インタビュー=杉浦美恵
「私ならエラちゃんをこういうふうに見せていきたい」って話してくれて、その時にもう「絶対にお願いしよう」って思った(ELAIZA)
──ELAIZAさんと雫さん、おふたりには以前から交流があったんですよね?エラちゃんから電話かかってきて。普通、最初はスタッフから依頼がくるものだけど、「楽曲提供よろ〜」みたいなノリで(笑)(雫)
ELAIZA 最初はいつだっけ。あ、『左ききのエレン』だ。
──2019年の秋に放送されたドラマですね。主演が池田エライザさん、主題歌がポルカドットスティングレイの“女神”。それが間接的な最初の接点?
雫 最初はそうですね。でもその時点ではそんなに交流はなくて。そのあと、J-WAVEの自分のラジオ番組のゲストにエラちゃんを呼んで。
──『SPARK』ですよね。
雫 そう。『SPARK』に呼んで、そこで初めてしゃべって、「これは友達になってもらえるかもしれない」って(笑)。
──雫さんがそう思うのって、結構珍しくないですか?
雫 珍しいです。友達できないマンなので(笑)。初めて会ってこの感じ、「まさか友達になってくれる?」って思ったんですよ。でもそこから本格的に友達になるまで少し期間が空いたよね?
ELAIZA そうだね。お互い気軽に人を誘えるタイプじゃないもんね。私は、人を誘ってごはんに行ったりすることは年に1、2回しかないんですよ。選んでるわけでもなんでもなくて、「この人は誘っても大丈夫」という絶対的な自信を持てるようになるまで、何年もかかるんですよ。
雫 それ、相当わかる(笑)。でもそれを乗り越えて友達になりました。
ELAIZA そんなタイプのふたりが出会って心を許してしまうと、もう話が止まんないわけですよ。この前も気づいたら朝だったし。うちに来てくれて、楽しくしゃべってたら朝になってた(笑)。
──(笑)。雫さんがELAIZAさんに対して、初対面で「友達になれる」と思えたのはなぜなんでしょう。
雫 内向的な者としての動物的な勘だと思うんだけど、私みたいな者を受け止めてくれそうな心の広さを感じたんですよ。まあ、一種のバブみ? みたいな(笑)。
ELAIZA 私がバブられ体質なんで(笑)。あと、地元の友達みたいな空気があったんですよね。同じ時代をサバイブして、同じ時期にオタク期間があって。しゃべるスピードも、オタ時代がある人特有のテンポで(笑)。
雫 わはははは。速めのテンポ感よね。
ELAIZA そう。博多弁もお互い自然に出せるし、地元の放課後みたいなノリで話せるというのはありますね。
──初対面から間を置いて、その次はどんなふうに親交を深めていったんですか?
ELAIZA ふたりでポケモンセンターに行ったんだよね。「あそぼ」って。私が珍しく買い物に出ようって思っていて、じゃあそこで集合しようかって。雫が中腰でこそこそっとパルコに現れて、なんか、ひとりカバディみたいな状態で来たのを覚えている(笑)。
雫 そうそう。ビクビクしながらね。怖いのよ、外に出るのが(笑)。だからエラちゃん見つけて、バリ安心したの。
ELAIZA そのままポケモンセンターに行ったんだけど、ずっと外にいるのはかわいそうだなって思ったから、すぐ家に連れて行きました(笑)。
──(笑)。その日に音楽の話も?
ELAIZA そうですね。
雫 「どういう曲がほしい?」みたいな。
ELAIZA 雫がいろいろアイデアを出してくれて。「私ならエラちゃんをこういうふうに見せていきたい」って話してくれて、その時にもう「絶対にお願いしよう」って思った。もちろん正式な手順を踏まなきゃいけないんだけど、「これ、形にしたらめっちゃ楽しいだろうなあ」って。それで今年は特に、いろんな人のお力を借りていろんなことに挑戦したいと思っていたから、ユニバーサルで打ち合わせをしている時に、「雫にお願いしたい」という話をして。
雫 エラちゃんから電話かかってきたんだよね。普通、最初はスタッフから依頼がくるものだけど、まずELAIZAから電話がかかってきて「楽曲提供よろ〜」みたいなノリで(笑)。後ろから「よろしくお願いします」って、スタッフの声が聞こえてきたみたいな感じでした。もちろん即OKだし、すぐどんな曲にしようか考え始めて。
──ELAIZAさんをどう見せるかというプロデュース目線もあっての楽曲提供だったと思うんですけど、どんなものにしようと?自分で(“FREAK”の)ターゲットやコンセプトを整理した資料には「私は強え女のELAIZAが見たい」って書いてありました(笑)(雫)
雫 しっかりバンドサウンドで、ダンサブル寄りの元気めな曲。かなりロックっぽい曲をイメージしていました。
ELAIZA うん。最初に話してくれたイメージとほとんど変わってないと思う。「フェスとか出てみたーい」っていう話もしてたし、ライブ向きの曲があまりないというのもあったから。
雫 私はいつも自分でターゲットやコンセプトを整理した資料を作ってから曲を書き始めるんですよ。そこには「私は強え女のELAIZAが見たい」って書いてありました(笑)。どこに出すでもない資料に書いていたので、よっぽどだったんだと思います。ほんとに強い女が歌う強い女の曲ってマジで説得力あるし、その説得力を出せる人はなかなかいないから。その説得力を出せる人に曲を書けるんだと思ったら嬉しくて。
ELAIZA 私も、曲をもらってすぐ「オッケー、これやる!」って。力強さを求めてくれてるのはわかっていたけど、たぶん聴く人に対して押しつける感じではないと理解していたから、言葉に意味を求めすぎず歌うようにしました。音遊びみたいな言葉をたくさん入れてくれたから楽しかったです。もらったデモの仮歌が上手いから「ここがキラースポットなんだろうな」というところを汲み取りつつ。
──曲を書くにあたって、雫さんはELAIZAさんから何かオーダーはもらってたんですか?
雫 私からしたら、これまで手がけた曲の中でいちばんオーダーがなかったくらい、なんでも肯定してくれる制作だったんですよね。
ELAIZA 逆に不安がってたよね(笑)。
雫 そう。ほんと「このままでいいの?」みたいな。
ELAIZA 最近は自分が書いてるものが多かったので、自分のものに対しては厳しくビシビシ見直すんだけど、前回の岡崎体育さんの“たましい”も、雫の曲も純粋に「すこ♡」って(笑)。「何これ楽しそう!」って感じたものは迷わず肯定していくことが、今自分にとって必要だとも思うので。
──いろんな音楽性を貪欲に取り込んでいきたいという思いも?
ELAIZA 1stアルバムの『失楽園』の時って海外の方たちがコライトでたくさん参加されて、ひとつオーダーを通すのにもすごく時間がかかったし、いろいろ大変な経験をしたので、今は自分がすごく信頼してる方にオーダーして作りたいという思いも強くて。そのあと「なんでもかんでもひとりでやってみます」の時期を経て、そうすると今度は「仲間」への憧れも出てくる。だから今は誰かの手を借りて一緒にやりたいという思いが強いんですよね。というところで、そもそも好きな人だからお願いしているわけで、それに対して自分があれこれ言おうとは思わないんですよ。いただいたものに対して、自分の表現でいかに「やるじゃん!」と思わせるかという。
雫 素敵だなあ。