僕の憧れているバンドは、いろんなものを見せてくれる。それがたまに首を傾げるようなものでもいいんですよ
──じゃあ次の“はっとすりゃ喜劇”ですけど、こちらは最近のめ組が得意としているグルーヴィなディスコポップ路線。キャッチーだけどイントロからがっちりアレンジが練られていて、完成度の高いポップソングだと思います。
もうちょっと何か欲しいなっていうときに、今回もアレンジャーの花井諒さんにお手伝いしてもらいました。ダンスミュージックなんだけど、真ん中にいるやつがこう、だらしなくリズムギターを弾いている感じ、っていうアレンジの意図を伝えたら、なるほどね!ってえらく共感してもらって、それでうまくいったところがあります。
──ああ、ダンサブルなんだけど、平坦なノリじゃ駄目だったってことかな。
そうなんですよ。ベースとかはガンガンに忙しいんだけど、真ん中にいるやつがスンとして、リズムギターを弾きながら歌っている、みたいな。
──言葉の押韻が巧みにグルーヴ感を加速させているし、実はいろんなテクニックが詰め込まれた曲なんですよね。これこそ10周年のめ組だなって。メッセージとしては、《I know! 愛の正体は喜劇》っていう歌詞の最終ラインに集約されるのかなって思うけども。
そうですね(笑)。『七変化』の収録曲にも“(I am)キッチンドリンカーズハイ”っていうダンサブルな曲があるんですけど、ああいうノリというか、もう歌詞の意味とかどうでもよくない?みたいな。音楽はどこか無責任でもいいって、自分で肯定していたんですけど、聴く人からすればちゃんと意味があったほうがいいのかなって、ずっと鬩ぎ合いをしています。
──そうか。前のめりでロックな勢いに満ちた“タソガレモード”がある一方、あのリズム隊は“はっとすりゃ喜劇”のこのグルーヴ感も出せるんだぞっていう、表現の振り幅がすごい。
振り幅を見せることで偉そうにしたくはないんですけど、僕がただ飽き性なだけなんですよね。メンタル的にも“タソガレモード”みたいな曲を10曲は作れないから。でも、メンバーの個性が際立つことは、もちろんそれを美意識としてバンドをやっているし、僕だけじゃなくてみんなもっと前に出てきなよ、という気持ちはあります。あとは、これも美意識なんですけど、サザンオールスターズとか僕の憧れているバンドはこう、いろんなものを見せてくれるんですよ。そのどれもがよくて。たまに首を傾げるようなものでも、いいんですよ。やっぱりそこに憧れているんで。それは僕だけじゃなく、メンバー全員の共通認識だと思います。
誤解を招きそうなので敢えて表明しておくんですけど、外山がめ組を離れるから“いちぬけぴ”ではないです
──なるほど。そして連続リリース第3弾になるのが“いちぬけぴ”です。コミカルな遊び心に満ちた曲なんですけど、これはビビりましたね。まずはこの曲を作った狙いみたいなところから、先に訊いておいたほうがいいかな。
ああ、そうですね。誤解を招きそうなので敢えて表明しておくんですけど、外山がめ組を離れるから“いちぬけぴ”ではない、ということです(笑)。
──タイミング的にね、難しいよね。
そうなんですよ。まじか、と思ったんですけど、全然関係ないというのは、ひとつ念頭に置きつつ。で、これもあまりポジティブな制作経緯ではないんですけど、なんか、自分のやっていることに対して、だましだましやってるところがあるのかなって気持ちがあって。さっきの写し絵のたとえ話にも通じるところがあるんですけど、一瞬そんなことを思ったことがあったんです。だから、サウンド面はヘイトな感じにせず、あくまでも歌詞の中の話で、ちょっと稚拙な僕を許してねというふうに吐き出させてもらいました。とは言え、一人よがりはよくないので、《馴れ合いは慣れないやいや》というフレーズでリスナーさんとの折り合いをつけているところはあるかな。こんなこと言っておいて、アホっぽいサウンドになってると、面白いと思ったんですよね。これも憧れと言えば憧れで、アホっぽく見せたほうが賢く感じられる現象というのもあって(笑)。
ヘア&メイク=栗間夏美 スタイリング=三宅剛
このインタビューは、12月27日に発売された『ROCKIN'ON JAPAN』2月号にも掲載中!
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