自分が許せないもの=自分が信じたいものだったりするんで、その感情を歌にしないのはもったいないな、って
――新しいという意味ではアンチテーゼを感じさせる“いらない”もそうですよね。鉄風東京って切なさや恋心を歌うことはあっても、ある種の怒りを感じさせるような言葉やフレーズはなかったじゃないですか。「そうですね。いろんな感情が生まれるうえで、怒りや憎しみは歌いたくないなと思ってたんです。悲しみや悔しさにフォーカスをあてたほうが人間として成長できるし、負の感情を与えるのは好きじゃないというか。でも、自分が許せないもの=自分が信じたいものだったりするんで、その感情を歌にしないのはもったいないな、って」
――ただ、怒りだけではないですよね、この曲。
「歌いたいことって憎しみだけじゃなく、その憎しみや怒りが何からきたのか?って最終的に考え、レコーディングするときに《信じるただ一つを 僕らは守り抜いて》っていうところを最後に加えました」
――しかしながら、《他人の光を餌にして飯を食うバカに用などない》って強烈なパンチラインだなと思いましたよ。
「この歌詞を書いたとき、鉄風東京のLINEグループに送ったんですけど、マネージャーふたりが不安がっちゃって(笑)。ふたりに向けた曲ではないです、って説明しましたけど」
――ドキッとはしますよ、どうしても。
「小説しかり、映画しかり、ただ消費されるだけのものになった瞬間、切ないなと思うので。もちろん、それはそれですごいし、経済にも貢献するから正しいんですけど、僕らがやるべきことは違うよね、って」
――“FLYING SON”は鉄風東京のホームグラウンドであるライブハウス、仙台FLYING SONのことを歌ってますね。
「精神性は完全にFLYING SONで培ってきたものだし、自分たちにとっていちばんと言っても過言じゃないぐらい大事なんです。僕の夢がFLYING SONを聖地にしたいっていうこともあるし、自分がどういうところで育ったのか、という曲が必要だと思ったんです」
全部言っちゃいたいんです。含みを持たせるよりは、全部を鮮明に書いちゃうようなタイプですね
――バンドの規模が大きくなればなるほど、ライブハウスから巣立つことにも繋がるじゃないですか。そこはどう考えていますか?「この先、どれだけ売れても絶対にFLYING SONではライブをしたいんです。ただ、店長とかにはずっと『こんな小箱から早くいなくなってくれ。おまえらがデカくなって、大きい箱を埋めてるほうが正解だし、オレは嬉しいよ』って言われるんですけど……でも、僕がFLYING SONって箱にいないと心が保てないし、軸なんで。だから、ここにいるからな、っていう宣言というか脅しというか(笑)」
――“東京”は面白い切り口というか。シンプルに受け取れば頑張る君への応援歌なんでしょうけど。
「恋愛の歌って勘違いされがちで、そう受け取ってもらってもいいんですけど、上京したバンドの友達への曲なんです。その友達が上京してからあんまりバンドをやってないことが悲しくて、自分はここでこうしてます、っていう一方的な手紙みたくなってて。もちろん、相手のことを全部認めたうえで頑張れよっていう歌ではあるんですけど」
――ただ、応援するほうはするほうで部屋でひとり膝を抱えてるようでもありますよね。
「そうですね。まあ、生活とか人間関係に関しては、僕はうまくいってないことがデフォルトだと思ってて。なんだかんだ絶対にひとつはいざこざがあるし。でも、そういうことにも目を向けて音楽をやっていたら、それがちゃんと身にもなってくるんですよ」
――シンプルにメッセージだけを押し出すだけじゃなく、そこにある手前の部分もちゃんと書くのが鉄風東京っぽいと思います。
「全部言っちゃいたいんです。含みを持たせるよりは、全部を鮮明に書いちゃうようなタイプですね」
――そして、リリース後には2マンツアーもスタートしますね。
「今回の2マンツアーは、自分が中学、高校のときから聴いてるバンドを呼んでるんです。自分が目指してるものだったり、DNAをもらったバンドと戦うわけなんで、200%、300%かっこいいライブをやらないと完全にやられるだろうし。プラス、そういった対バンを好きで『鉄風東京、どんなもんだ?』と思って観に来た人たちから厳しい目を向けてもらって、それに打ち勝ちたいんです。影響を受けたバンドと対バンして、そのお客さんたちが『鉄風東京いいね』って一瞬でも思わなかったら、DNAをもらったバンドに失礼なことをしてると思うから。影響を受けたバンドに『あなたたちのおかげで僕はかっこいいバンドをやれてます』って風に言えないとおかしいし、現時点ではそれを言えると思ってるんで、真っ向勝負で挑みたいですね」