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    ヤバイTシャツ屋さん、新作『ひまわりコンテスト』インタビュー。おそらく国内トップクラスの「コロナ禍も闘い続けたバンド」に訊く、2020年以降の活動と思想と現状

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    ヤバTの空白、今、埋まりました(もりもと)

    ──で、“ちらばれ!サマーピーポー”の編曲がシライシ紗トリなのは、夏曲だから?

    こやま そうです。憧れですよね、僕らにとって。ORANGE RANGE、もちろん好きやし、そのソニー時代を支えたシライシさんに、絶対にやってほしかったんですよ。普段僕ら、アレンジをほかの人に頼まないんですけど、今は「ここぞ」という時やなと思ったんで。

    ──「ここぞ」というのは?

    こやま 久々のシングルやし、ここらへんでちゃんとお茶の間対応をできるような曲を作りたいな、っていう。ロックサウンドでありながらも、僕らだけでやると、どうしても、トゲがある音になりすぎるというか。

    しばた バンドっぽすぎるというか。

    こやま そこはORANGE RANGEのサウンドを、テレビとかにもちゃんと届くようなサウンドに調整した方に……って、言い方、変かもしれんけど、力を貸していただきたいな、っていう。だから、ラジオとかで流れてきても、耳触りのいい感じにしたいです、っていうのは、最初に伝えましたね。もうほんま、ORANGE RANGEをリスペクトして作ったし。あと、時代の流れもあるかもしんないですね。

    ──というのは?

    こやま ライブで聴くより、音源で聴く時間のほうが多いご時世やし。自分自身がサブスクで音楽を聴く時も、うるさいやつってちょっとしんどいな、って思うし。やけど、バンドとしてのプライドは捨てたくないし、みたいなところで、柔軟に考えた結果がこれです。

    しばた そうやな。

    こやま あと、夏曲は作りたいな、ってずっと思ってたんですよ。夏歌特集とか観るたびに、「ヤバT、夏歌ないな」と思って。でも、なんか夏のイメージをみんな持ってくれてるな、がっつり夏の曲を作りたいな、と思った時に、同時に「あ、でもMVは冬に撮りたいな」って考えて。MVを冬に撮るためには、冬に間に合うように曲を作らなあかんな、ということで、1月2月に作ってましたね。

    もりもと この曲で、ヤバTの空白が埋まったような気が、僕はしてます。いろんなことをしてるとは思うんですけど、「夏・さわやかソング」みたいなところが、僕の中では空いてて。そこが今回埋まったと思う。

    こやま むっちゃいいこと言うやん。

    しばた これ、太字や。

    こやま 太字やん。

    もりもと 「ヤバTの空白、今、埋まりました」

    ──意地でも見出しにしたくないなあ。

    全員 はははは!

    ──じゃあ、春フェスに出る頃にはできあがっていた。ギリギリまで歌詞ができなくて苦しむ、いつものパターンとは違って──。

    しばた いやあ、これも……。

    もりもと これも、まあまあ……。

    こやま これに関しては、雪が溶ける前に撮らなあかんっていうので、締切があったから。

    しばた それでMVを撮りに行く日が、先に決まってたんで。

    こやま やけど、レコーディングは……大まかなデモはできてたんですけど、最後の最後、仕上げが。歌詞がピンとこなくて。

    ──あ、じゃあいつも通りだったんですね。

    しばた 途中までは全然違う歌詞で。そこからこやまさん、「ピンとこおへんからしばらく考える」ってなって。レコスタにいながら、こやまさんずっと悩んでて。

    こやま 仮歌を録ってみたりもしたけれども、「ちょっとちゃうなあ」、「なんか違う、なんか違う」って話してる中で、シライシさんが「ヤバTは『あつまれ系』なんだね」って言ったんですよ。それを聞いて「あ、『ちらばれ』や!」って思って。「こっちの方向性でいける!」って、バーッてサビを書き換えて。ほんまにレコーディングの日です。「もうレコーディングしますよ」の時間。

    しばた 多少あせらされながら。

    ホーンの音を聴いた時に、「うわ、シライシ紗トリや」ってめっちゃ思いました(しばた)

    ──ほかにも、シライシさんにお願いするとこうなるのか!という驚きとかはありました?

