【インタビュー】「変化球こそが直球」の究極形“マジで世界変えちゃう5秒前”を解き放った今、ORANGE RANGEは何を想う?

【インタビュー】「変化球こそが直球」の究極形“マジで世界変えちゃう5秒前”を解き放った今、ORANGE RANGEは何を想う?

何かひとつ縛りみたいなのを作ってから歌詞を書くほうが普段思い浮かばないワードが出てきたりするんです(HIROKI)

──“マジで世界変えちゃう5秒前”は、出だしの時点で心を掴まれます。《マジで世界変えちゃう5秒前!》って、言葉のメロディに対する嵌まりが最高ですよ。

NAOTO ね? HIROKIが《マジで世界変えちゃう5秒前!》って書いてきたのを見た瞬間、「これは冒頭に入れないといけないな」って思いました。

HIROKI なんかパワーワードというか、そういうもので勝負する曲だなと思って、いろいろな候補を作ったんです。みんなに提示した中でわりと満場一致でこれに決まりました。

NAOTO メロディがもともとあって、そこにHIROKIがあれを嵌めてくれたんですよね。90年代に長いタイトルって流行ったじゃないですか?

──B'zの“愛のままにわがままに 僕は君だけを傷つけない”みたいな?

NAOTO そうです。“マジで世界変えちゃう5秒前”は、そういう懐かしさもありますね。

──ものすごくキャッチーなフレーズです。

HIROKI どこかで聞いたワードですけどね(笑)。

──ヒット曲のタイトルももちろん思い出しますし、「マジでキレる5秒前」とか、日常会話にも浸透している表現ですが、このメロディに嵌めるのは、素晴らしいセンスだと思いました。《桃太郎さん 桃太郎さん》のあとの《交渉つけに日々談合》も衝撃でしたよ。

HIROKI これ、いいですよね? 自分でも好きなんです。

NAOTO 童謡の“桃太郎”を引き継いでるからな?

HIROKI うん。あの曲の《お腰につけたきびだんご》の韻みたいになっているので。「桃太郎は正義なのか? 悪なのか?」というのも『戦隊大失格』と繋がりますし。

──歌詞の中に密かに赤、青、黄、緑、桃という5色が盛り込まれているのも『戦隊大失格』と繋がります。

HIROKI 何かひとつ縛りみたいなのを作ってから歌詞を書くほうが普段思い浮かばないワードが出てきたりするんです。《桃太郎さん》も、縛りがなかったら出てこなかったでしょうね。こういうのは、誰にも気づかれないこともよくあって、NAOTOだけに説明したりするんですけど。

NAOTO で、「ここは実はですね」と、さも俺が書いたかのように誰かに言う(笑)。

──(笑)。粋な歌詞も書いてきたから、他のアーティストへの楽曲提供のお話が来るようになっていったんだと思います。“マジで世界変えちゃう5秒前”はユーモラスですけど、意味もアニメに合っているという高度な合わせ技ですよ。

HIROKI ちゃんとアニメからズレてないですからね。主人公の戦闘員Dの生き様を中心に書きました。かといって、アニメだけに当て嵌まることでもないでしょうし。時代によっても生き方のど真ん中みたいなのがあるじゃないですか? 今は「個々が自分らしく」みたいになっていますし、そういうストレートな生き方に当て嵌まる歌詞だと思います。


──ORANGE RANGEも我が道を進んできましたよね。

HIROKI はい。好きなことをやり続けています。

NAOTO 戦隊ものを面白い角度から描いている『戦隊大失格』と同じように、ウチらもまっすぐではなくて、ちょっと違う角度から攻めたりしますからね。

──この曲を聴いて、“イケナイ太陽”のMVを思い出すファンもいるんじゃないですか? 戦隊もののオマージュのシーンがあったじゃないですか。

NAOTO ありましたね。

HIROKI 爆破シーン、撮りに行ったねえ。

NAOTO あのMVは何十年越しかの伏線、“マジで世界変えちゃう5秒前”と繋がっていたってことにしておきましょう(笑)。

──(笑)。トラックを作った時は、どんなイメージを持っていたんですか?

NAOTO 『戦隊大失格』は展開が目まぐるしい印象だったので、曲も展開が見えないような忙しさ、バタバタ感があったほうがいいと思ってました。音自体もシンセのイメージでしたね。あと、原作コミックを読む前に「戦隊もの」というのでカラフルな戦隊の5色のイメージが浮かんだので、打ち込みで作ったほうが色をつけやすいのかなというのもありました。

──クラブで流しても楽しく踊ってもらえるサウンドですよ。

NAOTO 中間の部分に踊れそうな部分もあったりしますからね。しかも、昨日ヤマと話してたんですけど、歌詞の《どうなってくの?》ってテクノが入ってるんですよ。

HIROKI どうでもいい話だな(笑)。

長く音楽をやってる中で新しい面白さを見つけるって、なかなかないじゃないですか? それを1個見つけた感じがあります(NAOTO)

──ORANGE RANGEは、活動歴の長さのわりには、意外とアニソンが少ない気もするんですよ。『NARUTO -ナルト-』の“ビバ★ロック”、『BLEACH』の“*~アスタリスク~”、『コードギアス 反逆のルルーシュR2』の“O2”とか、有名なのはありますけど。

NAOTO 少ないんですかね?

