルバム『呼吸』完成!

自分で作った曲ではあるんですけど、曲自体にも命があって、アレンジによってほんとにいろんな顔を見せてくれるんだなって

――ご自身としても、アルバムバージョンを再レコーディングしたことによって、新たな楽曲のよさや気づきもあったと思うんです。それこそ“七色のクレヨン”も。

「“七色のクレヨン”は、もともとアコースティックギターのアレンジで動画を出させてもらっているんですけど、そのバージョンより爽やかな曲になるとは思っていなかったんです。アコースティックってすごく爽やかな音色のイメージがあるじゃないですか。それをリアレンジして、ここまで鮮明な青のイメージというか、ビー玉っぽい、夏を感じさせるような爽やかな曲になるんだなっていうのは、自分自身でも新鮮な驚きでした。自分で作った曲ではあるんですけど、曲自体にも命があって、アレンジによってほんとにいろんな顔を見せてくれるんだなっていうのは、改めて感じましたね」

――“七色のクレヨン”は特に、楽曲がポジティブなものに変換されましたよね。

「そうですよね。アコースティックだともっと切ない感じの空気感が流れていると思うんですけど、(アルバムバージョンは)前向きに進めるようなテイストになっているなと僕も思っています」

――アルバムには“君を知って”という曲も新たにリアレンジされて入っていて、これがすごく短い曲なんですけど、これこそ歌声の切なさをダイレクトに感じる曲です。

「今回のアルバムは、1曲目から最後まで通してひとつのストーリーというか、展開があるんですけど、始まりの“Light up”から“ばーか。”まではEDMで、そこから“好きにさせた癖に”、“ずるいよ、、、”っていう王道の恋愛曲の流れになる。その間に挟む曲として“君を知って”があって。ここに“君を知って”を置いた理由っていうのは、雰囲気をガラッと変えるため。フックになる材料として入れたくて。“好きにさせた癖に”と“ずるいよ、、、”の魅力をいかに引き出して、後半も通しで聴いてもらうかというところで、ここに入れようと決めました」

――1曲目の“Light up”は恋愛曲ではなく、もっと広く「生きること」がテーマになっているようでもあり、今作はそうしたソングライティングの新曲も印象深いです。

「このアルバムを通して、1曲目の“Light up”から始まって、最後は“Bye by me”という、将来、挫折をしても必ずその先はあるから頑張っていこうという明るめの曲で終わるんですけど、その社会的なテーマで作った2曲の間に恋愛曲があるという構成なんです。恋愛って、社会的に生きている自分の真ん中に挟まれて起こるものだということが、このアルバムでは展開されている──という流れなんですけど。それをよりリアリティのある物語として、アルバムの構成に落とし込んでいます」

――まず社会的に生きる自分の思いがあって、そのあとに、というかそれと同時に恋愛もあって。そうか、まさにそれが人間としての『呼吸』ということでもあって。

「はい。生きるっていうことです」

――“Light up”はどういうタイミングで生まれてきたんですか?

「このコロナ禍っていうのもあって、そこで感じていることが無意識に出てきたのかなと思いながら作っていたんですけど。やっぱり挫折とか、失敗とか、1回転んだとしても、将来への期待を無くしたり、未来を諦めたらそこで終わりだから、少しの希望を持ってでも進んでいけたらいいんじゃないかっていう──背中を押す曲じゃないですけど、より社会的に、支えになってくれる楽曲になったらいいなと思いながら仕上げました」

――不確かな時代を生きていくための楽曲ですよね。今の生きづらい状況を歌っていながらも、ポジティブに前を向いて生きていくということが歌われている。あれくんの中では、そういう曲を作る時には、どこか希望が見える、光が見えるものにしたいと思っている?