    しばた 間奏の、《愛 愛 愛 愛 愛 愛 夏 夏 夏 家》の箇所、そもそもはなかったんです。なかったんですけど、シライシさんが編曲をしてくれはった時に、変な声みたいなのが入ってて。「これおもしろい、じゃあここしばたに歌わせよう」ってなって、歌詞も付いて。

    こやま 変な音が鳴ってたんですよ、サンプリングの高い声みたいな。「これしばた、地声でいけんちゃうん? 機械音じゃなくて」って。

    しばた シライシさんいてはれへんかったら、こうはなってない。で、シライシさんが、ヤバTが「あつまれ系」っていうことを、言ってくれへんかったら、「ちらばれ」に辿り着いたかどうかも、危うかったよな。

    こやま 結構、雑談の時間、多かったかもしれないですね。「この歌詞、おもしろいね」って言ってくれはったりとか、それで「あ、おもしろいんや?」と思ったりとか。

    しばた ずっとこやまさん、シライシさんに訊いてたもんな。「これ、おもしろいですか?」、「どこがおもしろいですか?」、「どこがおもしろくないですか?」とか。

    もりもと シライシさん、ほかのアーティストの時も、会話をめちゃめちゃするって言ってましたね。その中で、おもしろいワードとかを歌詞に落とし込むって。

    こやま うん。で、音作りの面でも、なんて言うんやろね? あれは。ギターとかベースとかのフレーズも、ドラムも、自分らではやらへんようなことも、入ってたりして。

    しばた あとホーンの音を聴いた時に、「うわ、シライシ紗トリや」ってめっちゃ思いました。

    こやま めっちゃうれしいなあ、あれは。ちゃんと寄せに行ってくれた、俺たちが思い描いてるものに。

    もりもと あと、こやまさんがさっき言ったように、曲のベースがある程度できてた、というのもあって。録る前に、それぞれで準備をする時間があった、というのも大きいですね。普段なら、考えながら録るのがあたりまえやったんですけど──。

    こやま この曲にかけれる時間が多かったな。

    もりもと できたものを一回持ち帰って、もう一回シライシさんの前でプレイする、っていう形だったので。普段より、ドラムはスムーズでしたし、すごくいいのが録れましたね。そうだ、さっき僕、ヤバTの空白が埋まった、って言ったじゃないですか?

    こやま うん。むっちゃいいことを。

    もりもと だから、次の空白はどこかな、ってなったら……こやまさんが半分ふざけて言ってるのは、「ビジュアルかもしれない」と。

    こやま (笑)。

    もりもと ヤバTにとって。

    こやま まあね、音楽性で音楽を売る時代じゃないんで。ビジュアルで売っていく時代。

    しばた やめろ。ほんまやと思う人いるから。

    もりもと でも僕、わりと真に受けて。ダイエットしてみたんですけど。

    しばた はははは!

    こやま そりゃビジュアルなんて、いいに越したことないんやから。

    ──であれば、もうちょっと仕上がりを気にしたほうがいい気が。っていうのは、今回の初回限定盤に付く「くそDVD」の──。

    こやま あ、観てくれはったんですか?

    ──はい。今までは、完成がインタビューに間に合わなくて、事前に観たことなかったんですけど、今回は早く完パケたみたいで。

    しばた 早あ。

    ──で、観たら、始まった瞬間のこやまさんの顔が、「うわ、目が小さい!」と。

    しばた・もりもと ははははは!

    こやま なんか特別ブスちゃう? あの顔。

    もりもと あの日の昼間、雪で真っ白な中で、目を開けて──。

    こやま 光の反射がすごくて、それでな。

    しばた 朝早かったしね(笑)。

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