ヤバイTシャツ屋さんが癒着しまくれる理由を真剣に考えてみた

ヤバイTシャツ屋さんが癒着しまくれる理由を真剣に考えてみた
ヤバイTシャツ屋さんが、7月10日にリリースしたシングル『スペインのひみつ』のリード曲“癒着☆NIGHT”。この「癒着」という本来であれば避けるべきネガティブな言葉は、ヤバTではよく出てくるワードで、所謂タイアップのことを「○○さんと癒着してます」とライブMCやSNSで無邪気に発言している。
また、ヤバTはこれまでに、ロッテ、サントリー、au(KDDI)、SUUMO(リクルート)などの一流企業と癒着しており、『スペインのひみつ』からも、“癒着☆NIGHT”がスプライト(日本コカ・コーラ)、志摩スペイン村のテーマソング“きっとパルケエスパーニャ”のカバー曲が同テーマパークのCMソングに、“案外わるないNHK”がNHKのキャンペーンソングに起用されている。


だが、本人たちもしばしば口にしているように、ヤバTはまだ全国放送のテレビで歌ったことがない。ロック好きへの知名度は文句のつけようがないが、お茶の間への認知度が抜群に高いとは言えないだろう。では、なぜヤバTは数々の一流企業と癒着しまくれるのか? 今回は、その理由について真剣に考えてみた。

まずは、企業側の気持ちになって考えてみよう。タイアップに至る理由には「商品とイメージが合う」、「社長の趣味」など色々あるだろうが、「より多くの人に商品/キャンペーンを目立たせ普及させるため」というのが1番だろう。その点において、ヤバTはピッタリだ。
ヤバイTシャツ屋さんというバンド名はもちろん、曲名もインパクト溢れるものばかりでめちゃくちゃ目立っているし、ロッテとの癒着曲“とりあえず噛む”のサビ《とりあえずガム&ガム&ガム&ガム&ガム》、《咀嚼&咀嚼&咀嚼&咀嚼&咀嚼》などに見られるキャッチーな歌詞とリズムは、1度聞いたら頭にこびりついて、広告のターゲットに対し大きな印象を残すことができる。


ヤバTはファンの層も広い。パンク、ミクスチャー、ポップにコミックも、とヤバTの楽曲には多様な音楽的要素がハイレベルで入り混じっているので、ヤバTと癒着すると色んなジャンルのロック好きに対して、宣伝することができる。さらに、ライブのMCでお客さんの年齢のアンケートをとれば、10歳以下から50代以上までが元気いっぱいに「はーい」と手を挙げ、年齢層の幅広さも文句なしだ。このファンの年齢層の広さには、ヤバTの楽曲が誰も傷つけることがなく、子供にも安心して聴かせられるという点が大きいと思うし、そんなヤバTだからこそ、企業も安心して任せることができる。

もちろん、ヤバTならではの独特でユーモラスなコラボも魅力的だ。サントリーとのコラボMV“Tank-top in your heart”と“Tank-top Festival 2019”では、普通はさりげなく登場させる商品(この2つのMVでは「デカビタC」)を堂々と登場させ、大きな「タンクトップ神」(ヤバTのキャラクターの巨大なバルーン)が登場している(もちろん制作のお金を出してくれたのはサントリーだ)。この、商品を堂々と押し出してもやらしく感じないユーモアとの絶妙なバランス感や、間違ったお金の使い方で「サントリーさん凄い! 優しい! 好き!」と企業の好感度をUPさせちゃう寿司くん(ヤバTすべてのMVを手掛ける監督)こと、こやまたくや(G・Vo)の独創的なクリエイティブさには脱帽する。他にも、ロッテとコラボした際の「ヤバイガム屋さん」などの面白イベントも行っている。


また、歌詞の言葉遊びもヤバTの楽曲の魅力のひとつだが、コラボソングでも巧みな仕掛けが施されている。“とりあえず噛む”では、《考えすぎるのはやめろって 悩みすぎるのはやめろって》と「ロッテ」の企業名が、企業との癒着とは少し違うが、映画『ニセコイ』の主題歌に書き下ろされた“かわE”では《ほんまにせこいわ》と映画名が入れ込まれている。ちなみに、スプライトのCMで使用されている“癒着☆NIGHT”の歌詞は、CM用に変更されているので、ぜひ聴き比べてみて欲しい。


そして、個人的にこれが本質だと思っているのだが、ヤバTは本当に癒着する相手に対して、しっかりと愛情と敬意をもっている。特にNHKや志摩スペイン村、サンリオに関しては、癒着が決定する前から深すぎる愛情をアピールしており、その愛が伝わっての念願の癒着だった。つまり、ヤバイTシャツ屋さんという一見破天荒そうなバンドは実はめちゃくちゃ真面目で、根本にリスペクトの念がしっかりとあるから、彼らの言う「癒着」はネガティブでなく、ポップな言葉として受け取ることができるのだ。


以上が、ヤバTが癒着しまくれる理由を真剣に考えた結果だ。改めてバンドの魅力を再認識できたと共に、企業がヤバTを選ぶのは決して意外なことではなく、理にかなっていることだとわかった。次はどんな相手と、どんな角度で素敵な癒着を繰り広げてくれるのか。ワクワクが尽きないこのバンドのこれからに注目し続けたい。(野澤勇貴)
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