「そうですね。この曲に関しては、ネガティブさを一切取り除いて、ポジティブな部分だけで描き切ったっていうのはありますね。“Bye by me”もそうなんですが、うつむいていても何も始まらないし、今の世の中、状況はずっとストップしたままだけど、もうどこまでも行こうよっていうのが、最後にこの曲に落とし込みたかったことなんです」

僕自身、たぶん曲に助けられてるんですよ。書くことによってマイナスをプラスにしている

――あれくん自身は、たとえばこの境地にたどり着く前には、コロナ禍で思うように活動ができなかったり、それこそライブもできないモヤモヤ感とか葛藤もあった?

「すごくありました。でもそれを自分の中に溜め込んでいても何も起こらないし、世界は何も変わらないので。それをプラスにするにはどうしたらいいのかと考えれば、やっぱり曲を作って、それを同じような思いをしている人たちの支えになるようなものにするということで。だからこの“Bye by me”が、タイミング的にも自分の中から降りてきたんだと思います」

――やっぱり作ろうと思って作っているんじゃなくて、自然にそういうテーマになって、それが純粋にポジティブなものとして出てくるということですね。あまりネガティブに考えないようにしているとか、そういうことでもなくて?

「はい。そういうことではないです。恋愛の曲を書く時っていうのは、基本的にはマイナスな気分の時が多いんですけど、恋愛で落ち込んでいるというわけではなくて。でも、曲ができるタイミングってやっぱり何かしら落ち込んだりしている時が多いかもしれないです」

――それでもあれくんの楽曲はめちゃめちゃダークっていうのでもなく、闇落ちするような楽曲でもないですよね。

「僕自身、たぶん曲に助けられてるんですよ。書くことによってマイナスをプラスにしている」

――無意識的に自分のネガティブさを救済したいと?

「かもしれないです。あとやっぱり、落ち込んだり病んでたりする時のほうが言葉が出てきやすい気はします。楽しくて上機嫌の時って、『ハッピー!』とかそういう単純な言葉しか出てこないじゃないですか(笑)。でも落ち込んだ時って、自分の中にある邪念を吐き出しやすい状態にあると思うので、だから長い言葉が出てきて。そういうのが曲に繋がってるんだと思います」

――ソロのSSWとしての活動と並行して、「夜韻-Yoin-」というバンドでも活動されていますよね。そこで表現するものとソロの楽曲との間には、ご自身としてはどういう線引きがあるんでしょうか。

「ソロではリアリティのあるものを中心に作っているんですけど、夜韻-Yoin-ではわりと抽象的に、言葉のチョイスも比喩っぽい表現を使って、ちょっと深く考えてみないと、どういう構成になっているのか、どういう意味合いなのかわからないようなものにしています。今回の『呼吸』だったら、ひとつの物語として全曲が繋がっているというテイストなんですけど、夜韻-Yoin-の作り方としては、もっと先にストーリーがある感じ。そのストーリーを追って曲を作っているという感じですね。まず先にコンセプトがあって、それをどう色づけしていくか。夜韻-Yoin-はそういう曲作りの仕方です」

――ソロとして、『呼吸』というひとつ重要なアルバムができあがって、今後のライブへのモチベーションもまた高まったと思うんですけど、ライブへの意識っていうのはどう変化してきましたか?

「そうですね。活動を始めた当初は、ライブ活動のことは正直全然考えてなかったんです。でも今はアルバムができて、伝えるものの幅が広くなってきているので、純粋にライブをしたいという気持ちと、僕の曲をもって、ライブの会場で歌いあげてみたいなという思いが強くなりました」

――最初は、ライブをやりたいっていう気持ちはまったくなかった?

「ずっとSNSで活動してきたので(笑)。表舞台に立つことにはあまりポジティブじゃなかったっていうのはありますね」

――今は大きいステージに立つということも、わりとリアルにイメージできる?

「はい。そこに立ってる自分を想像することができるようになりました」

――早くこの状況が落ち着いて、ツアーも実現するといいですね。

「ほんとに。何も考えずに楽しめるライブができたらいいですね」

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