HIROKI 多いのか少ないのかはわからないけど。

──同じ2003年にメジャーデビューしたFLOWは、今やアニソン界を代表するロックバンドじゃないですか。

HIROKI あれは比べるもんじゃないです(笑)。彼らは気づいたらそういうポジションを築いてましたね。

NAOTO この前、FLOWが海外でライブをやった時の写真を見せてもらったんですけど、どこに行っても、ものすごい人数のお客さんが来てました。やり続けることのすごさを実感しましたね。

──同期のORANGE RANGEとFLOWが2022年に『15周年 コードギアス 反逆のルルーシュ R2』のオープニングテーマ“デイドリーム ビリーヴァー”でコラボしたのは、胸が熱くなるものがありましたよ。

NAOTO あれもアニソンでしたね。

HIROKI FLOWが主催してるフェスもそうですし、彼らがいろいろなアニメ系のイベントに誘ってくれるのも嬉しいんです。

NAOTO いつもとは違うフィールドが楽しいんです。長く音楽をやってる中で新しい面白さを見つけるって、なかなかないじゃないですか? それを1個見つけた感じがあります。今回、アニメの曲を作れましたし、新しいフィールドにも広がっていけたらいいですね。FLOWにORANGE RANGEのカバーをしてもらって、海外のライブで一緒にやらせてもらったりとか?

HIROKI 乗っかってくのね(笑)。

NAOTO FLOWは年上ですけど、二十数年の付き合いなんです。高校生の時に彼らの前座をしたのが最初でした。

──この20年くらいの間で、ロックバンドとアニメの関わり合いが強まりましたよね。

NAOTO そうですね。日本独自の文化のアニソンも誇るべきものがあるんじゃないですか。

──海外の人に日本のバンドの曲を聴いてもらえるきっかけにもなっています。ORANGE RANGEは、海外の人が聴いても「どうかしてる」と感じるんじゃないでしょうか。

HIROKI 国境を越えても肌感覚で「どうかしてる」ってバレるバンド(笑)。

NAOTO 海外でも聴いてもらいたいです。まだ楽しみがあるってことですね。

──ORANGE RANGEは、ずっと活動を面白がれていますよね。スランプ、停滞期ってあったんですか?

HIROKI いやあ……どう?

NAOTO あったとしても感じなかったりするんじゃないですかね。

HIROKI 常に曲を作って吐き出してるからね。

NAOTO うん。それがいいのか悪いのかはわからないけど、曲はできるから。

HIROKI 「曲ができねえー!」っていうのがないんです。

NAOTO 作るのは楽しいですし。

──まだまだ面白くなっていきそうだという感覚はありますか?

NAOTO あります。「楽しくなりそうだな」という予兆を感じますよ。

HIROKI マジで楽しくなる何秒前?

NAOTO ええと、7秒前。

HIROKI 長いよ。「5秒前」って言ったら、落ちたのに(笑)。

──(笑)。今年も各地のフェスにたくさん出ますね。

NAOTO はい。今、フェスがめっちゃ増えてるのを感じます。

HIROKI 毎年、新しいフェスが誕生してますからね。

──毎回のフェスで幅広い世代を楽しませているのがすごいです。

NAOTO 中森明菜さんみたいですね。

HIROKI 名前を並べるのが畏れ多いよ(笑)。

NAOTO この前、大分のフェスでウチらも同じ日に出たんです。“DESIRE -情熱-”の威力がすごかったですよ。

──「はー、どっこい!」というお客さんの掛け声がすごかったらしいですね。

HIROKI あのレスポンスがものすごかったから「やばいぞ。今日のお客さんの年齢層は高いかもしんない」ってなって、ちょっと不安だったんです。でも、自分たちのライブも楽しんでもらえました。

NAOTO ウチらの次の電気グルーヴも、めっちゃ盛り上がってましたからね。音楽を楽しむのが上手なお客さんがたくさん来ていたんだと思います。

──9月から10月にかけては、『world world world』の再現ツアーもあるんですね。

HIROKI はい。再現ツアーは久しぶりです。

NAOTO 再現ツアーをやり始める前にプライマル・スクリームが『スクリーマデリカ』の再現ツアーをやっていて、「ウチらもやろう」ってなったんですよね。

HIROKI 活動の中心がライブというのは、これからも変わらないと思います。自分たちが楽しんだものを楽しんでもらえるような、そういう曲を引き続き作れたらいいですね。

NAOTO 次の曲も、またどこかのタイミングで届けられるはず。今世紀中には(笑)。いろいろ作ってるので、あとはどこで出すかですね。


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