【インタビュー】SHO-SENSEI!!は新たなJ-POPを作る道の途中。孤高にヒップホップを極めた最新EP『SCRAP』とその先を語る

【インタビュー】SHO-SENSEI!!は新たなJ-POPを作る道の途中。孤高にヒップホップを極めた最新EP『SCRAP』とその先を語る

ずっと乗っていた飛行機が壊れたような感覚だった。『SCRAP』はそれを直そうというEPでした

――『SCRAP』はコンセプチュアルな作品になっていますよね。どういうことを描いたEPだと言えますか。

「EP全体に対して浮かんでいた絵があって。『星の王子さま』、読んだことありますか?」

――はい、あります。

「『星の王子さま』って、パイロットの『ぼく』が砂漠に不時着しているときに王子さまと出会うんですけど、その『ぼく』のつもりで作ったというか。砂漠に飛行機が不時着して、飛行機を直しているっていう状況がずっと頭にある中で作ったのが『SCRAP』というEPです」

――「大切な人との別れ」というのがひとつ背景にあるんだろうとは思うんですけど、「飛行機の不時着」「飛行機が壊れている」という比喩表現で、自分のどういう出来事や心情を表現したかったのでしょう。

「特別『これがあった』というわけではないんですけど。もし『今、どういう気持ちなん?』って聞かれたら、ずっと乗っていた飛行機が壊れて直しているような感覚だったというだけですね。たとえばちょっと病気になったとか、プライベートのパートナーのこととか、具体的なことはいろいろ言えるけど、それがすごく大きかったかと言われると実はそうでもなかったりして。特に原因がないにしろ、僕の心が飛行機が壊れたような感じだったので、それを直そうというEPでした」

――音楽にしなきゃ保っていられないくらいの状態だったのか、それともシンガーソングライターとして冷静にそういった状態を音楽にしてみようというスタンスなのか、どっちだったと言えますか。

「日記のように曲を作っているので、どちらとも意識してないです。曲を作ることが日常的すぎて。飛行機の話を頭に浮かべながら“Oil”を作っていたんですけど、ムードとか曲のオーラが好きで。そのときに頭に浮かんだものをEPとして出したいなと思って、ちゃんと向き合って曲を作ったというのはありました」


――日記のように曲を書く中で、歌詞にしたくなる出来事や心情ってどういうものですか。このEPに限らず、SHO-SENSEI!!特有の温度感や儚い空気感みたいなものがあると感じていて、それはどこから湧いてくるものなのかなと。

「すごく健康な状態のときにはそんなに曲を作らないので――まあ、健康な状態のときってそんなにないんですけど、それは別に病んでるという意味でもないんです。僕の曲に、めっちゃ悲しい曲はないと思ってるんですよ。けど、常にちょっと不安な状態ではあって、それが曲になってると思います。『0』を悲しい、『10』を幸せとしたら、『4』あたりをずっと彷徨ってるのかなと思ってて。落ちているときはまったく音楽を作らないんですよ。だるいし、やる気起きないので。僕が音楽を作ってるときは大体『4』くらいなので、それが自然と出るんだと思います」

ポップスとか邦ロックを使って、僕のヒップホップのノリを表現したい。日本の材料だけ使ってイタリアンを作るみたいな感じです

――これも今作に限らず、生死にまつわることとか、死に対するものが歌詞に滲み出ていると思うんですけど、「死」というものを強く意識するのはなぜなのでしょう。

「いろんな原因があると思うんですけど。1回、事故で死にかけたことがあって。カナダで時速70キロの車にはねられたんですよ。でも平気で生きてて。病院の先生にも『このパターンで生きてたのは見たことない』みたいに言われて。『なんで生きてたのかわからへん』っていろんな人から言われるうちに、もうちょっと頑張るべきことがあるんやろうなという思いにはなりました。あと、2016年から2019年、僕が17、18、19歳くらいのときに夢中やったアーティストが3人、21歳くらいで亡くなってて。僕もそのくらいのときに死にかけたので、いろいろ考えるようにはなりました」

――それは人生においてめちゃくちゃ大きい出来事じゃないですか。

「かもしれないです。でも正直、訊かれないと出ないくらい薄い出来事でもあります。日頃はそんなに意識してないですね」

――自分の人生の中で衝撃的な出来事って、ほかに何かありますか。

「省略して話すと……カナダにいるとき、ジャパンフェスみたいなイベントに出ることになって。同じように日本から来たアーティストの女の子が『私も出たい』ってなって、俺が曲を作るって言ったんです。で、自分はできると思ってたけど、その子に『ここはこうして』とかって言われたときに、自分の能力ではできないことがあまりにも多すぎて。それを認めずにのらりくらりかわそうと思ってたんですけど、その子に『あなたは本気で音楽やるとか言ってるけど、私に正直に話もできない時点で本気じゃない』みたいなことを言われて。最初は『何言っとんねん』って思ったんですけど、その子の打ち込む姿勢とか、やってることのガチ度を見たときに、自分が雑魚すぎてしんどなって。それで考えすぎて、自分のことを追い込みすぎて、バイト中に気を失って、そこから1週間くらいほとんど記憶なくて(笑)。その時期が大変でした」

――それは、音楽に向き合う姿勢が変わったきっかけとして大事な話ですね。

「めっちゃ大事やったと思います。音楽だけじゃなくて、人として生きていくうえで。自分ができないことはできないと言うとか、言ったことはやるとか、小学生でもわかるような人生の大事なことをそのときに学んだというか。そこからボイトレに行きだしたり、できないけど気にしてなかったことをちゃんとできないと認めて、勉強したり人に教えてもらったりするようになりました」

――次はどんなことをやっていきたいか、何か思い描いていることはありますか。

「さっき言ったように、去年出したアルバムのライブのノリだとちょっと目指している部分とは違うかなというのがあって、『SCRAP』を出したけど――こういう言い方したら調子乗ってるけど――ちょっと偏差値が高かったのかなと思っちゃって。なので、『そこ(前作2作)』と『ここ(『SCRAP』)』の間に補助線をちゃんと引いてあげるものを出したいなと思ってます。今回はSHO-SENSEI!!の感じに落とし込んで僕のヒップホップを出したけど、みんながわかりやすいポップスとか邦ロックを使って、僕の出したノリを表現したい。日本の材料だけ使ってイタリアンを作るみたいな感じです。『SCRAP』は、イタリアンを作りたかったからイタリアンを出した感じだったけど、日本人には受け入れられなかった。みんなが親しんでる日本食の具材を使うけど、ちょっとおもろい使い方をして『イタリアンやねん、実は』みたいな感じを出そうかなって」

――その行く先で「J-POPのSHO-SENSEI!!」という位置を確立するというのが今の夢であると。

「そうですね、一旦は。もともと僕は海外で音楽をしたかったので。海外で音楽をするためにカナダへ行って、カナダの人と喋ったりいろいろな体験をした結果、海外に行くいちばん近い生き方は日本でかますことやっていう見解になったんです。日本でかますことは一歩目だと仮定して、それを経たうえで、『世界でこういうことが起きてるときに、日本にはこういうやつがいるんやで』というのを全員がわかるようにしないとなと思ってます」

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