FAKE TYPE. エレクトロスウィング旋風はいよいよメインストリームに侵攻――メジャー1stアルバム『FAKE SWING』インタビュー!

FAKE TYPE. エレクトロスウィング旋風はいよいよメインストリームに侵攻――メジャー1stアルバム『FAKE SWING』インタビュー!

(活動休止前は)FAKE TYPE.として提示しなきゃいけないもののハードルを、自分たちで上げすぎていたんですよね(トップハムハット狂)

――メジャーデビュー後初のアルバムというタイミングなんですが、いざメジャーのフィールドに立ってみての感慨はありましたか?

トップハムハット狂 DYESは元々、メジャーデビューできたらしたいなって言っていたんですよ。活動休止前は。

DYES IWASAKI 活動を再開してからは、自分たちのペースを守っていこう、みたいな感じで話していたので、むしろメジャーとは真逆の(笑)。

トップハムハット狂 ありがたいことにお話をいただいて、メジャーというフィールドはどういうところかなって経験することも大事だと思ったので、メジャーデビューに踏み切ったというところですね。

――2017年から2020年の約3年間には活動休止期間があったんですけど、休止の理由はどういうものだったんですか。

トップハムハット狂 FAKE TYPE.でやっていることにお互い疲れてきて。あの日々は、作らなきゃ作らなきゃって何かに追われているような感覚だったんです。

DYES IWASAKI 余裕がなかったですね。

トップハムハット狂 そういう状況に陥ってしまうとメンタル面にもよろしくないので、これをやり続けるのキツくない? じゃあ休もう!というところに着地しました。 FAKE TYPE.として提示しなきゃいけないもののハードルを、自分たちで上げすぎていたんですよね。

――さっきの話にもあったように、活動再開に際しては、楽しく健康的にやっていこうというつもりだったんですね。

トップハムハット狂 そうですね、実は(笑)。

DYES IWASAKI 気づいたらめちゃくちゃ働いてるっていう(笑)。

――そんな活動休止期間中にも、トップハムハット狂の“Princess♂”や“Mister Jewel Box”ではDYESさんがトラックを提供していて、しかもめちゃくちゃバズって。なんか運命的な離れられなさというのが……。

トップハムハット狂 それはありますよね。だって、そんな偶然ないじゃないですか。でも、“Princess♂”のトラックをお願いする頃には、またFAKE TYPE.をやろうっていう話をしていたんだよね?

DYES IWASAKI そう。活動再開は決まっていて、そのジャブみたいな感じで“Princess♂”や“Mister Jewel Box”を作ったんです。

トップハムハット狂 匂わせみたいな。それで本来なら、コロナがなければ“Mister Jewel Box”の前に活動再開を宣言できたはずなんですよ。

DYES IWASAKI (2020年春に予定されていた)ライブで宣言するつもりだったんだよね。それがなくなっちゃったから。

――なるほど。で、これも運命の悪戯というのか、『ONE PIECE』著者の尾田栄一郎先生が“Princess♂”を気に入って、そこからキャラクターの着想を得たというすごいエピソードが。

トップハムハット狂 映画『ONE PIECE FILM RED』のウタちゃんですね。

――映画ではAdoさんがウタのボーカルパートを担当していて、劇中歌としてFAKE TYPE.が“ウタカタララバイ”を提供。しかもばっちりエレクトロスウィングしているというところで、いろんなものが物語として繋がったんですけど。

DYES IWASAKI めちゃくちゃ光栄な。

トップハムハット狂 嬉しいですね。

トップハムハット狂のクレイジーなラップを引き出したかった。それにいちばん合うのはエレクトロスウィングだろうって思ったんです(DYES IWASAKI)

――今回のアルバムも、『FAKE SWING』というど真ん中のタイトルになっているんですけど、DYESさんにとってのエレクトロスウィングは、もはやただ得意ってだけじゃなくて、ほとんど代名詞というかライフワークみたいなスタイルになっているわけじゃないですか。

