いつ何が起こるかわからないから必死に音楽でやっていこうね、みたいな話はします。国や文化の違いを越えて、友達といて感じたことをそのまま書いた歌詞で……続いてほしいけど、続くかわからないし、という訴えもあります(Mol)
──Billyrromにとっても、Wendy Wanderがいなければ作れなかったサウンド感に到達できているんじゃないかと思いました。“DUNE”のスケール感をバンドが習得するまでに時間がかかったという話を前にしてくれましたけど、“DUNE”よりさらに壮大な、スタジアムで鳴らすのがふさわしいサウンドができあがっていて。しかもその中で儚さや寂しさ、孤独もちゃんとあって。
Mol その通りだと思います。音数も多いんですけど、聴いていくうちに各々の魅力がどんどん滲み出てくる、スルメみたいな曲だと思いますね。
──「Nightglow Dreamer」というテーマは、どこから出てきたものですか? 街も自分の心も暗いときに光が射し込んできた景色を描いていて、一瞬の煌めきと儚さが浮かぶような曲で。
Mol 歌詞を書き始める前から「一期一会」をテーマにしたいなと思って、Wendy Wanderに言ったら「めっちゃいいじゃん」って言ってくれて、そこからJian Yangとふたりでメロディと歌詞をつけていきました。
Jian Yang スタジオでセッションしていたときからすでにMolと少し歌詞を書いてました。大半はMolが書きましたね。ありがたいです。英語、日本語、台湾語の3つの言語が入っていることも、とても素晴らしいことだと思います。僕が書く台湾語の歌詞は、一般的に覚えやすい台湾語の歌詞というより、外国の楽曲のフロウに近いので、この曲のメロディラインとピッタリじゃないかなと思います。
Mol でも、僕が英詞のところを書く前に、Jian Yangが台湾語の《僕の声が君の呼吸に従って/近づいていく周波数/街の灯りはまるで夢のよう/僕はまだ目覚めない》を書いてきてくれたんです。「夢」という言葉も彼が持ってきてくれて、それがきっかけで僕も筆が進みました。
──「一期一会」というテーマが、なぜMolさんにとってしっくりきたのだと言えますか?
Mol 言語も文化も違うのに、「こんなにいい時間が流れることがあるんだ」っていうことが衝撃だったんですよね。久しぶりにメンバーのすげえ無邪気なところを見た気がして。20代半ばのやつらが子どもみたいに遊んでる時間がすごく美しいなと思って。それこそ「カカシ先生」のノリとか、普段絶対にやらないんですけど、いい時間だなって僕も感じたし、みんなもそう思っているように映って、それをそのまま曲にしたいなと思ったんですよね。
──BillyrromとWendy Wanderは世代も近いし、世界に対して思っていることも、言語を超えて共鳴するところがあったのかなと。
Mol そうですね。いつ何が起こるかわからないから必死に音楽でやっていこうね、みたいな話はします。国や文化の違いを超えて、友達といて感じたことをそのまま書いた歌詞なんですけど……続いてほしいけど、続くかわからないし、ということを感じていて。それに対しての訴えもありますね。もともと音楽って、そういうことに対して直接訴えかけられるものでもあると思うから。
──国境を越えて音楽ができることも、自由でキラキラとした時間を続くことも、当たり前ではないし、自分がコントロールできないところで失ってしまう可能性も想像しているし。
Mol そうですね、そこの部分は大事にしました。儚さとか、そういう気持ちの部分にフォーカスした気がします。
──台湾でライブをする中では、どんなことを感じますか?
Mol 台湾のお客さんって、すごくピュアな人が多くて。ライブでもお客さんが純粋に楽しんでる印象がすごくあって、そこが台湾の魅力だと僕は思ってます。音楽市場の話とか、どういう流れで売れていくのか、日本と台湾でどういう違いがあるんだろうということに純粋に興味があって彼らと話したりしたんですけど、台湾って、聴き手が売れるものを選んでいるような感覚があるんですよね。台湾のお客さんの音楽の楽しみ方が、単なる消費で終わってないところが僕はすごく好きです。
──当たり前のものとして享受しているのではなく、心の底から熱狂して、しかもそれを外に出して表現するという。
Mol ライブの盛り上がりとか、本当にすごいですよ。すごく楽しんでいるんですよね。楽しめる時間がもっと貴重なのかなとか、色々考えちゃいますね。しかもみんな心でしゃべってる感じがある。建前とか上面じゃなくて。すべてにおいて愛がある国だなって思います。
──この曲の深みは、そういうところまでちゃんと互いに話し合ったから生まれ得たものだったのだなと思いました。『ナルト』のノリみたいなことだけじゃなくて。
Mol そうですね。ただただ仲良い友達と曲を作りましたっていうだけでもないというか、そういう気持ちはあります。
次は日本のスタジオでセッションしたりMV撮影もしてみたいです。また新しいものが生まれるんじゃないかな(Jian Yang)
フルアルバムを作ろう!(笑)(Mol)
──ミュージックビデオも、一緒に過ごした時間を残すようなロードムービー的作品になっていますよね。
Jian Yang Wendy Wanderの“I Want to Be With You”のMVと同じKEYNO監督に依頼しました。監督が「日本のバンドに台湾を案内するというのはどうですか」というアイデアを出してくれて、みんなで一緒に海やエビ釣り場など、色々な場所へ行きましたね。
Mol 本当に、遊んだだけですね。2日間、朝から夜まで、みんなでバスに乗っていろんなところへ行きました。
Jiang Yang 逆パターンもやってみたいですね。次は日本のスタジオでセッションしたりMV撮影もしてみたいです。また新しいものが生まれるんじゃないかな。Wendy Wanderにとっても、他のアーティストと一緒に曲を作ることは初めてでした。一緒に曲を作れてとても嬉しかったです。これからも長く続けましょう。また曲を作りましょう!
Mol フルアルバムを作ろう!(笑)
Jian Yang Let’s go!
──Billyrromにとって今年は、海外のチャートに入ったり海外でもライブが増えたりした1年でしたけど、台湾はじめ海外でやっていきたい気持ちは高まってますか?
Mol 自分たちがこだわり抜いた楽曲をいろんなところでやっていきたいというバンド名の由来通り、「アメリカでやりたい」「メキシコでやりたい」とかそういうことではなく、僕らは僕らで好きにやって、それが勝手に広まってくれたらいいな、という気持ちですね。その中でもやっぱり台湾は僕たちにとって大事な場所になってます。日本だけでやっていると気づけなかったことにいっぱい気がつけて、より一層、いろんなところでいろんな音楽をやっていきたいという気持ちが強くなりました。Wendy Wanderとはいつまで経っても友達でいたいですね。ずっと友達という空気感で、作りたい時に曲を作って、という感じでいたいなと思います。