DYES IWASAKI そうなっちゃってますね(笑)。

――エレクトロスウィングとはどういうふうに出会って、なぜDYESさんをそこまで魅了したのか、伺っておきたいです。

DYES IWASAKI ええと、キャラヴァン・パレスというバンドの“Suzy”という曲があって、なんだこのかっこいい音楽、って痺れたんですよ。その時は自分に作れるわけがないと思ってただ聴いていただけだったんですけど、2013年にFAKE TYPE.の活動を始める時、「どんな音楽やる?」って話になって。トップハムハット狂のクレイジーなラップを引き出したかったので、それにいちばん合うのはエレクトロスウィングだろうって思ったんです。スウェーデンのモービッツというバンドは、ラップとエレクトロスウィングを融合させていたので、これだよね、みたいな。

トップハムハット狂 (笑)。

DYES IWASAKI それが評価されてしまったので、半ば強いられるようにしながら(笑)。始めはサンプリングでごまかしながら作っていたんですけど、次第に打ち込みで作るのが楽しくなってきたんです。

――今は、メロディも全部打ち込みですか?

DYES IWASAKI メロディも打ち込みで、それを演奏者さんに弾いてもらったりもしています。とにかくもう、音がおもちゃ箱みたいで楽しい、賑やかでかつポップというのが、自分のスタイルに合ってるんじゃないかなと思って、作ってきました。

――トップハムハット狂さんのラップありきで確立されたスタイルでもあるわけですね。

DYES IWASAKI そうですね。FAKE TYPE.をやっていなかったら、エレクトロスウィングをやっていたかわからないです。

――さっき仰ってくれたように、ヨーロッパを中心にエレクトロスウィングのシーンを盛り上げてきた先駆者たちがいて、DYESさんもロマ音楽/ジプシースウィング的な豊かなメロディを継承しているんですけど、それも自分なりに研究してという感じですか。

DYES IWASAKI 本当に見様見真似で。メロディがこういうふうに動くと気持ちいいんだというのを、体で覚えたタイプです。

――トップハムハット狂さんからすると、このスウィングするグルーヴに対する言葉の乗せ方というのは、一種独特なものがあると思うんです。DYESさんのトラックに鍛えられたという感覚はありますか?

トップハムハット狂 うーん、そうですね。テンポも速めですし、速いビートに対して言葉を詰めるので、必然的に早口にならなきゃいけないんです。もともと早口は好きだったんですけど、ここまで詰め込んでやるということはなかったので、それを普段通りの感覚でやれるようになったのは、FAKE TYPE.の活動があったからこそ今の自分があるなと間違いなく言えますね。

――これだけ練り上げられたエレクトロスウィングのトラックと、鍛え上げられたラップが日本のメインストリームに出るというのが面白いし、今回のアルバムの怖さでもあると思うんです。

トップハムハット狂 これを聴いて、自分もやってみたいなという人が増えてくれたら嬉しい気持ちはありますね。

DYES IWASAKI 嬉しいね。

――アップリフティングな曲が多いんだけど、トラックの中のメロディはただハッピーなだけじゃなくて、本当に情緒豊かに、さまざまな表情をもたらしていると思います。それについてはどうですか?

トップハムハット狂 トラックをもらってから自分もラップを作り始めるので、やっぱり曲の雰囲気に合わせるというか、引っ張られる部分があります。それでリリックのテーマとか、トップラインとかも変わってくるので。DYESが打ち込みをするようになってから、そこもより変わってきたかな、と感じますね。それによって自分も筆が乗る、みたいな。

DYES IWASAKI やっぱり、作れる曲調の幅が広がったよね。

トップハムハット狂 でも、FAKE TYPE.をやる前から独特だったんですよ。DYES IWASAKIブランドみたいなものは、片鱗を見せていた気がしますね。

次のページ“ウタカタララバイ”では、楽曲提供という形で間接的に作品(映画『ONE PIECE FILM RED』)に関わらせていただいたんですけど、FAKE TYPE.の曲として、こういう携わり方ができたら嬉しい(トップハムハット狂)
公式SNSアカウントをフォローする

人気記事

最新ブログ

フォローする